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演劇界に生きる男の観劇記録

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  • LABO! volume15 ソライロノハナ第7集『如月小春クロニクル』@西荻窪・遊空間がざびぃ
    【2019/10/11 14:30〜16:30(途中休憩なし)】

    生前の如月小春氏と創作活動を共にしたメンバーが中心となって、死後20年目に、彼女の作品をオムニバス的にピックアップして上演する企画。とても密な小空間での上演で、上演時間は約2時間。

    いわゆる「如月小春のいいとこ取り」的な公演かと思っていたのだが、思いの外、取り上げた作品に偏りがあり、半分以上は『ESCAPE』から。僕からすると代表作とも言える『MORAL』からは数シーンのみで、『DOLL』や『トロイメライ』、『NIPPON・CHA!CHA!CHA!』に至っては、全く引用なし。これだけ『ESCAPE』をメインに据えるなら、『ESCAPE+α』として上演すれば良かったのに、という気も。
    ちなみに、僕、高校時代に『ESCAPE』上演したことある人間なので、何やら懐かしいセリフのオンパレードで、個人的には飽きずに観られた。

    如月小春氏のセリフって、ポエティックでありながら、リアリスティックでもあり、やっぱり素敵だな、と。ただ、その表現の仕方として、今回上演された演出や演技の手法が最適だったのかどうかは、ちょっと微妙。
    割と、熱く語るような場面、情感過多の場面が多く、如月小春の持つポエジーな側面が損なわれていたようにも思う。「もっと言葉を置いてほしいなー」と思う場面しばしば。演じてて空虚になりがちだから、つい埋めようとするあまり情感過多になるのかな。虚しくていいのに(笑)
    たとえば、虹が「月子」と何度も呼ぶ場面とか、あんなに分かりやすく色々と言い方変えなくてもいいのに。「なんとなく口に出してみる。意味もなく。口にしないと消えてしまいそうだから、ただ口にする。つい口にしてしまう。口にすることで安心できる。」そんな感じでいいのにな。そのほうが、存在の不確かさが浮き彫りになると思うのだが。

    あと、如月小春の長セリフって、対象が他者のとき(明確に誰かに話しかけている)と、自分のとき(いわゆる自問自答的な)がまぜこぜになっていて、フォーカスのスイッチングが非常に難しいのだが、その切り替えが、舞台全体的に見てちょっと遅い感じ。もっさりしていた。もっとめまぐるしく、自己と他者を激しく行き来し、テンションや声のトーンも瞬時に切り替わってほしいのだが。(あ、白石加代子さんとか大竹しのぶさんとか、意外と如月小春作品が合うかもしれない)

    ほかに、「白い球体を抱えた男」というのが、如月作品の要素のひとつと言えるかと思うのだが、それを連想させる演出として、「各自が手にしたスマホの光に照らされた人々」というのが出てきていて、それはとっても良かった。「言葉遊び的なシュプレヒコール」も如月作品の特徴だけど、これも、今回の舞台ではかなり頑張っていたように思う。

    ラストの「荷を背負う男」の場面は、ちょっとベケットっぽいやり取りがあって、見せ方が非常に難しいと思うのだが、演じる牧野隆二さんの演技が過不足なくて、やり過ぎず、まとめ過ぎず、とっても良かった。相手役の俳優も良かった。この場面が観られただけでも、観に行ったかいがあったと言って過言ではなかろう。この場面で終幕したのも非常に成功していた。

    如月小春作品の上演の難しさを改めて実感し、同時に、彼女の残したセリフの、よく切れるナイフのような鋭さに感動し、そういう意味で、上演する意義のあった舞台だとは思う。観ていて、また彼女の書いたセリフを口にしてみたくなったことは確かだ。


    LABO! volume15 ソライロノハナ第7集
    『如月小春クロニクル』
    テキスト:如月小春
    演出・構成:堀内仁
    (使用著作「MORAL」「家、世の果ての…」「ESCAPE」「Dancing Voice」「都市民族の芝居小屋」「朝、冷たい水で」「ISLAND」「DAILY」)

    瀧川真澄:花子、洋子、ママ、姉
    熊谷知彦:虹、コウダ
    高木愛香:月子、妹
    桑原良太:猫河原
    牧野隆二:風、アアダ、男
    吉田真優:雪、少年
    甲斐智堯: 支店長
    稲葉真:ヨシダ

    音楽・演奏:近藤達郎
    映像:武内秀光
    衣装:ひろたにはるこ
    照明:伊倉広徳
    振付(デパート):熊谷知彦
    振付(ゆっくりと沈んでゆく):中村優子
    声の出演:柳沢三千代
    撮影(如月小春):上牧祐
    映像記録:山縣昌雄
    制作補:星見華理奈
    制作協力:片桐久文
    協力:飯島千香子、妹尾侑紀、遠藤真美子、高村志穂、高田明来、原沙紀、小林泰生

    製作:LABO!

    2019年10月11日〜13日 西荻窪・遊空間がざびい

  • 日生劇場ファミリーフェスティヴァル2019 音楽劇『あらしのよるに』@日生劇場
    【2019/8/5 15:00〜17:00(途中20分間の休憩あり)】

    おなじみの原作『あらしのよるに』シリーズを、「ガブとメイの友情物語」として音楽劇に仕立てた舞台。上演時間は、途中20分の休憩込みで2時間。歌にダンスに生演奏もあるが、ミュージカルと呼ぶほどでもなく。客席は親子連れがほとんど。

    シリーズ最初のエピソード「嵐の夜に小屋で出会って別れる」が意外にあっさりと終わるなど、全体的に「舞台転換を交えたアンサンブルのムーブメントやダンスによる、場面場面のイメージシーン」に演出を割いた印象が強い。
    しかし、元々の原作のせいか、終盤の展開(吹雪以降)が慌ただしいというか、ちょっと粗くて不親切。さらに、若干、ご都合主義なのも少し気になり……
    いやいや、記憶喪失って……
    でも、近くに座っていた子どもが観終わったときに、「だいたい、本とおんなじだった」と親に言っていたので、改変はされていない模様。

