観るのも演るのも日々是好日!

演劇界に生きる男の観劇記録

SPAC-静岡県舞台芸術センターで俳優やってます!

倉敷幼稚園→粒江幼稚園→粒江小学校→倉敷南中学校→総社南高等学校→大阪教育大学

関心あるモノ・コト = 演劇/LEGO/昭和歌謡からJ-POP/字を書くこと/フィギュアスケート鑑賞/温浴施設めぐり/乗り鉄/旅行/睡眠

  • 江戸糸あやつり人形結城座 第三回スタジオ公演『綱館/釜どろ』@結城座スタジオ
    【2025/2/7 14:00〜15:10(途中15分ほどの幕間説明あり)】

    元SPACで、いまは結城座で人形遣いとなっている方からご案内いただき、2度目の結城座。今回は小金井市の結城座のスタジオでの上演。「ザ・スズナリの前半分」といった趣きの、キャパ60ほどの稽古場兼スタジオは、小さな演芸場のようでもあり、糸あやつりの人形芝居にピッタリの雰囲気。
    (そして、初めて降り立った武蔵小金井駅からスタジオまでの徒歩20分の道のりも、気になるお店が点在していたり、田舎すぎず都会すぎず、また足を運んでみたくなる街!)

    演目は、古典落語を人形芝居にした『釜どろ』と、歌舞伎でも上演されそうな題材の『綱館』。

    『釜どろ』は、石川五右衛門の手下たちが、親分の敵討ちとばかりに大釜を盗む「釜泥棒」の話。豆腐屋の主人が、釜の中に入ったり、その釜を盗もうと泥棒2人が担いだりと、釜に関係する動きや仕掛けがわりと複雑なのだが、それをあの、糸あやつり人形で、ごく自然に釜を操ってみせるのがなんとも興味深い。(「あやつり人形が、さらに何かを操っている」という、ある種のメタ的な構造が、演劇人として観ていると面白い)

    2作品目への舞台転換中は、今年390周年である結城座の成り立ちについてのレクチャー的なトーク。
    「質素倹約の天保の改革で、猿若町へ追いやられた」とか、「戦後はGHQの転入制限により区内の中心地に戻れず、戻れる範囲で最も中心地に近い吉祥寺で再興した」とか、興味深い話が多く面白かった。

    後半は『綱館』。平安時代の話で、渡辺綱が茨木童子と呼ばれる鬼と対峙する物語。
    綱が身じろぎもせず座っている(=操りの糸を微動だに動かさず、手板を持ち続けることになる)のとか、最後に茨木童子が吊りバトン的なもので吊られる(上昇していく)のとか、長袴や大きな袂の捌き方が実に滑らかであったりとか、後見の存在の重要性とか、見どころがいくつもあった。

    しかし、実は、最も印象に残ったのは、すぐ後ろに座って並んでいた長唄と三味線の4名。
    歌舞伎に比べ、演者との距離が近い(=客席にも近い)ことや、演じられる人形のサイズに比べると(当たり前なのだが)長唄隊のサイズが大きいことが、効果的に感じられた。
    長唄隊の手や表情の細かい動きが、手に取るように見え、普段そこまで見えないし見ないので、いろんな発見もあった。
    また、人形のほうがサイズが小さいことで、「人形たちを外側から包みこんでいる」感が半端ない。歌舞伎だと、役者も長唄隊も、同じ人間ということもあり対等に見えてしまうのだが、糸あやつり人形だと、長唄隊が「物語の世界を形成している」ように見え、「歌舞伎と糸あやつりでの、芝居と長唄隊、両者の関係の違い」が非常に興味深かった。(そしてまた、杵屋正則さんのお声の、強弱と高低の自在な操り方も良かった)

    結城座のために書き下ろされたと言われ、歌舞伎や浄瑠璃でもおなじみの『伽羅先代萩』の上演も年内に予定されているとかで、そちらも気になるところだ。


  • シアター・デビュー・プログラム 平常×萩原麻未『ロミオとジュリエット』@東京文化会館 小ホール
    【2025/1/31 19:00〜21:10(途中20分間の休憩あり)】

    ずっとタイミングが合わず、観られなかった平さんの舞台。久々に観られて満足w

    「花の都・ヴェローナ」から着想を得たと思われる、花をモチーフにした舞台美術のなか、ライオンのロミオ(モンタギュー家側の人物もライオン)と、ウサギのジュリエット(キャピュレット家側の人物もウサギ)で展開される悲恋。
    劇中音楽は全て、萩原麻未さんによるピアノの生演奏で、選曲はクラシックのみ。演奏が入らない場面も多々ある。
    平常さんの脚本・演出による『ロミジュリ』は、上演場面の選択として、モンタギュー家やキャピュレット家の両親は出てこず、パリスも出てこず、薬屋も出てこない。ひとりで演じ分けられて、ストーリーを押さえることができる、必要最小限の場面で構成されている。

    人形は、ロミオは上半身(手もある)、ジュリエットは胸像的(手は無い)なこしらえ。マキューシオ、ティボルト、乳母は、顔部分(目鼻口は無い)のみの人形で、ローレンス神父とエスカラス大公は、平さんが人間として演じる。
    ロミオは、少し声優っぽいというか、人形に声を充てている感じの演じ方に対し、ジュリエットは、かなりノリノリな、身体全体で演じていた印象。(基本的に、女性役の時のほうが活き活きしていたように見えたので、女性が多く出てくる作品が向いてるのかも)

    笑える小ネタも随所に挟まっていて、子どもにも観やすく、楽しめたのだが、小ホールの舞台空間におけるピアノが占める割合が意外と大きく、演奏は確かに素敵だったのだが、もう少し広い空間に仕立てても良かったような。演技空間が少し狭すぎて、ちょいちょい演者が舞台装置に軽くぶつかっていたり、動きにくそうだったのが、観ていて少し気になった。
    あと、ストーリー的に破綻はしていないものの、大前提である「10代前半の疾走的な恋愛」感は少し弱く、その「若さゆえの暴走」みたいなものが感じられるとなお良かったかも。

