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演劇界に生きる男の観劇記録

SPAC-静岡県舞台芸術センターで俳優やってます!

倉敷幼稚園→粒江幼稚園→粒江小学校→倉敷南中学校→総社南高等学校→大阪教育大学

関心あるモノ・コト = 演劇/LEGO/昭和歌謡からJ-POP/字を書くこと/フィギュアスケート鑑賞/温浴施設めぐり/乗り鉄/旅行/睡眠

ala Collection シリーズ vol.16『ハハキのアミュレット』@吉祥寺シアター
【2025/10/13 14:00〜16:00(途中休憩なし)】

可児市文化創造センターの滞在制作シリーズ。今回はiakuの横山拓也氏による書き下ろし。可児で初演ののち、吉祥寺、ひたちなか、宇都宮、廿日市、日田、丸亀、知立と巡演。
かつて棕櫚箒(しゅろほうき)の名産地として栄えた、南近畿のある町の工房・倉西商店を舞台に、過疎化問題(人口流出問題)、後継者不足、町おこし、村社会などが盛り込まれたストーリーが展開していく。
3枚しか出なかった当日券を運良く手に入れることができ、何とか観られたのだが、想像以上に良い舞台だった。さすが、現代演劇の三大拓也(横山拓也、加藤拓也、扇田拓也)w

ちなみに、「ハハキ」とは「箒」の語源になった言葉で、「アミュレット」はお守り。物語では最終的に、力加減が難しく技術習得に苦労していた、棕櫚箒の繋ぎ部分を、銅線から三つ編みに編み込んだシュロに変えることで、堆積していた諸問題が解決を迎えることになる。

登場人物は7人。倉西商店の4代目で三つ編みがトレードマークの奏(南果歩)、町を捨てて東京へ出ていった兄・雄一(平田満)、大阪で就職した息子・大樹(田中亨)、大樹の幼馴染で同じく大阪のホテルに就職していた・凛(東宮綾音)、凛の父であり奏の同級生であり地元ホテルの経営者でもある哲男(緒方晋)、倉西商店の取引先であり奏の同級生でもある神主の照道(福本伸一)、奏の弟子1年目の穂香(橋爪未萠里)。
会話にのみ出てくる存在感ある人物としては、「奏の夫」、「哲男の妻」「地元のおばちゃん」。

町の助成金で伝統工芸の灯を守る代わりに、倉西商店は安産祈願の神社のノベルティである小さな箒を作っているのだが、この箒の受注が多すぎて、肝心の棕櫚箒づくりの後継者育成になかなか手が回っていない。そのことを、奏も穂香も歯痒く思っている。
この問題を起点として、登場人物たちがそれぞれに抱えている問題があらわになり、波乱ののち、先に書いた大団円を迎える。

横山氏の作品としては、緻密に、具体的に、地に足がついた感じの脚本で、新劇の劇団あたりで上演されてそうな印象。突飛な人や独特の感性の人が出てこず、話の展開に無理もなく、とある工房の様子を覗き見しているような作品だった。
強いて言えば、「凛がユーチューバーの男性の子を身ごもり、その男性とは連絡が取れなくなり、シングルマザーで産むことを決意する」とか、「奏の夫は香港に単身赴任中で、互いに恋愛感情はあるものの事実的には別居婚状態で、夫婦はもう何年も会っていない」とか、実社会にはそういう人があまり居なさそうな設定もあるものの、「想像できる範囲内」ではあるので、人物や設定のリアリティに嘘くささ(ご都合主義な印象)を感じることは無かったかな。

橋爪さんが、こういう出演の時、「本筋に直接的には関わらないサブキャラクター」で出ていることが多い印象だが、今回は3番手くらいのポジションで、「アミュレットの箒」を考案したのも橋爪さん演じる穂香、という設定で、見せどころが多かったのが個人的には嬉しかった。(橋爪さんの芝居、好きなのでw)

南果歩さんが「似たような演じ方をする俳優があまり居ない、独自の存在感」で、葛藤を抱えつつも朗らかに生活している自立した女性を好演。還暦という設定ではあるものの、若くてチャーミングで、でも時折、60歳っぽさを垣間見せる、その匙加減が上手い。
平田満さんも、「歳を重ねて心境が変化し、町のために奔走したいと故郷に舞い戻ってくる(でもその真意が周囲には見えないために「何を考えているのかよく分からない」と認識されてしまう)」、奏の兄を好演。

ただ、ふたりそれぞれは良いのだけど、ふたりが会話している場面で「血の繋がり感(兄妹感)」が感じられず。奏が同級生と話している時と、兄と話している時とでの違いがあまり見えず、兄の雄一も、いくら疎遠だったとはいえ、妹への接し方がどうにもぎこちない感じで、実の兄妹というよりは「疎遠だった幼馴染」「いとこ」のような雰囲気に感じてしまった。「奏の物心がつく前に雄一が町を出ていってそれきり」くらいの離ればなれだったのなら成立するかな…という感じ。
ラストの場面に至ってもなお、「ふたりとも、まだお互いに少し遠慮がある」ようにも感じられ、ちょっと惜しい。

舞台装置の建込みが素晴らしく、舞台上にリアルさがあったおかげで、この場で繰り広げられる会話にもリアリティが生まれやすかったのではないか、と思う。

地方公演で観劇できそうな機会がある方は、とりあえず観てみると良いのではないだろうか。とりあえず、南果歩さんが素敵なので。(橋爪さんも推すけどw)


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