    「食う・食われる関係性で育まれる、恋愛感情にも似た友情」は、国家・民族・宗教など、現代社会に通じる様々な問題を孕んでいて、大人には色々と考えさせる、かなり社会派な舞台とも言える。
    それに、「集団の中での孤立」、「『らしさ』の強要」、「本能と理性」なんかも、二次的にテーマになっているし、「瀕死の友達を食べるか否か」なんて、『ひかりごけ』なんかも連想したりして、「ヤギとオオカミの友情」という中に、多くのものが詰め込まれていた。(詰め込みすぎという意味ではなく)

    舞台装置は、細長い書き割りを繋げてうねうね動くようにしたもの(ヘビのおもちゃみたいな仕組みのやつ)が大小2つずつ。伸ばしたり、丸めたり、自在に形を変えて空間を変化。(我々も使いたいアイデア!)

    衣裳は、特にオオカミが秀逸で、尻尾のボリュームと形状が絶妙。まあ、マタギっぽくもあるのだが(笑)

    演奏を担うメンバーは5人で、オケピを下手にのみ設置し、そこで演奏。演奏者の大半は「時々自動」のメンバー。管楽器や弦楽器も使うけれど、パーカッションの割合が多く、その楽器のチョイスといい、繰り出されるサウンドといい、かなりSPACっぽい。
    つまりは、「棚川サウンド」に通じるものがある。アンクロンとか、ホースとか、ひとつのシロフォンを二人で演奏とか、使用楽器の展開の仕方とか。

    今回の舞台の魅力は、ガブを演じた渡部豪太さんによるところが大きい。オオカミとしての肉食的な部分と、心根の優しい素朴な部分を、うまく混ぜ合わせた存在感で、二の線と三の線を自在に行ったり来たり。
    座ったり、寝そべったり、といったフォルムや、自分を戒めて頭を叩く動きなんかも絵になるし、歌声もいい。
    「~でやんす」という語尾も、いかにも自然で、本人の資質とガブのキャラクターがマッチしていたのだと思う。
    あと、たまたまかもしれないが、足を広げて腰を低めにして立つことが多く、股の間から見える尻尾が実に良い(笑)

    ただ、音響はイマイチ。会場の条件も良くないのかもしれないが、演者のマイク音声が「明らかにスピーカーから出てる」感が強く、残念。それに呼吸音まで拾っちゃ駄目でしょ。
    (そういや『黒蜥蜴』のときも同じようなこと思ったなあ…)


    日生劇場ファミリーフェスティヴァル2019
    音楽劇『あらしのよるに』
    原作:きむらゆういち「あらしのよるに」(講談社刊)
    脚本・演出:立山ひろみ

    ガブ:渡部豪太
    メイ:福本莉子
    ギロ:高田恵篤
    おばさんヤギ:平田敦子
    バリー:川合ロン
    タプ:木原浩太
    ミィ:福留麻里

    ヤギたち:
    飯嶋あやめ
    滝本直子
    平山トオル(オオカミ)
    三坂知絵子
    三田理子(オオカミ)
    山根海音(うさぎ・オオカミ)

    オオカミたち:
    小山まさし
    酒井直之
    島田惇平
    長谷川暢(さる1)
    早川一矢(さる2)
    山口将太朗(リス)

    うたう人:
    苫篠ひとみ(オオカミ)
    古川和佳奈(ヤギ)
    山﨑まゆ子(ヤギ)

    かなでる人:
    鈴木光介(トランペット)
    砂川佳代子(クラリネット)
    関根真理(パーカッション)
    高橋牧(アコーディオン)
    日高和子(サックス)

    稽古場代役:宮之脇佳織

    音楽:鈴木光介(時々自動)
    振付:山田うん
    美術:池田 ともゆき
    照明:齋藤茂男
    衣裳:太田雅公
    ヘアメイク:橘房図
    音響:島猛
    学芸:大池容子(うさぎストライプ)
    演出助手:鷲田実土里
    舞台監督:八木清市
    舞台監督助手:中山宣義、杉田健介、石橋侑紀、山中真吾
    美術助手:谷口綾
    照明助手:横原由祐
    衣裳助手:生田志織
    大道具:俳優座劇場舞台美術部
    照明操作:シアタークリエイション A.S.G
    音響操作:川崎理沙、中川綾乃、津名めぐみ
    衣裳小道具製作:篠川理湖
    帽子製作:下重恭子
    衣裳製作:鈴木奏子、佃彩可、寺岡寛恵、内海志保、丸山結衣、キュウ・ユインジュ
    衣裳操作:村田まゆみ、渡辺桂子
    かつら:小沼佳奈(奥松かつら)
    メイク:鬼頭聖子、福島真由美、atsu.co
    小道具・履物:ニケステージワークス
    制作助手:野田容瑛
    舞台技術:日生劇場技術部
    主催・企画・制作:公益財団法人ニッセイ文化振興財団[日生劇場]

    後援:東京都、神奈川県、埼玉県教育委員会、 東京都私立幼稚園連合会、東京私立初等学校協会、東京都公立小学校長会、一般社団法人東京都小学校PTA協議会、一般財団法人東京私立中学高等学校協会、東京都公立幼稚園・こども園PTA連絡協議会、東京都国公立幼稚園・こども園長会、公益社団法人神奈川県私立幼稚園連合会、横浜市立小学校長会、川崎市立小学校長会、埼玉県公立小学校校長会、千葉市小学校長会、千葉市中学校長会、関東地区私立小学校連合会、神奈川県私立小学校協会 、相模原市立小中学校PTA連絡協議会、さいたま市PTA協議会
    協賛:日本生命保険相互会社
    助成:文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)、独立行政法人日本芸術文化振興会

