江戸糸あやつり人形結城座『渡辺えり版 星の王子さま』@シアタートラム
【2024/10/3 19:00〜20:50(途中休憩なし)】

以前SPACに在籍していた舞台スタッフが結城座で操演していて、いつか観に行きたいと思いつつ、しかし、ずっと行けず…
でも、今回は渡辺えり氏の作演出だし、歌舞伎『マハーバーラタ戦記』でご一緒した新内多賀太夫さんも客演されているし…ということもあり、やっとこさ観劇。初の結城座。
客層は中高年以上がかなり多く、8割ほどの埋まり具合。
『星の王子さま』といっても、そこは渡辺えり氏の戯曲なので、「星の王子さま」を劇中劇として取り込み、「人魚姫」の物語もモチーフとして使い、ストーリーテラーの役割も兼ねた「学校の先生と生徒たち」という外枠を用意し、パイロットにはサン=テグジュペリの半生を投影し、「星の王子さま」の本編と外枠の物語が、並行しながら進んでいくような構成に。
演出の印象としては「明るいアングラ」とでも形容すべきか。あくまでイメージだけど、「野田秀樹風に演技演出された唐十郎戯曲」みたいなw
結城座の方々は、基本的には黒衣の格好で人形を操りながらセリフを喋り(ラスト近くでは、人形は操演するが和装に着替えて顔も出す)、客演の人たちは普通に俳優として登場し、「人形と人間の共演」というスタイルで、「王子さまが人形で、パイロットが人間」という組み合わせは上手く活きていたと思う。
ただ、クラスメイトや先生が、人形と人間が混在していたのは、悪くはなかったのだけど必然性はあまり感じられず…(「人形のクラスメイト3人が唐突に人魚になる(下半身だけ魚になる)」場面は、人間でやるには難しく、人形でやることの良さが出てはいた)
観劇が初日だったためか、いろいろとハプニング的な事も多く、「舞台装置のパネルを、観客からは見えない舞台上で付け替えたりしてる時の作業音が観客に丸聞こえ(その間も舞台では演技続行中なのだがセリフの後ろで「ガタンガタン!」と。しかも、パネルの付け替えがスムーズではなく、かなり時間がかかる仕組み)」とか、「観客に見える状態での舞台装置の転換で、本当は取り外したいものがうまく外れず、そのままにして次の場面へ」とか、「舞台装置の段差のあるユニットから、人形遣いが演じながら降りるときに派手に転ぶ」などなど、列挙すればほかにもあるのだが、まあそういう感じ。
時間や空間があちこちに飛ぶ設定で、場面転換がとても多いのだが、その転換の時間が活きている(演出上、上手く処理されている)ところと、そうでないところの差が結構あって、それも気になったし、作品の世界観的には今回の装置の必然性は分かるのだが、人形とのバランスやシアタートラムの舞台サイズ的には、舞台装置が少し大きい&物量が多い(=それにより舞台転換も大掛かりにならざるを得ない)のも気になった。
特に、背景画を兼ねた、分割された4枚(もしかすると6枚だったかも)のパネルは、「もっと違う方法がなかったのかな…」と思った。
脚にキャスターが付いていて、裏表で回転して使えるようになっているのだが、回転した裏側に別の背景パネルを取り付けたり外したりする仕組みになっていて、この取り外しが「観ていて気になる」レベルだった。おそらく「3面使える三角柱の形状」を用意すれば、転換は圧倒的に楽になるはずなのだが…
元SPACの出演者は、ストーリーテラーを兼ねた3人の女子高生のひとりとして、ちょっと不良系の女の子の人形を操演。セリフの内容的には、渡辺えりさんの本音を喋るような役どころ、なのかも。
セリフはめちゃくちゃ明晰で演技力もあるし、人形の扱いもなかなかで、操演する女優として立派に活躍されていた。