    小ホールのホリゾント一面に張られた紗幕風の布に、切り絵模様の布が貼り付けられ(縫い付けられ?)ているのが良かった。(植物を連想させる切り絵が、透ける布に飾られているイメージ)


  • 新しいシェイクスピア劇の創造事業/水戸芸術館プロデュース公演『世界のすべては、ひとつの舞台~シェイクスピアの旅芸人』@水戸芸術館ACM劇場
    【2025/1/26 14:00〜15:35(途中休憩なし)】

    『ハムレット』『真夏の夜の夢』『テンペスト』の劇中劇に関係する場面だけを繋いでひとつにまとめた作品で、旅芸人の一座が3つの劇中劇を演じるという設定。
    なので、たとえば『真夏の夜の夢』の劇中劇『ピラマスとシスビー』は、原作では職人たちによる素人芝居だが、本作では、『ハムレット』での『ゴンザーゴ殺し』を演じた旅芸人たちが、次の作品として『ピラマスとシスビー』に取り組む流れとなり、なんだか急に、芝居が下手な人たちのようになってしまったりもするw
    そのあたりの繋ぎ方や設定には改善の余地がありそうだが、旅芸人たちを主軸にしてシェイクスピア作品を紡いでいく着眼点はなかなか良いと思った。構成・演出は大澤遊氏。
    シェイクスピア独特の、韻を踏む感じの(ダジャレ感のある)セリフも、かなり工夫して翻訳したあとがうかがえ、本作に対する意気込みみたいなものが、そのあたりからも感じられた。翻訳は小田島創志氏が担当。

    旅芸人たち以外は、原作ではメインの役どころが本作では脇役となり、池岡亮介さんがハムレット→フィロストレート→ファーディナンド、塩谷亮さんがポローニアス→パック→プロスペロー、大内真智さんがホレーシオ→シーシュース→エアリエルと、3作のメインどころをリレーしながら演じ分ける。
    (ちなみに、大内真智さんはSPACの大内米治さんの兄。声質や喋り方の感じは兄弟で随分違うけど、踊ってる時の身体の使い方はかなり兄弟感がある)

    水戸子どもミュージカルスクールの出身者5名が、アンサンブルとして1シーンだけ(『テンペスト』の劇中劇でのダンスシーン)に登場。華やかな雰囲気づくりに貢献。
    こういう「劇場が育てた人材を、上手く本公演の作品に活かす(そして、それが分かるようにきちんとパンフレットに掲載している)」仕組みも素晴らしい。

    松田洋治さん演じる座長がコミカルに旅芸人たち6人を統率。今井公平さんと伊海実紗さんの新国立劇場研修所出身コンビが、堅実ながらも印象的な仕事ぶり。ラストのダンスシーンで、舞台上方(3階部分?)に登場した西奥瑠菜さんも、あの場面を象徴するような存在でとても良かった。
    あと、旅芸人の見習い役の八頭司悠友さんは、雑用係的な役どころで見せ場があまり無いにも関わらず、ちゃんとその役を生きている感じがあり、悪目立ちすることなく、でもきちんと存在感を残していたように思う。
    八頭司さんが引く幌馬車風の大きな荷車も、旅芸人っぽさを表すアイコンとして上手く機能していて良かった。

    正直なところ、途中までは「劇中劇で繋ぐ」というアイデアのほうが勝っていて、舞台そのものがそこへ追いついていないように感じられるところもあった。だが、『テンペスト』の劇中劇のダンスが唐突に途中で終わり、舞台上が一瞬で空っぽになったその瞬間、ふいに涙がこぼれた。(西奥瑠菜さんのドレスの長い裾が一瞬で消えてしまう、あの演出も秀逸!)
    あの一瞬の「無」になった瞬間が、旅芸人というものの、俳優というものの、本質を表していたように感じられたからだろう。
    呆気なく終わり、無に帰するのみ。どんなに積み上げてきたものであっても、一瞬で、儚くも過去のものとなってしまう。そういう「演劇」の本質がよく表れていた。「ああ、この『無』の瞬間のためにこれまでの物語があったのか」と。
    そしてまた、旅芸人は荷車を引いて別の地へと去っていく。結局、劇中劇を演じていた旅芸人たちもまた「旅芸人」を演じているだけの存在で…そんな風にも見えた。
    どんなセリフよりも雄弁に物語る、あの「無」と、荷車が消えていく絵柄に、すっかりヤラれてしまったようだ。

    ちょっと偏った見方だとは思っているのでw、「絶対観るべし!」とは言わないが、来週末にも公演があるので、「観てみるのもいいんじゃない?」くらいにはオススメしたい。ACM劇場でないと出来ない演出というか、あの劇場の良さをうまく取り込んだ演出ではある。
    (あと、水戸の街の感じも、水戸芸術館全体のコンパクトさも、SPACの人間にとっては懐かしさすら覚えてしまうACM劇場の造りも、個人的にはお気に入りなので、そういう部分での加点も大いに入っている…とは思うw)

    鈴木忠志氏が芸術監督を務めていた創設時に比べれば、随分と活動の規模は小さくなっているとは思うけど、なかなかどうして、踏ん張って演劇の炎をしっかりと灯し続けている姿に、同業者として感心、感動するし、励みにもなる。
    今年の9月には『ロミオとジュリエット』を上演するとのこと。こちらも楽しみだ。


