観るのも演るのも日々是好日!

演劇界に生きる男の観劇記録

SPAC-静岡県舞台芸術センターで俳優やってます!

倉敷幼稚園→粒江幼稚園→粒江小学校→倉敷南中学校→総社南高等学校→大阪教育大学

関心あるモノ・コト = 演劇/LEGO/昭和歌謡からJ-POP/字を書くこと/フィギュアスケート鑑賞/温浴施設めぐり/乗り鉄/旅行/睡眠

ヒラタオフィス+TAAC『金魚の行方』@サンモールスタジオ
【2025/11/8 13:00〜15:00(途中休憩なし)】

引きこもりの青年とシングルマザーの母親、自立支援センターの所長と家出少女だった職員、母親の年下の彼氏、青年の姉的な存在の幼なじみ。
6人で繰り広げられる、引きこもりがテーマの本作は、iaku(横山拓也)とserialnumber(詩森ろば)を足して2で割ったような作風。少しコミカルなところもありながら、でも作品的にも登場人物的にも、重くウエットで。

劇中で、モチーフやエピソードとして意味を持つものを順不同に挙げると…
自然界では生きられない金魚、その金魚が居なくなった水槽、引きこもって壁を叩いて行う会話、水たまりバシャバシャ、マクドのポテト、落とし物の伝書鳩、うたた寝している人に毛布を掛ける優しさと起こす優しさ、子どもたちに身を食べられながら敵と戦うハサミムシの母親、家出した猫のリサ、世界の極地である自立支援施設、転落死した施設利用者…など。

そのほかの細かいエピソードに至るまで、最終的に作品の世界観に重なり合っていく秀逸な戯曲(タカイアキフミ氏の書き下ろし)。戯曲上での「金魚」の扱い方(取り上げ方)も実に上手い。
一方で、ハッキリとは明かされないエピソードもいくつか出てくるのだけど、解明されないことはあまり気にならず、そう感じさせる処理の仕方も良かった。
演技も、皆、地に足がついた感じというか、「……。」的なセリフの見せ方(仕草だったり、表情や目線だったり、微細な身体の反応だったり)が上手い。沈黙がちゃんと言葉になっていると言おうか。

部屋の一室が舞台装置になっているのだが、これが、室内に置かれている金魚の水槽を大きくしたようにも見え(つまり、大きな水槽の中に、本物の水槽が置かれているような感じ)、この部屋の住人たちもまた、「世話をされないと生きてはいけない」金魚みたいな存在であることを想像させる。

主演の枝元萌さんの演技が以前からすごく好きで、今回も、期待を裏切らない良い芝居を見せてもらった。毒親なのに、「あんた100%間違ってるよ!」とも言い切れない人間味があって、その丁寧な役作りに感心。
息子役の木村聖哉さんも、彼の心の中の葛藤や不安が透けて見えてくる、みずみずしい良い演技で、この親子の、演技や会話における互いの想いの駆け引きだけでも観る価値があるだろう。

ひとつ惜しかったのは、玄関ドアの裏側(観客に見えない側)が大きく開いた時に、大半の観客には見えていないのだが、客席の上手端からは少し見えており、それなのに材がむき出しになった造りで、それが見えるたびに現実に引き戻されてしまった感じがして、できれば裏面もドアの加工をしてほしかった。

テーマは重いし、観劇後もモヤモヤ感を少し引きずるタイプの舞台かもしれないが、地味ながらも手堅く丁寧な「知る人ぞ知る郷土銘菓」みたいな味わいで、そういうのが好きな人には特に観てもらいたい作品。11月16日まで新宿のサンモールスタジオにて。


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