    2019年8月3日〜5日 日生劇場

  • ロロ『はなればなれたち』@吉祥寺シアター
    【2019/6/26 19:00〜21:30(途中10分間の休憩あり)】

    初ロロ。「ストレンジシード静岡」でも上演があったのだが、見られず。
    今回の舞台は、「ハートウォーミング」な感じの演劇で、全体的にフワフワしてる印象。良くも悪くも「キラキラしてる舞台」だったのだが、このつかみどころのない感じを「幼い/若い」と解釈するか、「みずみずしい/フレッシュ」と解釈するか。僕が若干前者なのは、老いたということなのか……(苦笑)
    全体的に笑いの要素が多い気もする。人によっては泣ける話でもあるのだが、骨太感は皆無。綿菓子みたいな舞台。
    舞台が始まってしばらくしたら、「THE オープニング」みたいな演出もあって、カッコいいんだけど、それもちょっと照れくさく。なーんか全体的に、年不相応のコーディネートの服を着てるみたいな感覚になってしまい、観劇中、落ち着かない(笑)

    「ひとりの若い女性の演劇にまつわる半生の回顧録」というのが一応主軸で、そこへ放射状に繋がるように、様々なエピソードが絡んでくる。エピソード同士がリンクすることもあれば、最後まで交わらないものもあったり。
    断片が繋がっていく感じなんだけど、コラージュともちょっと違っていて、なんか「キルト」っつーか、「パッチワーク」っつーか、そんな感じ。最終的な1つの完成形はあるんだけど、そのなかはごちゃごちゃしてるというか。「あっちをちょっと縫って、こっちをちょっと縫って、そうこうしてたらあっちとこっちがいつの間にか繋がってる」みたいな。
    或いは、今風に言うと「直感的」な舞台展開なのかも。せわしくスマホをいじってるような、そんな感覚。
    客席は全体的にかなり若い客層。納得。

    観に行こうと思った動機はいくつかあって、ひとつは、ロロを「ストレンジシード静岡」で見逃していたため。ひとつは、出演者で気になる人が3人、板橋駿谷さん、油井文寧さん、大石将弘さん、がいたから。
    板橋さんは、朝ドラ「なつぞら」で番長役を演じ、「34歳高校生」として有名になった俳優。まあ、舞台俳優としての生・番長を観てみたかったわけだが、そのイメージを崩さないようにしているのかどうか分からないが、まあ、番長からそう離れていない、憎めないキャラを熱く務めていた。
    油井さんは、「ストレンジシード静岡」の「範宙遊泳」の作品に出演していた「こたつ姫」(役名)で、ドライなセリフ回しと独特な存在感が気になり、別の作品も観てみたいと思っていた俳優。ここでも、ドライな存在感とセリフ回しは健在で、のめり込みすぎてない感じが、とってもいい。
    大石さんは、「ままごと」の俳優で、他の作品で観たときに、柔らかくクールな存在感が印象的で、機会があればまた観たいと思っている俳優。今回も、認知症のおじいちゃんみたいな「謎の草」という役を好演(好演と称していいのかどうかも不明だが)。歌声も素敵。彼の存在のおかげでよりいっそう、舞台が「ハートウォーミング」になっている。

    劇中劇で、ままごとの『わが星』の幕開き10分くらいを、ままごとテイストで演じてみせるのが、僕のなかではクライマックスだったかも。据え置き型ミラーボールみたいな明かりも効果的で。円形に置かれた何気ない小道具もすごく効いてて。
    ロロなのにままごとっぽい、という本家もビックリな出来ばえ。現代日本の演劇界に『わが星』がすごく浸透していることを再認識。あの作品の世界観って、僕ら世代からすると「キャラメルボックス」みたいな感覚なので、まあ若い演劇人なら1度は通る道なのかも。
    逆に言うと、若い世代の俳優は、ああいうノリの芝居は得意なんだろうな。抵抗なくできちゃうというか。SPACの中高年世代で『わが星』やったら、それはそれで必見の舞台になりそうだけど(笑) (誰か企画!)

    あと、登場人物の名前が、個人的にはどうにも抵抗あるのだが、それもまた老いなのか……?
    下の名前が「淋しい」「すい中」「潮騒」「物置」など。(苗字は割りと一般的なんだけど)
    こんな風に名付ける理由はなんなんだろう。名前を名前として認識させないようにする仕掛けなのか?不思議。

    あ、関東圏以外からの観劇は「遠方割引」があってちょっとお得。さりげない心づかいがニクい。
    あんまりフワフワするんで、それはそれで気になってしまい、何だか別の作品でもう一回くらい観に行くかも。「いやー幼いよねー」とか思いながら。


    ロロ
    『はなればなれたち』
    脚本・演出:三浦直之

    向井川淋しい:森本華
    佐倉すい中:望月綾乃
    近藤巧磨:篠崎大悟
    柊木潮騷:島田桃子
    ユノミ・ローズヒップティー:板橋駿谷
    ラリー・バード:油井文寧
    ハーゲンダッツ・リッチミルク:ひらのりょう
    稲葉物置:多賀麻美
    謎の草:大石将弘
    ぼく:曽我部恵一

    劇中曲:曽我部恵一
    美術:杉山至
    照明:富山貴之
    音響:池田野步
    衣裳:白井梨恵
    衣裳進行:西山梨香
    衣装協力:小山つかさ
    舞台監督:鳥養友美、櫻井健太郎
    演出助手:谷口順子、中村未希
    文芸協力:稲泉広平
    イラスト:矢野恵司
    デザイン:佐々木俊
    広報:浦谷晃代
    記録写真:三上ナツコ
    記録映像:伊集守忠
    当日運営:河野遥、山道弥栄
    制作:奥山三代都、坂本もも

    引用
    新潮社「青い鳥」作:メーテルリンク/翻訳:堀口大學
    ままごと「わが星」作:柴幸男

    協力:jungle、コムレイド、écru、ままごと、ナイロン100℃、スイッチ総研、青年団、レトル、FOGHORN、ROSE RECORDS、モモンガ・コンプレックス、木ノ下歌舞伎、稲プロ、ヌトミック、Diet-chicken、範宙遊泳、ローソンチケット、チケットぴあ、急な坂スタジオ、森下スタジオ