  • 令和7年初春歌舞伎公演『彦山権現誓助剣』@新国立劇場 中劇場
    【2025/1/20 13:00〜17:10(途中15分間と25分間の休憩あり)】

    あらすじがいわゆる仇討物で面白そうだったのと、彦三郎丈が悪役という興味から観に行ったのだけど、想像以上に面白かった。菊之助丈が主役かと思っていたら、確かに主役ではあるのだが、実質の主役はお園役の中村時蔵丈と言ってよかろう。

    時蔵丈は、可憐な娘キャラ、剣術に長けたキャラ、虚無僧に扮した男装キャラなど、一つの役柄ではあるもののコミカルからシリアスまで演じ分け、彦三郎丈との殺陣では鎖鎌を手にするなど、かなりの活躍ぶり。彼は、舞台を見るたびごとに、芸が磨かれている気がする。
    菊之助丈も、爽やかで実直な好青年を好演していたし、二役の萬太郎丈は、出番は多くないものの、人間味あふれる若党の友平役が印象的だったし、お園の母親役の上村吉弥丈も、演技の幅広さが光っていた。
    彦三郎丈の悪役も、イケボをいかんなく駆使した魅力的なキャラを造形。彦三郎丈の遊び心がある感じの役づくりは、勉強になるし、かなり好きw
    あと、中村歌昇丈の次男・中村秀之助丈演じる、お園の妹の息子・弥三松(やそまつ)が、キュートで健気で、それゆえに物語に、より深みを与えていた。

    通しで上演されたことでエピソードが積み重なっていき、それが後々の場面や役柄に活きて、作品と役柄に深みがあった。
    また、二幕冒頭では、昨年度の流行語「裏金」「ホワイト案件」「50/50」「デコピン」などを盛り込んだセリフの掛け合いや、果ては「はいよろこんで」のギリギリダンスを黒御簾の演奏で披露。一連の掛け合いの最後には、「不適切にもほどがある!」で締めるという趣向も見せる。(ギリギリダンスが黒御簾演奏に意外とマッチするという発見w)

    舞台美術も、各場ごとに冴えていて、通常の歌舞伎の舞台で、ここまで惹かれたのは始めてかも。
    序幕の一つ「長門国吉岡一味斎屋敷の場」は大広間の造り方が良かったし、二幕の「山城国小栗栖瓢箪棚の場」は、立ち回りでの瓢箪棚が崩れる仕掛けが意表を突いて驚きがあった。三幕の「豊前国彦山杉坂墓所の場」は高低差をつけることで、峠の山道の感じがよく出ていたし、「毛谷村六助住家の場」は、物の配置のミザンスが色々と工夫されていたように思う。
    そして、最後の場面「豊前国小倉真柴大領久吉本陣の場」では、背景幕に海と水平線が描かれていたのだが、その海の波が、1枚の布に描かれているのにとても奥行きを感じさせる(海が、遥か向こうに続いている感がある)描き方で、それも良かった。

    惜しまれるのは、各場の転換が大掛かりゆえに、休憩以外でも定式幕が引かれ、転換に時間がかかっていたこと。歌舞伎座や国立劇場なら、盆を回転させるなどして、もう少しスムーズに見せられたのではないか、という気もする。

    少し長丁場な作品ではあるが、特に時蔵丈のファンにはオススメしたい作品。
    1階席前方なら、エンディングの手ぬぐい撒きで、手ぬぐいをゲットできるチャンスあり。


  • サルメカンパニー第9回公演『逆さまの日記』@下北沢 駅前劇場
    【2025/1/17 18:00〜20:40(途中10分間の休憩あり)】

    初サルメカンパニー。伊達暁さんと那須凜さん、近藤隼さんが出演しているということで観劇へ。
    とりあえず、とても面白かった。タイトルがダブルミーニングっぽく感じられてくる、泣けるラストも良かった。
    2作品同時上演のもうひとつ『ベイカーストリートの犬』も俄然、観てみたくなった(と言いつつ、観られないけど…)

    コナン・ドイルの『ボスコム渓谷の惨劇』と、江戸川乱歩の『探偵小説の謎』と、ピエール・バイヤールの『アクロイドを殺したのはだれか』を下敷きにしたオリジナル作品。作・演出は主宰の石川湖大朗氏(主要人物のひとりとして出演も)。
    下手端にバックバンド的に演奏エリアを配し、蓄音機からレコードの音が流れるシーン(何度か出てくる)の演奏なども担い、生演奏が必然的に感じられる使われ方だったのも良き。
    照明も美しく、あの狭い劇場にしては、いろいろと工夫されていたように見受けられ。
    休憩中も、幕間場面が繰り広げられ(聞いてなかったとしてもその後の観劇に支障はない)、休憩中と言いながら出演者が普通に舞台で演技を続けているのは、初めて見たかもw

    荒削り感はあるものの、ミザンスなど俳優の動かし方の演出が特に上手く、戯曲のどんでん返しぶりも上手く、サルメカンパニーのファン決定w
    作品のスケールが駅前劇場のサイズ感からはみ出してはいたが、「久しぶりに活きのいい小劇場を観た」感あり。
    (明日と明後日で終わりだが、行ける人はぜひ下北沢へ行ってほしい!)