結城座の人形は、操り糸が何本もあって、細かく人間のように動かすことができる反面、操作はとても難しそうだった。ふたりがかりで動かしてちょうど良さそうな感じのものを、ひとりで操り、しかも、役のセリフまで喋り。それを楽しそうに生き生きとやっている彼女の様子も、とても良かった。
新内多賀太夫さんは今回が俳優初挑戦ということらしいのだが、この「唐十郎風というか野田秀樹風というか」なアングラ世界観に妙にピタリとハマっていて、なんだか「令和アングラ界の新星」みたいなオーラもあったw
音楽をやっている方だからなのか、セリフの「情感と語り(エモーションとメロディ)の共存」が上手い。エモーショナルになりすぎると語り方(メロディ)が疎かになりがちだし、語り方を意識しすぎるとエモーションが疎かになりがちなのだが、多賀太夫さんはその両方を上手い塩梅で調整できていた印象。外枠の「学校の先生」という役柄的にも、それがやりやすいポジションではあったけど。
そして、劇中音楽も担当されているからだと思うが、ところどころでは、三味線を手に生演奏の奏者としても登場。本作において結構なご活躍ぶり。
(たぶんだけど、俳優の多賀太夫さんは、SPAC作品やSPAC俳優と相性がいいと思うw)
かなりの意欲作なんだけど、結城座と渡辺えり演出の「組み合わせ」という点で、ちょっともったいない感じも残る。新しいことに貪欲に取り組んでいきたいのか、伝統をしっかりと継承していきたいのか、その狭間で、やや揺れ動いているようにも感じられた。
江戸糸あやつり人形結城座
『渡辺えり版 星の王子さま』
原作 サン=テグジュペリ
作・演出 渡辺えり
両川船遊 フェネック、風子、王様
結城孫三郎 星の王子さま
結城育子 陸子、点灯夫
湯本アキ 波子、実業家、 薔薇たち
小貫泰明 コンドル、うぬぼれ男、星野くん
大浦恵実 コンスエロ、呑み助、王子くん、薔薇たち
中村つぐみ 弘、アルマジロ、地理学者、ヘビ、特高警察
安藤光 ダンサーたち、特高警察、薔薇たち
柿崎園子 ダンサーたち、薔薇たち
新内多賀太夫 渡邉真紀夫先生、新内弾き語り
吉田裕貴 男【サン=テグジュペリ】
多岐川装子 ブエノスアイレスの母、小島、薔薇たち
夢乃 ブエノスアイレスの息子、沢井、フランソワ
音楽・作曲・ピアニスト 三枝伸太郎
音楽作曲 新内多賀太夫
舞台美術 池田どもゆき
舞台美術助手 片平圭衣子
人形美術・装置(舟・井戸) 野村直子
照明 宮野和夫
照明オペ 山浦恵美、米澤ゆき
音響 島猛
音響オペ 照山未奈子
舞台監督 金安凌平
演出助手 内河啓介
人形製作 籾倉梢恵(頭)、田中友紀(衣装)、他結城座
宣伝美術 小田善久
宣伝写真 石橋俊治
宣伝映像 株式会社KUROKAWA design
記録映像 コラボニクス
制作 前田玲衣、結城育子
歌唱指導 深沢敦
飛行機製作 大谷亮介、安藤友香、住吉愛子
ヴァイオリニスト 会田桃子
バンドネオン奏者 鈴木崇朗
タンゴダンス 玉井勝教
小道具製作 清水美帆子
大道具協力 深海洋燈
特別協力 「あそび糸」有志
助成 文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術等総合支援事業(公演創造活動))、独立行政法人日本芸術文化振興会、公益財団法人 全国税理士共栄会文化財団
協賛 COFFEE HALL くぐつ草、未来工業株式会社
協力 Cocktail-Do Coffee Co.,Ltd.、シモジマ、オフィス3○○、(株)ファザーズコーポレーション
企画・制作・主催 公益財団法人江戸糸あやつり人形結城座(国記録選択無形民俗文化財/東京都無形文化財)
2024年10月3日〜6日 シアタートラム