    助成:アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)、芸術文化振興基金
    提携:公益財団法人武蔵野文化事業団
    企画制作・主催:ロロ、さんかくのまど

    Special Thanks:櫻内憧海、栗原カオス、吉祥なおきち、亀鳥一徳

    2019年6月22日〜30日 吉祥寺シアター

  • モダンスイマーズ結成20周年記念公演『ビューティフル ワールド』@東京芸術劇場シアターイースト
    【2019/6/16 15:00〜17:15(途中10分間の休憩あり)】

    過去に、1回は確実に観ているモダンスイマーズ(もしかしたらNHKの舞台中継的な映像で…だったかも、だが)。そこまで追い続けてはいない劇団なのだが、『キネマと恋人』との組み合わせスケジュール的にちょうど良かったのと、チケット代が3,000円とお求めやすい価格だったので観劇。(こういう「タイミング」も観劇の決め手にはなる)
    当日券のお客様で正席を買えなかった人も、客席通路席を販売して入場してもらう盛況っぷり。開演が5分押すことのお詫びを、わざわざ口頭アナウンスで伝える制作からも、カンパニーの誠実さが感じ取れる。

    ゲームとアニメが趣味の引きこもり40歳・夏彦が主人公。彼の実家が火事になり、弟夫婦の元へ移るがやんわりと追い出され、元は和菓子屋で今は古民家カフェを営む叔父夫婦の離れに住むことから始まる物語。とにかく、罪深い人たちばかり出てくる「悲劇性の強い喜劇」で、ある意味「随分と極端な設定のチェーホフ」な感じ。作・演出は蓬莱竜太氏。現代日本のチェーホフかもしれない。(ただ、わりとみんな怒鳴る、というか叫ぶ、が、チェーホフ、そこまで叫ばないし、その点では違うかも)
    夏彦の叔父である夫と娘から邪険に扱われ、その傷を「宇多田ヒカル」を口ずさむことで慰め、振り払っていた叔母が、次第に離れに入り浸るようになり…という展開。ここまでが一幕(60分)。
    二人を引き合わせたのは、たぶん、エヴァンゲリオンであり、宇多田ヒカルであり。宇多田ヒカルの愛称「ヒッキー」と、引きこもりの「ヒッキー」をかけている気も。

    10分の休憩後、大どんでん返し的な二幕(65分)へ突入。一幕では正義を振りかざしているように見えた娘や、不器用で寡黙な人柄が売りのはずだった和菓子屋時代からの職人・高倉健太が、話の展開をさらにややこしくさせると同時に、観ている観客はもう笑うしかない感じ。「みんな、クズばっかりだな」と思ってしまった観客も多かろう(笑) 当然、スッキリはしない終わり方。

    会話中に急に回想シーンが入ってきたり、同時多発的なモノローグが発生したりと、演劇だからできる場面の処理が面白く、テンポを崩すことなく「悲喜こもごも」を見せていくのも良かったし、引きこもり部屋が、「平たいリヤカー」というか「1畳分くらいのサイズのカート」みたいな装置で、それを引っ張ったり押したりしながら、引きこもり部屋を舞台上で自由に移動させる様子も、妙に面白かった。なんか、「引きこもりが自分の居場所を引っ張っている、引いて籠っている」という図が。
    周囲から「寡黙で不器用認定」されている西條義将さん演じる「高倉健太」が、「車のBGMでglobeを聴いている」という設定も個人的にはツボった。しかもかかるのが「Is this love」というのが、実は伏線にもなっているあたり絶妙なチョイス。

    ただ、ネットでの評判はかなり良いのだが、個人的には、そこまではハマらなかったかな、と。
    まず、作品における色恋モチーフが扱いとしては結構多く、まあそれはあくまで設定での話であって、直接的にそういう描写がふんだんに出てくるわけではないのだけど、「でもそういう愛欲がもとで起きるドラマは、三浦大輔氏が描く方がリアリティがあるかな」とか思ったり。
    あと、あまり自分事のようには観られず、どこか「架空のお話」感に包まれていたような。
    でも一方で、ネットで評判が高いのも分かる。ぐさぐさ来る人は来ちゃうんだろうな…という感じ。たぶん、僕がそこまで、人間関係のぐちゃぐちゃに巻き込まれたことがないからかもしれない。まあ、巻き込まれそうになる前に、体よく逃げているような気もするし。

    なお、「マツコの知らない世界」で、その泣きの演技と粘性の強い鼻水で有名になった古山さんは、夏彦の弟役で、今回は少なめの出番で泣きの演技はなく。


    モダンスイマーズ結成20周年記念公演
    『ビューティフル ワールド』
    作・演出:蓬莱竜太

    飯田夏彦:津村知与支
    越乃衣子:吉岡あきこ
    越乃左子:生越千晴
    清水りく:成田亜佑美
    沢田清史郎:小椋毅
    高倉健太:西條義将
    飯田善:古山憲太郎
    越乃淳二:菅原大吉

    美術:伊達一成
    照明:沖野隆一
    音響:今西工
    衣裳:坂東智代
    映像:横山翼、松本一晃
    舞台監督:清水スミカ
    演出助手:伊東若菜
    照明操作:矢野一輝
    音響操作:北野さおり
    宣伝美術:金子裕美
    プロダクションスタッフ:中尾友也、鈴木ちな、川飛舞花
    制作:森田百合花
    制作協力:ヨルノハテ

    提携:東京芸術劇場(公益財団法人東京都歷史文化財団)
    助成:芸術文化振興基金助成事業

    主催:モダンスイマーズ

    2019年6月7日〜7月23日 東京芸術劇場シアターイースト

  • 第七劇場 × Shakespeare’s Wild Sisters Group 日台国際共同プロジェクト Notes Exchange vol.3/三重県文化会館×金沢21世紀美術館『珈琲時光』@三重県文化会館 小ホール
    【2019/2/10 14:00〜15:40(途中休憩なし)】
    【2019/2/10 19:00〜20:40(途中休憩なし)】