    ★ここからネタバレあり★

    ひとつの殺人事件を現役を引退したシャーロック・ホームズが謎解いていくのだが、容疑者全員、何らかの嘘をついており、全てがひとりの仕業ではなく、いくつかの偶然が重なった上で起きた殺人であることが判明。
    ホームズの「ワトソン役」を担当していた、推理小説作家に憧れる医師のジョンが犯人だったと結論づけられる。ホームズは、ジョンの事情を考慮し、あえて警察に突き出すことはやめておくのだが、ジョンは自死し、エンディング…と思わせておいて、その半年後が描かれ、ホームズの推理がはずれていたことが判明する。
    殺人事件の本当の犯人は、自死した犯人の双子の姉ハリエットであり、そのことを、姉自らホームズに告げ、本当のエンディング。
    「逆さま」というのは、弟が事件の経過を綴った日記の書き方のことを指していたのだが、「真犯人は姉である」というニュアンスとしての「逆さま」とも受け取れる。

    シャーロック・ホームズ役の伊達暁さん、渋い声の感じとか、たたずまいとか、推理を進めていく理路整然とした語り口とか、とにかくすごくハマり役で、ほかのホームズシリーズを演じている姿も見てみたくなる。ラストで、真犯人から真実を聞いている時にかすかに潤んでいく瞳も印象的。
    姉のハリエット役で真犯人の那須凜さんも、姉御肌的に接しつつも、常に弟を想う気持ちが伝わってくる良い芝居。何度か、ギターを弾きながら歌う歌声も印象的。ホントに、母親の那須佐代子さんとはまた違うタイプの素敵な女優さんに。
    弟役は石川湖大朗さん、彼もとても良かった。姉が殺したことを知っていた上で、姉に疑惑の目が向かないよう自らミスリードを仕掛け、自分が犠牲になることも厭わなかったのかなと思わせるような、そういう塩梅が非常に上手い演技だったと思う。端正な演技が印象に残る。
    このメイン3人がめちゃくちゃフィットしていたことで、作品全体の強度が増したように思う。

    あと、警部役の園田シンジさんも、前半の、客席を温めるようなコミカルなポジションを担い、良い仕事ぶり。
    近藤隼さんは、殺害される役だったこともあり、出番がわりと限られていたのが残念だったけど、エンディングでの真犯人の告白場面で、ハリエットに声を荒げる豹変具合が印象的。
    (とにかく、メイン3人が名優ぶりすぎて、他の出演者も上手いんだけど霞んだ印象はあり)

    あぁ、もう1回観たいw
    っていうか、僕、アガサ・クリスティとか今回のとか、いわゆる探偵モノが好きなだけなのか?w


  • 劇団papercraft第11回公演『昨日の月』@彩の国さいたま芸術劇場 小ホール
    【2025/1/17 14:00〜15:50(途中休憩なし)】

    折り込まれていたチラシのデザインや写真が好みだったのと、主演が『虎に翼』の小橋役やモダンスイマーズの舞台で気になっていた名村辰さんで、ほかにも福田麻由子さん(『女王の教室』や『白夜行』に、『ちびまる子ちゃん』の姉!)や加藤貴子さん(元Lip’s!)など気になる人も出ていたので、観劇。作・演出は主宰の海路(みろ)氏。企画制作はアミューズ。

    近未来っぽい設定で、自分の「昨日」もしくは「明日」を売ることができる(終日販売、と呼ばれている)社会が舞台。終日販売は、どちらかというとコソコソ隠れて行うイメージ、という設定。そこに「月に住んでいたが迫害されて地球で素性を隠して暮らしている人々」が絡んだり、「月が無くなって、新しい月が新たに造られて誕生する」世の中だったり、という設定も加わってくる。
    SFファンタジーっぽい雰囲気の印象ではあるが、描かれているのは「思春期の青年のモヤモヤした想い」だろうか。全体的に重めのトーンな舞台で、閉塞感がある。
    なお、結末としては、名村さん演じる大野歩が、新しい月になる前の日(つまり今の月の最後の日)に、昨日も明日も売る(永遠に今日を繰り返すことになる)決意をし、同じ日が何度も繰り返されることを示唆して幕。

    名村さんは、屈折した複雑な感覚の大野歩を、繊細に大切に紡いでいて好印象。昭和に生まれていたら吉岡秀隆系の俳優な感じ。(富良野塾のオーディションに受かっていたようなので、まさにw)
    歩の父親と、終日販売の売人の二役を演じた村上航さんの、ちょっとニヒルでアンニュイな感じの雰囲気も良かった。
    福田麻由子さんや加藤貴子さんもすごく役柄に合っていたし、月人で風俗嬢の井上向日葵さんの、「スパイス」ではなく「みりん」「はちみつ」的な存在感も独特で良かった。彼女の場面で必ず敷かれる赤いビニールシートも印象的。

    雰囲気はすごくあって嫌いじゃない感じなんだけど、ちょっと私小説っぽいというか個人的な日記というか同人誌的というか、どことなくそういう感じがあって、もう少し観客を意識して開いた感じの作風でもいいかな、とも思う。
    次回は、夏にKAATの大スタジオでの新作上演らしい。観に行くかどうかは出演者の顔ぶれ次第かな…という感じではある。

    物販では、チラシデザインをアレンジしたポストカードを、1枚1000円で販売。「高っ!」とも思うが、裏面にQRコードが載っていて、読み込むと上演台本が読める仕組みに。台本を紙で買うほどではないが、読んでみたい、という人にはとても嬉しいグッズだ。


  • た組『ドードーが落下する』@KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ
    【2025/1/16 19:00〜21:00(途中休憩なし)】

    加藤拓也氏の作・演出。再演ではあるものの、演出家の言によれば、演出も戯曲も初演から随分と手を加えられているようだ。(初演は未見。YouTubeで初演を全編観られるので、後日視聴予定)
    神奈川公演の後、大阪、三重、茨城でも公演あり。

    空間が伸び縮みするような印象の舞台美術も良い。蛍光灯のほんのりと薄気味悪い感じも良い。箱庭のような壁の小棚(壁への昇り降りの階段としても使用)も良い。ひと回り小さいサイズの小道具も良い。その場には登場しない人物たちが、目の前で繰り広げられている場面を無表情で傍観しているミザンスも良い。役柄ごとの衣裳のカラーコーディネートのチョイスも良い。統合失調症を体現する、主役の平原テツさんも良い。なんだかずーっと観続けられてしまう演出も良い。

