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演劇界に生きる男の観劇記録

SPAC-静岡県舞台芸術センターで俳優やってます!

倉敷幼稚園→粒江幼稚園→粒江小学校→倉敷南中学校→総社南高等学校→大阪教育大学

関心あるモノ・コト = 演劇/LEGO/昭和歌謡からJ-POP/字を書くこと/フィギュアスケート鑑賞/温浴施設めぐり/乗り鉄/旅行/睡眠

第22回 静岡県中部高等学校演劇研究大会 秋季公演@藤枝市民ホールおかべ
【2025/10/26 13:00〜17:30】

いわゆる「静岡県の高校演劇の中部地区大会」。初日の25日は駿河総合高校1校のみの上演で(他業務あり未見)、2日目に4校が発表。5校のうち2校が県大会に出場できるという、東部や西部に比べるとかなり条件の良い地区。
2日目の4校の感想を簡単に。


13:00~14:00 静岡市立高等学校
『廃駅にて』作/月端よつば

生徒創作。進路のことをきっかけに喧嘩してしまった高3の女子高生2人。廃駅となったホームで、それぞれがたまたま出会った人と会話を交わすうち、自分を見つめ直し、仲直りに至る…というストーリー。ストーリーのプロットについては、若干、ありがちなところもあり、そのあたりが練られればもっと良くなりそうな気配。
「廃線」ではなく、あくまで「廃駅」らしく、貨物列車はたまに通るという設定。舞台装置に貼られたかつての時刻表だと、客車は数時間に1本という本数の路線らしく、静岡まで7時間くらいかかるというセリフもあり、東北か中国地方あたりの秘境路線っぽい雰囲気…のわりに、主人公2人の価値観は、そこまで秘境路線に住んでるっぽい雰囲気はなく、少し違和感。
冒頭の「神社の境内」という設定と「神主」とのやり取りが悪くなかっただけに、この設定が後半で完全に消し去られてしまった状態になったのがもったいない。あの神主さん、もう1回ラストとかに出てきてほしかったのだが。「廃駅の近くに神社があり、廃駅の掃除も神主さんがボランティアでやっている」とかの設定でも良かったのかも。
廃駅に唐突に現れる「車掌」の存在がかなり謎で、そのあたりの脚本への書き込みがもっとあっても良かったか。
演技面や滑舌面での課題も見られるものの、俳優たちの素材は悪くない。上手く使えば、上手く活きそう。
無音での暗転が何度かあったのももったいない。蝉の声などのSEでも入れれば良かったのに。一方、着信音やスマホカメラのシャッター音などは、会場のスピーカーから流れると少し興ざめするような点でもあり、その処理にも一工夫欲しいところ。


14:10~15:10 静岡県立静岡東高等学校
『毒を持った少女たち』作/浅岡美吹

昨年の創作劇脚本コンクールで入賞した、静岡高校の生徒の作品。自殺サイト主催者のレナには、妹を死に追いやってしまったという負い目があり、サイトを見て集まった自殺志願者たちが山奥で集団自殺を試みるものの、レナは、毒と睡眠薬をこっそりと入れ替えて渡し、自殺志願者たちに生きる意欲を与えていた。そんなある日、いつものように志願者が集うのだが、その中のひとりが、レナの妹らしき人物に会ったという発言を聞いたことにより、レナ自身が自死を決意。青酸カリを服用するも、最終的に一命をとりとめ…というストーリー。
トモが、その後、医者だらけの家族たちとどう向き合って、どう立ち直ったのか、もう少し描かれていても良かったか。(万引き犯として追われていたのはどう解決したのか、とか)
おそらく原作は全員女性なのだと思うが、今回はそのうちのひとり「アカ」を、男子部員が「性別不詳」な中性的な感じで演じており(もしかしたら男性として演じていたのかもしれないが、はっきりとは断定できないような雰囲気でもあり)、それが意外と良かった。
猫が登場して「洗剤の袋をかじって中身がこぼれる」という部分は、「何となく猫は舞台上に登場したものの客には見えない」的な演出になっていたが、どう処理すべきだったのか、難しいところ。
出演者は総じてセリフが明瞭で、癖っぽい演技もあるものの、悪くはない。脚本と演技アドバイス次第で、もっと良くなりそうな雰囲気は感じられた。


15:20~16:20 静岡県立清水南高等学校
「放送室物語」作/清水南高校演劇專攻生
(翻案・泉鏡花作「天守物語」)