    東京→台湾を経た変化を見届けに三重へ。昼夜両方の上演を観劇。
    基本的には東京公演の感想から大きな違いはない。

    ただ、出演者によると台湾公演で変化があり、三重公演は東京公演の形に戻したそうだが、台湾を経て、東京公演とは演出が変わった場面も結構あったように思う。
    それにより、かなり見やすくなったというか、スッキリした感じ。(「初見じゃない」っていうのもあるかもしれないけど)
    出演者も、自分の役割というか、任が、より明確になってきたように見えた。

    小津ファンは楽しみどころがいっぱいある作品だと思うのだけど、僕はほとんど小津作品に馴染みがないので、その面白さは語れず。残念。


    第七劇場 × Shakespeare’s Wild Sisters Group
    日台国際共同プロジェクト Notes Exchange vol.3
    三重県文化会館×金沢21世紀美術館
    『珈琲時光』

    企画協力:侯孝賢
    脚本:王嘉明
    演出:王嘉明、鳴海康平

    【台北】Fa、圈圈
    【三重】佐直由佳子、小菅紘史、木母千尋、菊原真結、三浦真樹
    【静岡】鈴木真理子(SPAC)
    【金沢】西本浩明(演芸列車「東西本線」)

    舞台監督:北方こだち
    照明:島田雄峰(Lighting staff Ten-Holes)
    音響:平岡希樹(現場サイド)
    衣裳:靳萍萍
    台湾側プロデューサー:新田幸生
    演出助手:盧琳
    翻訳:陳汗青、林佳祥

    主催:三重県文化会館[指定管理者:(公財)三重県文化振興事業団]
    共催:レディオキューブFM三重
    製作:三重県文化会館[指定管理者:(公財)三重県文化振興事業団]、金沢21世紀美術館[(公財)金沢芸術創造財団]、合同会社第七劇場、Shakespeare’s Wild Sisters Group
    助成:公益財団法人岡田文化財団、文化庁 文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)、独立行政法人日本芸術文化振興会
    協力:三重映画フェスティバル実行委員会、全国小津安二郎ネットワーク

    2018年10月24日・25日 東京芸術劇場シアターウエスト
    2018年12月1日〜9日 Cloud Gate Theater【台湾】
    2019年2月10日・11日 三重県文化会館小ホール
    2019年2月16日・17日 金沢21世紀美術館シアター21

  • 第七劇場 × Shakespeare’s Wild Sisters Group 日台国際共同プロジェクト Notes Exchange vol.3/東京芸術祭直轄プログラム『珈琲時光』@東京芸術劇場シアターウエスト
    【2018/10/25 15:00〜16:40(途中休憩なし)】

    昨年度『1984』で関わったプロジェクトの、3年計画事業の3年目(最終年)の作品。

    異なる時代、異なる場所の物語のモチーフが、レイヤーを重ねるように綴られ、時に少しだけ交錯し、時に少しだけレイヤーを貫く主軸が立ち現れ……みたいな、少し不思議な舞台。
    設定として、階ごとに国も年代も違う(上階になるほど年代が進む)、あるアパート(or マンション)があって、そこに住む住人たちのささやかな日常が描かれる。日本と台湾(それに韓国も?)の特徴的な年代や出来事が、抽出されてはいるものの、アパート全体を揺るがすような大きな事件は特に起きず、淡々と進んでいく。

    歴史ドラマと見ることも可能だし、まさしく小津安二郎よろしく、平凡に暮らす庶民の人たちの生活を切り取った舞台と見ることも可能。ただ、それは逆に言うと、どう観たらいいのか、戸惑ってしまう観客も多いかもしれない、とも言える。
    この、少しSF要素が入った設定も、如月小春的なコラージュっぽい作風も、僕は個人的にとても好きなので楽しんで観られたけれど、果たして万人受けするかと言えば、しないような気もする(苦笑)
    何せ「ひとつの大きなストーリー」みたいなものが無いので。

    それに、字幕の情報量が多いので、字幕を読みながら舞台を観るのが苦手な人にはあまりオススメできないし、異なるレイヤーがいくつも出てくるので、頭のなかで情報を処理しながら観ていかないといけなかったりもするし。そういう意味では、まさに情報処理時代を生きている現代人、スマホ世代のような人間でないと、なかなかこの作品の面白さは理解できないのかもしれない。

    出演者のなかでは、原節子的な存在を担う台湾の女優さんの、繊細な変幻自在感が秀逸。「年老いた母親」みたいな役どころが何パターンか出てくるが、全部微妙に変化していて、それがまた上手い。腰の落とし方とか、声色の変え方とかが、わざとらしくない程度で変化させる、そのさじ加減に唸る。
    あと、佐直さんの、母親と娘の演じ分けも、別の女優が出てきているのかと思うくらいの「似ていながらも別人」感が素晴らしかった。

    俳優の演技は全体として、言動分離(ムーバーとスピーカー)的な演出になっていて、心の声やLINEやメールの文面は別の俳優が語っていて、上手い処理だなと思った。

    (これは、観ていないと何を言ってるのか全然イメージできないとは思うが)車椅子の場面の、車椅子が移動していくにつれて、車椅子に当たっている切り取られたサスの照明も移動していくのが、技術的に特別なことをしているわけではないのだけど、何故か心に残った。サスの切り取りかたの四角加減も、すごく良かったんだな。

    恐らく、東京公演は少し「ワーク・イン・プログレス」的な要素があったと思うので、12月の台湾公演を経て、三重・金沢公演でどう変化するのか非常に楽しみ。もっともっと面白くなりそうな要素の種は詰まってると思うので、それがどう芽を出していくのか…
    三重公演も見届けに行く予定。