    ただ、戯曲そのものが、自分にはいまひとつしっくり来ず。同じ加藤拓也氏の作品『いつぞやは』に近い印象で、演出とか見せ方にしても、次々に場面が展開していく感じとか、いろんなところから俳優が出たり入ったりする感じとか、ちょっと観客を煙に巻く感じとか、『いつぞやは』の手法をなぞっている感もあり…(『いつぞやは』が、『ドードーが落下する』初演をなぞってるのかもしれないけど)
    もしかしたら、平原テツさん演じる夏目が初演よりクローズアップされ、今回は「夏目の物語」になっているのかも。(初演時は、信也役の藤原季節さんがトップクレジットで、今回の再演での信也役は秋元龍太朗さん)
    『在庫に限りはありますが』『もはやしずか』『綿子はもつれる』みたいな、1幕もの(あるいはそれに近いような作品)の加藤拓也演出のほうが、僕は好きなんだと思う、いまのところ。

    あと、平原テツさんは主演に据えるより、二番手三番手あたりで狂気を垣間見せるほうが活きるような気もして。主演が平原さんだと「役者としての完全一人勝ち」感が出て、作品そのものの印象が薄れるような…(それだけ達者ということでもあるが)

    平原さん以外では、秋元龍太朗さんや鈴木勝大さんの、本心が見えにくい感じとか、手堅い安定感ある演技が良かった。あと、諫早幸作さんの、バイト先の店長も印象に残る。


  • serial number12『YES MEANS YES』@下北沢 ザ・スズナリ
    【2025/1/16 14:00〜15:40(途中休憩なし)】

    新ドラマ『御上先生』の脚本担当でもある詩森ろば氏の最新作は、スウェーデンの「Yes Means Yes法」をモチーフに、結婚5年目の女性・佳恵(内田慈)のモノローグを通して、性被害/性加害が描かれる。
    客層は、予想に反して年配男性の割合が多い。どういった客層にヒットしたのか、個人的に気になるところw

    中学時代の部活の顧問との関係、大学時代の彼氏とその友人との関係、夫との関係、女同士での性に関わるあけすけな会話、カウンセラーとのやり取り、不妊治療に悩む友人との会話…断片的に、多層的に、佳恵の人生が見えてくる中で、「たったひとりの、一見幸せそうな人生を送っているように見える女性でさえ、こんなにも複雑でシリアスな悩みや不安(もちろん、性にまつわるものも含む)が渦巻いているのか…」と驚きを隠せない。
    同時に、自分の身の回りにも、「何でもない風を装って、でも、そう装うことで擦り減っている人たち」が、きっとたくさんいるであろうことは容易に想像できてしまって、「舞台を通して見えてくる現実」にパンチを喰らったような気持ちにも。

    モノローグ、とは言ったものの、正確には内田さんのほかに4人の若手男性が登場する。
    リビングを模したような二間四方くらいの空間の外側の四隅を、男性が取り囲むように座る。男性は、時に佳恵の夫・啓吾のセリフを四隅から4人でリレーするように喋り、時に夫以外の登場人物(顧問教師ハル/大学時代の元彼ナツ/元彼の友人アキ/カウンセリングで知り合ったゲイの男性フユ、など)としてリビング空間で演技をしたり。
    5人とも出ずっぱりで、佳恵は感情の起伏が激しい場面もいくつかあり、すごく集中力と体力を要す舞台。

    男優4人は全員実年齢20代で、キャラや醸し出す雰囲気が絶妙に異なり、佳恵の夫にしては若い印象だが、そこも含めて良かった。夫・啓吾というひとりの人格を演じる時は「4人の個性の差」が上手く活きて、それがひとつに融合するような良さがあったし、各自が担当したそれぞれの登場人物はそれぞれの役柄が、演じる俳優の持ち味に上手くマッチしていたように思う。
    中でも、フユを演じた諏訪珠理さん、声の細さや優しい語り口が役柄に合っていて、「弱そうだけど、でも、強くおおらかな感じ」が印象に残る。

    どこへどう着地するのか読めない展開は、互いの想いを吐露した夫婦が、話し合いを経て、「YES」のやり取りを繰り返しながら会話をするラストへ。もつれていた糸がほどけていくような、堆積していたものが取り除かれて少しずつ水が流れ出すような、優しいエンディングを迎える。
    失われた20年を取り戻す(正確には、失われたままで取り戻せはしないのだけど)取っ掛かりを見つけた佳恵に、幸あれ!

    「被害者だけど加害者だ」というようなセリフだったり、「自分に合わせてくれる相手に対して、自分が先回りして相手の好みを応える、その『気楽に本音が言えない』しんどさ」だったり、「相手を思いやるがゆえに感じるモノ」も色々と描かれている。
    性的同意の話ではあるけれど、その根底には「相手を思いやる大切さと難しさ」「会話をする大切さと難しさ」みたいなメッセージもあって、ずっしりと重く、濃密な舞台。心がぐったりと疲労感に襲われつつ、でも、観られて良かった作品であることも確かだ。(『御上先生』への期待も高まる!)