「天守物語の富姫と図書之助が現代に転生」というプロットの劇中劇を練習する高校生たち。一方で、現実は絶妙に『天守物語』の世界とリンクする展開を見せる。エヴァンゲリオンも(たぶん)ちょいちょいリンク。そして、現代に転生した富姫役であるスズナと、図書之助役であるミレ、ふたりの孤独や悩みを、互いに癒し合うような友情物語の一面も見せる。全編生演奏。
リアルとフィクションのあわいを行くような演出と演技は、作品世界に上手くハマっていたと思う。おそらくセリフの分量は、他校の1.5倍くらいあったように感じられたが、皆、淀みなく簡潔に語ることで、芝居のテンポ感とメリハリを生むのに繋がっていた。登場人物たちの愛すべきキャラクター設定も多く、部員の個性が良い意味でバラバラに見え、作品に奥行きが生まれた。
何より、16名という部員数の多さが、登場人物の多彩さに繋がり、他校と比較にならないほど、活気やエネルギーが舞台上にみなぎり、ホールの広さも、むしろ狭く感じるほどで、人数の多さによる効果で、他校演劇部を一歩も二歩もリードしていたところは否めない。昨年の『しんしゃく源氏物語』から倍増しているわけだが、人数が倍になったことで、できることは4倍くらいになっていた。
課題としては、声量があるが故に、声量の残響に自身の言葉が負けてしまっている出演者が何人かいたところ。もっと粒立てて語るか、もっと声量を抑えて語ると良かったかも。メイン2人は張らない発声でも充分言葉が届いていたし。しかし、まくし立てる系のセリフをどう聞かせるか(あるいは聞かせるところと勢いだけを伝えるところとの取捨選択)は、プロでも難しいし、劇場によっても変わってくるのでなかなか厄介。
身体的には、他校に比べると圧倒的に身体の癖が少なく、首や腕の無駄な動きは、ほぼ見られなかった。
タイトルが『放送室物語』である必然性が少し欠けていたかな。セリフには「放送室」が出てきて、おそらく「天守」にあたる存在であることも分かるのだが、実際に舞台上で設定されている場所は教室で、少し違和感。下手奥の演奏エリアに紗幕を張っていて、これはこれで良かったのだが、もしかしたら、紗幕をガラス窓とかにして、演奏エリアをいわゆるDJブース的な扱いにし、「放送室のブースとスタジオ」みたいな設えにしても良かったのかも。(ただ、そうなると、教室が騒がしくて注意しに来る教師の存在の必然性が無くなってしまうのだが…)
あと、欲を言えば、登場人物の多くが劇中劇の練習パートに関わるメンバーばかりとなり、メインストーリーでもあるスズナとミレ、このふたりの少女の展開に、彼らがちょっと影響しなさすぎで、サブストーリーとメインストーリーの境界線がハッキリしすぎていたのがもったいなく感じた。もうちょっとメインとサブがクロスオーバーしていれば、メインストーリーの深みが増しただろうし、サブストーリーの面々も、賑やかし以上の存在になれたのではなかろうか。
冒頭の、幕開きと同時に聞こえてくる低音ビート(バスドラかな)と、ビニール傘による群舞は、単純に「おお、カッコいい」と思わせるクオリティで、「ああいうのをやってみたい」と他校の部員や顧問に思わせる力があった。
東部と西部の代表校の出来によっては、関東大会に駒を進めても納得できるような作品で、2年目にして、「清水南だからこそ出来うる作品に少し手が届いたような」そんな瞬間に立ち会えた。


16:30~17:30 静岡県立静岡城北高等学校
「フエキりゅーこう」 作/阪本龍夫(静岡城北高校演劇部潤色)

戦争で地下シェルターに閉じ込められた学生達の生活を描いた作品で、歌やダンスを織り交ぜた演劇を稽古し、発表する機会を待つのだが、最終的には、一人を除いて全員が砲弾を浴びて死んでしまう。いわゆる反戦モノ。
描き方が少し直接的すぎるというか、「真正面から声高に反戦」的なセリフが多く、道徳劇っぽく見えてしまったのは、原作のせいなのか、演出のせいなのか。もちろん、そういうメッセージは大切ではあるのだが、「え、実は反戦メッセージに繋がってるの!?」みたいなほうが、そうと分かった時のズシンと来る重みが、より大きいような気がする。
登場人物は、原作通りの人数なのだが、清水南のあとだったこともあり、舞台が妙にスカスカに感じられてしまい、原作より人数を増やしても良かったような気もする。もう2〜3人居るだけで、随分印象が変わったと思う。あるいは、シェルター感を出して、もっとアクティングエリアを狭めるか。
メインの役のジョーとユウは、原作では男性の設定なのだが、今回はジョーを女子が演じており、健闘していたと思うのだが、戦闘下という設定を考えると、ここはやはり男子に演じてもらいたかったし、途中で「女性兵士・ソニア」の役がわざわざ登場している事の対比としても、ジョーは男子が良かったのではなかろうか。ソニアの背負うモノの重みが軽くなってしまった印象。
音響の音量レベルが総じて大きすぎて、冒頭のオルゴールも、もっと繊細に聞こえてきてほしいのに、やけに大きいし、電話の着信音も、客席で鳴り響いているのかと思うような感じで、もうちょっと工夫が欲しかったところ。
あと、出演者たちのまとう雰囲気からすると、どちらかというとハートウォーミングな作品のほうが合っているような気もした。俳優たちの技量はあるだけに、直接的で扇情的な表現ではなく、もう少し繊細な表現の作品を観てみたかったかな。


なお、駿河総合と清水南が、県大会へ駒を進めたもよう。静岡県大会は11月29日と30日に、三島市民文化会館にて。

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