    第七劇場 × Shakespeare’s Wild Sisters Group
    日台国際共同プロジェクト Notes Exchange vol.3
    東京芸術祭直轄プログラム
    『珈琲時光』

    企画協力:侯孝賢
    脚本:王嘉明
    演出:王嘉明、鳴海康平

    【台北】Fa、圈圈
    【三重】佐直由佳子、小菅紘史、木母千尋、菊原真結、三浦真樹
    【静岡】鈴木真理子(SPAC)
    【金沢】西本浩明(演芸列車「東西本線」)

    舞台監督:北方こだち
    照明:島田雄峰(Lighting staff Ten-Holes)
    音響:平岡希樹(現場サイド)
    衣裳:靳萍萍
    台湾側プロデューサー:新田幸生
    演出助手:盧琳
    翻訳:陳汗青、林佳祥

    総合ディレクター:宮城聴
    直轄事業ディレクター:横山義志

    チケット担当:東京芸術劇場
    当日配布プログラムレイアウトデザイン:橋本デザイン室

    主催:アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)
    協力:SPAC-舞台県舞台芸術センター
    製作:三重県文化会館[指定管理者:(公財)三重県文化振興事業団]、金沢21世紀美術館[(公財)金沢芸術創造財団]、合同会社第七劇場、Shakespeare’s Wild Sisters Group
    助成:國家文化藝術基金會、台北市文化局、雲門文化藝術基金會、平成30年度文化庁国際文化芸術発信拠点形成事業(豊島区国際アート・カルチャー都市推進事業)

    2018年10月24日・25日 東京芸術劇場シアターウエスト
    2018年12月1日〜9日 Cloud Gate Theater【台湾】
    2019年2月10日・11日 三重県文化会館小ホール
    2019年2月16日・17日 金沢21世紀美術館シアター21

  • SCOT SUMMER SEASON 2018
    日本・インドネシア共同制作『ディオニュソス』@富山県利賀芸術公園 利賀大山房
    【2018/8/24 19:00〜20:10(途中休憩なし)】
    『世界の果てからこんにちは』@富山県利賀芸術公園 野外劇場
    【2018/8/25 19:30〜20:30(途中休憩なし)】

    2年ぶりの利賀村。野外劇場での『世界の果てからこんにちは』の、開演前の賑わいは流石!

    今回は、『ディオニュソス』と『世界の果てからこんにちは』の2本の観劇で、どちらも、かつて出演したことがある作品のため、観ながら、どうも肩が凝ってしまうというか…むかし演じていたときに、自分や共演者が指摘されていたことや、苦労したことや、ハプニングなどなど、ついつい、いろんなことを思い出しつつ、観劇している自分がw
    (思い出の曲を聴くと、当時の思い出が瞬時にフラッシュバックする感覚とほぼ同じ)

    と同時に、現在演じている俳優たちの、観客には分からない苦労やら悩みやら、そういうものも何となく伝わってくるだけに、その見えない努力が思われてちょっと涙ぐんでいたり。
    (作品世界とは別次元での感動ではあるがw)

    『ディオニュソス』は日本とインドネシアの共同制作、とはいうものの、ペンテウスは中国俳優で、アガウエが日本人俳優(内藤千恵子)で、あとが全てインドネシア俳優なので、ほぼ「インドネシア版」である。
    そのためか、スズキメソッドによる演技ではあるものの、全体的に「陽」の印象。別に明るく演じているわけではないが、身体の使い方みたいなものが南国風というか、発散系というか、「スコーン!」という感じ。あっけらかん、と言ってもいいのかもしれない。

    『世界の果てからこんにちは』は、日本人俳優をメインにしつつも、ロシア、中国、韓国の俳優たちも配置した「アジア大陸版」な雰囲気も。
    日本人以外も、もちろんよく頑張ってはいるが、作品世界がどうにも「THE 日本」という感じだし、昭和歌謡が使われていることもあって「昭和感」が強いので、日本人のほうがどうしてもしっくり来る。
    日本人以外の俳優は、スパイス的に上手く使えば成立すると思うのだけど、日本人俳優と同じように扱って並ばせると、どうしても「間違い探し感」が出てしまう。
    まあ、この作品は、半ば余興のような位置づけでもあるから、その意味では成立はしているのだが。

    さて。鈴木演出から離れて10年となり、鈴木作品の見方みたいなものに、少し変化があったようで…

    自分は、確かに、ここにいた。
    ここにいたからこそ、いまがある。

    そう思えた利賀観劇であった。


    SCOT SUMMER SEASON 2018
    日本・インドネシア共同制作『ディオニュソス』@利賀大山房
    構成・演出:鈴木忠志
    原作:エウリビデス

    テーパイの王・ペンテウス:田冲(テン・チョン)
    ペンテウスの母・アガウエ:内藤千恵子
    ペンテウスの祖父・カドモス:Jamaluddin Latif(ジャマルディン・ラティフ)
    ディオニュソス教の僧侶:Ari Dwianto(アリ・ドウィアント)、Washadi(ワシャディ)、Mohamad Aditia(モハマド・アディティア)、Anwari A. A. Pahar(アンワリ A. A.パハール)、Dian N. Saputra(ディアン N.サプトラ)、Seftino A. Sambalao (セフィティノ A.サンバラオ)
    ディオニュソス教の信女:Sugiyanti Ariani(スギヤンティ・アリアニ)、Hildawati(ヒルダワティ)、Y. S. Laras Utami (Y.S.ララス・ウタミ)、S. Dexara Hachika(S.デクサラ・ハチカ)、D. Asti Wulanjani(D.アスティ・ウランジャニ)、Sarah Nurmala(サラ・ヌルマラ)