  • 新国立劇場 演劇 2024/2025シーズン『白衛軍 The White Guard』@新国立劇場 中劇場
    【2024/12/17 14:00〜17:10(途中20分間の休憩あり)】

    作品的に難解そうなイメージがあったため、観劇を少し迷ったのだが、個人的に注目している俳優が何人か出ており、新国立劇場制作の作品ということもあり、観劇。
    「戦争を下地にしたチェーホフ」という雰囲気もあり、たとえば、会話中の抜け感とか、恋愛模様が見え隠れする感じとか、明確な主役が分かりにくい群像劇な感じとか、そのあたりはかなりチェーホフ的。チェーホフほど、会話が成り立っていない感じではないけれど。(『ワーニャ伯父さん』の引用、「ホッと一息つけるんだわ」なども出てくる)

    ただ、ベースとなる、現代の日本人には分かりにくい「1918年のロシア革命後のウクライナの様子」についての情報量が多く、それらを分かりやすくセリフで説明されるわけでもないので、物語を追うためにすごく頭を使う作品。
    ウクライナにまつわるあれこれの予備知識が、あらかじめ頭に入っているなら、だいぶ観やすくなるとは思う。(なので、『悲劇喜劇』最新号に掲載されている戯曲を読んでから観たほうが良いかも)
    そして、そういった「観客には明示されない当時の時代性のような部分」を、俳優たちは根底に持っていなければならず、演じる側も緻密な作業が求められそうな作品。(出演者は文学座系の俳優と、新国立劇場研修所出身者が多く、いわゆる新劇系の芝居の作品)

    幕開き、劇場奥からトゥルビン家の屋敷の舞台装置が客席に近づいてくる(スライディングステージ)演出で、4面舞台を有する中劇場ならではの仕掛け。カッコいい。
    主人公の士官候補生ニコライ(村井良大)がギターを弾いて歌うのが好きという設定だったり、中尉レオニード(上山竜治)がオペラを嗜む設定だったりと、歌が作品を包む要素になっているのが構造的に良く、しかもふたりとも歌声が抜群に良い。

    主人公は村井良大さん演じるニコライだと思うのだが、実は出番はそう多くない。ただ、ラストシーンはニコライにかかっているので、非常に重要な役どころではある。歌声が、力強いのにクセがなく、非常に耳触りが良い。最近注目している俳優のひとり。

    ラリオン役の池岡亮介さんも注目している俳優のひとりだが、今回は道化的なお調子者の役割も担っていて、こういう「はっちゃけた」役も、やり過ぎない感じでなかなか上手い。勢いだけで演じていない、地頭の良さそうな感じも良い。

    レオニード役の上山竜治さんも、難しい役どころをチャーミングに好演。吉本アイドルの「RUN&GUN」時代から知っている身としては、「こんな立派になって!」感が過ぎるw

    出演者の中で女性は、レーナ役の前田亜季さんのみ。めちゃくちゃ良い演技をしていて、「素敵な女優さんになってる!」と思ってしまったほど。衣裳さばきや小道具の扱い方、表現としての手の使い方など、細かなところもさり気なく上手く、「将来的に舞台を主戦場に活躍する大女優」への片鱗を感じさせる。いつか『欲望という名の電車』のブランチとか演じそう。

    そのほか、ニコライやレーナの兄アレクセイ役の大場泰正さんをはじめ、石橋徹郎さん、内田健介さんなど、トゥルビン家に集う人々もそれぞれに好演。
    大鷹明良さんは二役務めていたが、学校の用務員のようなマクシム役が、非常に味わい深く、戦時下における弱き者の代弁者のようでいて印象的だし、戦死者に花を手向ける、セリフの無い短い場面の演技も印象的だった。

    俳優も演出も概ね高評価で、印象的な良いセリフも多く、観てしまえば「いい舞台だった」と思えると思うのだが、演劇通好みなキャスティングであり、いかんせん、観劇したいと思わせるまでのハードルが少し高すぎるイメージ(チラシも少し格調高すぎた気もする。馬は出てこないし…)。
    一昨年の『レオポルト・シュタット』にも似た印象ではあるが、『白衛軍』のほうがライトではある。上演時間は『白衛軍』のほうが長いけれど。
    平日の昼公演で、客入りは4分の1ほど。色々ともったいない…むむむ。
    『白衛軍-トゥルビン家の日々-』みたいに、何かサブタイトルを付けても良かった気もする。(ブルガーコフ自身は、小説を『白衛軍』、戯曲を『トゥルビン家の日々』として発表している)


    新国立劇場 演劇 2024/2025シーズン
    『白衛軍 The White Guard』
    作 ミハイル・ブルガーコフ
    英語台本 アンドリュー・アプトン
    翻訳 小田島創志
    演出 上村聡史

    ニコライ・ヴァシーリエヴィチ・トゥルビン(士官候補生) 村井良大
    アレクセイ・ヴァシーリエヴィチ・トゥルビン(ニコライの兄、砲兵大佐) 大場泰正
    エレーナ(レーナ)・ヴァシーリエヴナ・タリベルク(ニコライの姉) 前田亜季
    ヴィクトル・ヴィクトロヴィチ・ムイシラエフスキー(砲兵二等大尉) 石橋徹郎
    ラリオン・ラリオノヴィチ・スルジャンスキー(トゥルビンのいとこ、学生) 池岡亮介
    ウラジミール・ロベルトヴィチ・タリベルク(レーナの夫、参謀本部大佐) 小林大介
    レオニード・ユリエヴィチ・シェルビンスキー(槍騎兵隊中尉、現在ゲトマンの親衛副官) 上山竜治
    アレクサンドル・ブロニスラヴォヴィチ・ストゥジンスキー(大尉) 内田健介
    フョードル(ゲトマン宮殿の従僕) 大鷹明良
    ゲトマン(ウクライナ反革命政権の統領でドイツの傀儡) 采澤靖起
    フォン・シュラット(ドイツ軍将軍) 前田一世
    フォン・ドゥスト(ドイツ軍中尉) 今國雅彦
    ドイツ軍軍医 山森大輔
    宮殿の兵士1(声のみ) 西原やすあき
    宮殿の兵士2(声のみ) 松尾諒
    宮殿の兵士3(声のみ) 笹原翔太
    宮殿の兵士4(声のみ) 草彅智文
    ボルボトゥン(ベトリューラ軍の第一騎兵大隊長) 小林大介
    フランコ(ボルボトゥンの当番兵) 西原やすあき
    キルパートゥイ(ボルボトゥンの部下) 武田知久
    ウラガン(ボルボトゥンの部下) 草彅智文
    ガラニバ(ペトリューラ軍のコサック百人隊長) 駒井健介
    コサック兵(脱走兵) 前田一世
    靴屋 山森大輔
    マクシム(学監) 大鷹明良
    将校1(中尉) 西原やすあき
    将校2(中尉) 駒井健介
    将校3(中尉) 今國雅彦
    士官候補生1 笹原翔太
    士官候補生2 松尾 諒
    士官候補生3 采澤靖起
    士官候補生4 武田知久
    士官候補生5 山森大輔
    士官候補生6 前田一世
    士官候補生7 草彅智文