    音楽:高田みどり
    衣裳:鈴木忠志、Auguste Soesastro (アウグステ・スサストロ)
    演出助手:竹森陽一、Bambang Prihadi(バンバン・プリハディ)
    通訳:Hanggardha Priyahita(ハンガルダ・プリヤヒタ)
    制作:Wiwit Roswita(ウィウィット・ロスウィタ)
    制作助手:Bangkit Sanjaya(バンキット・サンジャヤ)
    プロデューサー:Restu L. Kusumaningrum(レスツ I.クスマニングルム)
    共同制作:Purnati Indonesia

    SCOT SUMMER SEASON 2018
    『世界の果てからこんにちは」
    構成・演出:鈴木忠志

    老人:竹森陽一
    娘・早香:中村早香
    僧侶:植田大介、石川治雄、長田大史、竹内大樹、江田健太郎
    花嫁:張玙妤(ジャン・ユーユー)
    紅白幕の女:佐藤ジョンソンあき、木山はるか、鬼頭理沙、國本紗季、Нана Татишвили(ナナ・タチシビリ)
    車椅子の男:이성원(イ・ソンウォン)、加藤雅治、藤本康宏、平野雄一郎、飯塚佑樹、守屋慶二、谷京盛(グ・ジンシェン)、干宇立(ガン・ユーリ)、李俊(リ・ジュン)

    花火師:前田徹、高橋保男、高橋光久、須藤優、村松秀隆、吉田倫哉、山嵜和樹、榎本昌弘、村井智紀、根岸佑佳、塩川和典

    【全作品共通スタッフ】
    演出助手:方昕(ファン・シン)
    照明:丹羽誠
    音響:小林淳哉
    衣裳:満田年水、岡本孝子
    道具:市川一弥

    葛森皓祐

    制作:重政良恵、岩片健一郎、園田祥子、戸田史子、半田晶子、進真理恵、尾形麻悠子、이수연(イ・スヨン)、張煦(ジャン・シュ)

    主催:富山県、(公財)富山県文化振興財団
    企画:SCOT
    共催:国際交流基金アジアセンター、TOGA アジア・アーツ・センター、(公財)舞台芸術財団演劇人会議
    後援:富山県教育委員会、南砺市、南砺市教育委員会
    助成:平成30年度文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)、独立行政法人日本芸術文化振興会、平成30年度文化庁文化芸術創造拠点形成事業

    2018年8月24日〜9月2日 富山県利賀芸術公園

  • 新国立劇場 開場20周年記念 2017/2018シーズン『1984』@穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
    【2018/5/20 13:00〜15:00(途中休憩なし)】

    新国立劇場ではスケジュール的に観られなかったため、豊橋公演を当日券で観劇。
    2050年以降の人たちが「1984」の読書会をしている、という二重構造で舞台が展開。原作の主要なエピソードを全部詰め込みつつ、簡潔でスピーディーな2時間に。

    読書会の人たちの時代には、ニュースピークもテレスクリーンもビッグブラザーも存在せず…という設定なのだが、「本当に無いって言い切れるのか?」みたいな問題提起で幕。
    詰め込まれている情報や関係性が膨大だし、原作を一度解体して再構築しているような感じなので、原作を知らないと難解な舞台に思えるかも。哲学的な概念も多いし。

    出演を予定していた大杉漣さんが逝去され、神農直隆さんが大役の代役を好演。
    主役の井上芳雄さんは、どことなく演技がミュージカルっぽいというか、セリフにメロディがつき過ぎているように聞こえてしまうのは、ただの先入観か?

    舞台装置が、建て込まれつつも意外と広がりのある抽象性を兼ね備え、いろんな場面に対応してて印象的。
    映像が多用され、演出面での功績大。やはり、こういう近未来的な設定の場合、もはや映像無しでの演出では現実味に欠けてしまうのだろう…という気がした。

    自身が出演した『1984』から半年ぶりに、再度『1984』と向かい合い、良い反芻の機会となった。


    新国立劇場 開場20周年記念
    2017/2018シーズン
    『1984』
    原作:ジョージ・オーウェル
    脚本:ロバート・アイク、ダンカン・マクミラン
    翻訳:平川大作
    演出:小川絵梨子

    ウィンストン:井上芳雄
    ジュリア(ウィンストンの恋人)、ウェイトレス:ともさかりえ
    パーソンズ(7歳の娘に思考警察へと通報される):森下能幸
    パーソンズ夫人、ウィンストンの母:宮地雅子
    サイム(思考警察に連れていかれる):山口翔悟
    オブライエン(党の中枢にいる):神農直隆
    マーティン(オブライエンの部下):武子太郎
    チャリントン(ウィンストンが隠れる骨とう品屋の店主):曽我部洋士
    党員:堀元宗一朗
    子役(トリプル・キャスト):青沼くるみ、下澤実礼、本多明鈴日
    映像出演:野坂弘
    声の出演:浅野雅博、大澤遊

    美術:二村周作
    照明:佐藤啓
    音響:加藤温
    映像:栗山聡之
    衣裳:髙木阿友子
    ヘアメイク:川端富生
    演出助手:渡邊千穂
    舞台監督:澁谷壽久
    音楽:坂本弘道
    稽古場代役:岩澤侑生子、加茂智里
    プロンプ:竹内香織

    制作助手:原佳乃子
    制作:田中晶子
    プロデューサー:茂木令子
    芸術監督:宮田慶子

    主催:新国立劇場

    2018年4月12日〜5月13日 新国立劇場 小劇場
    2018年5月16日・17日 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
    2018年5月20日 穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール

  • カンパニーデラシネラ『分身』@世田谷パブリックシアター
    【2018/3/21 14:00〜15:30(途中休憩なし)】

    『椿姫』『分身』の交互上演で、どちらも再演。(『分身』初演は2015年)
    『椿姫』に続いての観劇だったが、個人的には『椿姫』より好きだった。

    ドストエフスキーの『二重人格』が原作になっている作品だが、たぶん、原作がシュールな作品のほうが、小野寺演出との親和性が高いんだと思う。(SPACの『変身』も不条理だし)
    小野寺さんの(デラシネラの)身体性に原作が合っており、その意味では、『椿姫』は小野寺さんの身体性と微妙なズレがあるように感じた。

    あと、単純に、演出のアイデアも、こちらのほうに好みなものが多かったかな。最初のほうの身支度するところとか、ゴムで操られるところとか、ある瞬間を、角度を変えながら何度も再現するところとか。
    劇中の曲の雰囲気も、こちらのほうが好みだった。

    昨年、『1984』で大変お世話になった第七劇場の伊吹卓光さん、今回初参加とは思えない馴染み具合。しかも、オイシイ役どころ。スマートで癖のない佇まいが素敵。
    そしてなんと言っても、辻田暁さんが舞台に現れるとつい見ちゃう。何だろう、あの存在感。身にまとう空気が素敵すぎる。


    カンパニーデラシネラ
    『分身』
    ドストエフスキー「二重人格」より
    演出:小野寺修二

    王下貴司:男
    名児耶ゆり:女
    辻田暁:もう一人の女
    宮河愛一郎:ペトリョーシカ
    田中美甫:見ている女
    伊吹卓光:室長
    遠山悠介:同僚(椅子男)
    友野翔太:同僚(立つ男)
    大樹桜:同僚(女)
    宮崎吐夢:医者
    植田崇幸:門番(男)
    浜田亜衣:門番(女)
    豊島勇士:もう一人の男

    テキスト:山口茜
    照明:吉本有輝子(真昼)
    音響:池田野歩
    衣装:駒井友美子(SPAC-静岡県舞台芸術センター)
    演出助手:藤田桃子
    舞台監督:棚瀬巧
    照明オペレーター:吉田一弥
    舞台監督助手:山崎牧
    ヘアメイク:梶田キョウコ(レサンクサンス)
    ワードローブ:岡村英子
    イラスト・チラシデザイン:チャーハン・ラモーン

    制作:前原拓也、植松侑子
    制作補佐:谷陽歩*
    当日運営:松嶋瑠奈、古川真央
    (*合同会社 syuz’gen)

    制作インターン:大川原歩、加藤理都子、河野遥、関由美子、宮岡夏希

    主催:株式会社デラシネラ
    助成:芸術文化振興基金
    協力:公益財団法人セゾン文化財団
    協賛:TOYOTA創造空間プロジェクト
    提携:公益財団法人せたがや文化財団、世田谷パブリックシアター
    後援:世田谷区
    作品制作協力:世田谷パブリックシアター

    2018年3月17日〜21日 世田谷パブリックシアター

  • カンパニーデラシネラ『椿姫』@世田谷パブリックシアター
    【2018/3/16 19:30〜21:00(途中休憩なし)】

    『椿姫』『分身』の交互上演で、どちらも再演。(『椿姫』初演は2016年)
    今回の作品も、原作のエッセンスを抽出して演出する小野寺さんの手法が生きている。ストーリーというよりはエピソードの羅列。それも、時系列通りではなかったりする。

    その結果、小野寺さんが着目する原作のエピソードが、必ずしも一般的に有名なエピソードや共感できるエピソードばかりではなく、「この場面はなに?」みたいな瞬間がわりとあるのが、小野寺あるあるw
    (原作を詳しく知っていれば問題ないのだけど)

    あと、小野寺さんの演出で好きなのが、それまで対峙していた相手や物が瞬時に別の人間や物にすり替わった時に起こる、演者の「あれれ!?」みたいな身体の反応。
    しかし、つい、その瞬間の肉体を観てしまうので、どうしても話の本筋を追うのが二の次になってしまいがち。

    ただ、『椿姫』の原作は「本音と建前」みたいな複雑な場面や関係の連続なので、観ていて、こちらが取りこぼしたものも多かったように思う。
    もっとストーリーが単純な作品か、逆に、もっと台詞(ストーリーテリング)の比重を増やすかしても良かったかな、と。
    まあ、つい肉体を凝視しちゃうがために、話の筋を追えなくなってしまうのが原因なのだが。

    動き的にはとても緻密で洗練されているのだが、原作の世界観に比べるとちょっと現代的すぎるというか、「椿姫的なもの」という印象で、『椿姫』だと思って観ていると若干の違和感も。
    好みの問題でもあるとは思うのだが、翻案され過ぎてしまっているのかもしれない。


    カンパニーデラシネラ
    〈CoRich舞台芸術まつり!2016春〉グランプリ受賞記念公演
    『椿姫』
    アレクサンドル・デュマ・フィス「La Dame aux camelias」より
    演出:小野寺修二

    崎山莉奈:マルグリット
    野坂弘:アルマン
    斉藤悠:伯爵、私
    大庭裕介:公爵、父
    増井友紀子:なりたい女
    仁科幸:友人の女
    菅彩美:運ぶ女
    牟田のどか:新しい女
    宮原由紀夫:使者

    テキスト:山口茜
    照明:吉本有輝子(真昼)
    音響:池田野歩
    衣装:駒井友美子(SPAC-静岡県舞台芸術センター)
    演出助手:藤田桃子
    舞台監督:棚瀬巧
    照明オペレーター:吉田一弥
    舞台監督助手:山崎牧
    ヘアメイク:梶田キョウコ(レサンクサンス)
    ワードローブ:岡村英子
    イラスト・チラシデザイン:チャーハン・ラモーン

    制作:前原拓也植松侑子
    制作補佐:谷陽歩*
    当日運営:松嶋瑠奈古川真央
    (*合同会社 syuz’gen)

    制作インターン:大川原歩、加藤理都子、河野遥、関由美子、宮岡夏希

    主催:株式会社デラシネラ
    助成:芸術文化振興基金
    協力:公益財団法人セゾン文化財団
    協賛:TOYOTA創造空間プロジェクト
    提携:公益財団法人せたがや文化財団、世田谷パブリックシアター
    後援:世田谷区
    作品制作協力:世田谷パブリックシアター

    2018年3月16日〜21日 世田谷パブリックシアター