    美術 乗峯雅寛
    照明 佐藤啓
    音楽 国広和殺
    音響 加藤温
    衣裳 半田悦子
    ヘアメイク 川端富生
    アクション 渥美博
    演出助手 中嶋彩乃
    舞台監督 北条孝、加瀬幸恵

    演出部 飯田大作、稲生親紀、北林勇人、後藤容孝、高橋邦智、平石尚子、明神杏奈、沼田梨沙、伊藤真
    ヘアメイク 木村久美、荒井秀美
    美術助手 酒井佳奈
    音響助手 橋かおり
    稽古場代役 都築亮介
    プロンプ 日沼りゆ
    大道具 俳優座劇場(井戸元洋)
    小道具 高津装飾美術(財前光子)
    小道具製作 土屋工房(土屋武史)
    特殊小道具 アトリエカオス(田中正史)
    特殊効果 戸井田工業、ローカスト、山縣商店
    衣裳 松竹衣裳(清水崇子、大野遥奈、北條祐介)
    衣裳製作 横田裕二、佐藤美香、藤崎美香
    帽子製作 シャポーヌ(下重恭子)
    履物 アーティス(大石雅章)
    電飾 イルミカ東京(中村徹)
    協力 ニケステージワークス
    観劇サポート イヤホンガイド、篠原初実、持丸あい(音声ガイド)、文化庁委託事業「令和6年度障害者等による文化芸術活動推進事業」
    舞台・照明・音響操作 新国立劇場技術部、シアターコミュニケーションシステムズ、アート・ステージライティング・グループ、フリックプロ、吉田信夫(舞台)、鈴木かおり(照明)、青木駿平(音響)、村上武志(大道具)

    制作助手 林弥生、小川真理
    制作 中柄毅志、伊澤雅子
    プロデューサー 三崎力
    芸術監督 小川絵梨子
    主催 新国立劇場

    2024年12月3日〜22日 新国立劇場 中劇場

  • シス・カンパニー公演 KERA meets CHEKHOV Vol.4/4『桜の園』@世田谷パブリックシアター
    【2024/12/16 13:00〜15:55(途中15分間の休憩あり)】

    2020年春に上演が予定されるも、初日目前にコロナ禍の緊急事態宣言の影響で上演中止になった企画が、キャストを半分ほど入れ替える形で、会場もシアターコクーンから世田谷パブリックシアターへと替え、4年越しに上演。
    4年前のキャストよりも演劇通好みな俳優陣となり、作品としての完成度的には、結果的にこれで良かったのかも。『桜の園』を上演するには、世田谷パブリックシアターでは舞台が狭すぎる感じではあったが。

    これまで観てきた『桜の園』のなかで、新劇寄りな演出のものとしては、一番しっくりくる『桜の園』であった。演出自体は、それほど奇をてらったものではなく、わりと商業演劇な感じというか、原作知らない人でも楽しめるし分かりやすい感じ。2幕で客席から登退場するのと、幕間の転換で、舞台装置の転換と並行しながら小野寺修二さんによるステージングの演出が挿入されていることが、演出面での変化球か。

    なにより配役が絶妙で、この座組で上演したからこそ成功した舞台と言えよう。
    出演者それぞれの実年齢が、それぞれの役柄の年齢よりも上の人(あるいは下の人)が多く、普通にキャスティングした場合、少し違和感のある配役だとは思うのだが、それが今回の場合は上手くハマっていたように思う。

    天海祐希さんのラネーフスカヤの麗しいこと!黙って立っているだけでも説得力のある立ち姿の素晴らしさ、漫才で言う「ボケとツッコミ」のような「演技の受けと攻め」の使い分け、浮世離れしたような存在感など、どの瞬間を切り取っても、まさしくラネーフスカヤの一つの完成形。各幕の衣裳はどれも、身長があるから見栄えがする。(4幕の黒いロングコートはメーテルのようで良きw)

    池谷のぶえさんのドゥニャーシャは、やり過ぎてギャグになるギリギリ手前を攻め、「自分が見えてない勘違い女」を、普通は観客の共感を得られないような造形になりそうなところ、観客を味方につけるような好演ぶり。「鼻につかないぶりっ子」という、ある意味、画期的なドゥニャーシャw

    峯村リエさんのワーリャも斬新で、ロパーヒンへの想いをギャグ的に出しつつ、家長としてのしっかり者感も体現し、「ワーリャとしての葛藤」がよく見える演技。いわゆる「ギスギス」「トゲトゲ」感がマイルドに仕上がっていて、とてもチャーミングなワーリャに。衣裳のデザインと相まって、スタイルがとても美しく見えたのも良かった。

    浅野和之さんのフィールスも、単に老いているだけでなく、時の流れまでも彼の中では過去で止まっているかのような、ほかの人物たちとは異質な存在感を醸し出せていて、それが4幕ラストでグッと活きてくる。「ラネーフスカヤと話していても眼中にあるのはガーエフだけ」みたいな身体のフォーカスの作り方も良かった。

    そのガーエフの山崎一さんも、この座組では少し弱いかと思いきや、ついつい喋りすぎてしまう感じとか、悪気が全く無いのに地雷を踏んでしまう感じとかも上手く、「前に前にと出しゃばってはこないのに、確かにそこにいる存在感」で魅せてくれた。

    エピホードフの山中崇さん、ヤーシャの鈴木浩介さん(お高く気取った嫌な奴感がすごいw)、トロフィーモフの井上芳雄さん(薄毛のカツラ&メガネで冴えない感じを熱演)、シャルロッタの緒川たまきさん(出てくるたびに手品がいくつか披露され、手品の種類が相当ある!)、アーニャの大原櫻子さん、ピーシチクの藤田秀世さんらも、それぞれに良い仕事ぶり。
    本当に適材適所というか、それぞれの役柄を生かす役者が揃った感じ。

    そして、今回の舞台でのMVPは、個人的には、荒川良々さんのロパーヒン。もうちょっとサイケデリックな感じで来るかと思いきや、彼の持ち味とも言える朴訥な感じや間の悪い感じを活かしつつ、農奴出身の成り上がり感や劣等感、卑屈になるが故に自分を大きく見せようとする感じなど、色々な人が想像するロパーヒン像が、満遍なく体現化されていた印象。ただの成金とも違う、ただの嫌な奴とも違う、非常に複雑な感覚が、荒川良々さんの肉体を通じて表現されていたように思う。
    そして、想像以上にスタイルが良い(足が長い!)。天海祐希さんと並んで、見劣りしないで絵になるのも良かった。

    東京のあと、大阪と福岡でも上演。チケットは早々に完売し、当日券も争奪戦な感じだし、何よりチケット代もそれなりにするが、3時間立ち見だとしても、観てみる価値はあるかも。


    シス・カンパニー公演
    KERA meets CHEKHOV Vol.4/4
    『桜の園』
    作:アントン・チェーホフ
    上演台本・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ

    ラネーフスカヤ夫人:天海祐希
    トロフィーモフ:井上芳雄
    アーニャ:大原櫻子
    ロパーヒン:荒川良々
    ドゥニャーシャ:池谷のぶえ
    ワーリャ:峯村リエ
    ピーシチク:藤田秀世
    エピホードフ:山中崇
    ヤーシャ:鈴木浩介
    シャルロッタ:緒川たまき
    ガーエフ:山崎一
    フィールス:浅野和之
    通りすがりの男、下男:猪俣三四郎
    下男:矢部祥太
    駅長、下男:吉澤宙彦

    美術:松井るみ
    照明:関口裕二
    音響:水越佳一
    衣装:安野ともこ
    ヘアメイク:宮内宏明
    ステージング:小野寺修二
    舞台監督:福澤諭志
    プロデューサー:北村明子

    演出助手:加藤由紀子
    美術助手:平山正太郎
    照明操作:三嶋聖子、福山莉子、森山紗貴
    音響操作:常田千晴、久保勇介
    衣装助手:藤井やすのり、赤嶺愛海
    現場ヘアメイク:菊池泰子、黒田はるな、木戸望
    ステージング助手:崎山莉奈
    演出部:鷲北裕一、宇野圭一、山松由美子、長谷川ちえ、井上悠介
    衣装部:古田亜希子、松野美保
    ギター演奏・指導:伏見蛍
    マジック指導:ダーク和秋
    制作【進行】:鈴木瑛恵、市瀬玉子、市川美紀、土井さや佳、井上果穂
    制作【票券】:笠間美穂、安田千秋
    制作【宣伝】:西村聖子
    制作【WEB】:垣ヶ原将
    制作【アシスタントプロデューサー】:吉澤尚子

    大道具制作:(株)シー・コム(伊藤清次)、(有)美術工房拓人
    植栽:櫻井忍
    小道具:(株)藤浪アート・センター(浅海敬)
    衣装制作:諫山真澄、梅田麻里、岸久理、佐野明香、高崎あゆみ、高橋由美、土橋智子、原みちこ、見上真紀、伊島青、青木美侑、徳蔵涼海、チーシャプロジェクト
    履物:(株)アーティス(大石雅章)
    運搬:(株)マイド

    台本協力:肥田光久
    協力:明星真由美、(株)センターラインアソシエイツ、(有)バランス、モックサウンド、(株)アントラクト、コラソン(有)、井上薫、中村のん、伊島薫、(株)CASUCA、DAVIDS CLOTHING、DORIAN GRAY、Mindbenders & Classics、suzuki takayuki、(株)内田染工場、松竹衣裳(株)、(株)東宝コスチューム、突撃洋服店、クエルポ、M’s factory、(株)デラシネラ、(株)STAGE DOCTOR、albatross guitar works、(株)三響社、スタジオAD、(株)gaaboo、(株)movel、(株)ストロボライツ、新宿村スタジオ(稽古場)
    マネージメント協力:(株)キューブ、(株)研音、(有)グランアーツ、大原櫻子事務所、(有)大人計画、(株)ダックスープ、krei(株)、(有)ザズウ、(株)ラウダ、kitokito、(株)円企画

    【東京公演】提携:公益財団法人せたがや文化財団、世田谷パブリックシアター
    【東京公演】後援:世田谷区
    【大阪公演】運営協力:(株)サンライズプロモーション大阪
    【福岡公演】主催:九州朝日放送(株)、(株)FM FUKUOKA、シアターマネジメント福岡(株)、(株)サンライズプロモーション東京
    【福岡公演】後援:福岡市

    企画・製作:シス・カンパニー

    2024年12月8日〜27日 世田谷パブリックシアター
    2025年1月6日〜13日 SkyシアターMBS
    2025年1月18日〜26日 キャナルシティ劇場