劇団温泉ドラゴン第20回公演『まだおとずれてはいない』@雑遊
【2025/10/12 17:00〜18:20(途中休憩なし)】

原田ゆう作・演出による、劇団結成15周年の作品は、海で溺れて亡くなった友人と、SNSで繋がっているガザの友人を登場させながら(実際に人物そのものは出てこない)、男3人の日常的な会話劇で描く、社会派な内容。
弁当屋のシェフ秋実(あきざね)(阪本篤)が、「亡き友人の神林と同じ生年月日」ということもきっかけに、ガザ侵攻で避難生活を送っているパレスチナ人とSNSで繋がり、金銭的な支援を始める。
無意識に、亡き友人を救えなかった事への償い的な気持ちや後悔が、パレスチナ人一家への支援となる。
最初は懐疑的だった、幼馴染であり弁当屋の経営者でもある初範(筑波竜一)や、神林の弟・省吾(いわいのふ健)も巻き込みながら、やがて、パレスチナ料理を盛り込んだ、ガサの人たちを支援する弁当開発へと発展していく。
その矢先、支援していた(支援することでエジプトへの亡命を手助けしようとしていた)パレスチナ人一家が、空爆に遭って全員亡くなってしまう。亡き友人に続いて、またしても「救えなかった」と自責する秋実…
あらすじとしてはこんな感じ。ラストで、救いの手を差し伸べられなかったと自責する秋実に、省吾と初範が、逆に救いの手を差し伸べるように「溺れてみせる」のが、ふたりのありったけの優しさでもあり励ましでもあり、印象的。
物語の展開の仕方や、言葉のチョイスが秀逸なのだが、そこにサブリミナル的に入れ込まれた『銀河鉄道の夜』が、これまた実に巧み。
登場人物3人の名前が、それぞれ『銀河鉄道の夜』に由来されている(と思われる)。
昔「ザネリ」というあだ名が付いていた秋実(あきざね)、カンバとよばれる神林(おそらく「カンパネルラ」)、「ジョバンニ」由来で命名されたと思われる初範(はつのり))
ザネリを助けるために溺死したカンパネルラ。「ほんとうのさいわい」を探し続けるジョバンニ。銀河鉄道は弁当配達のハイエースに。
リアリズムな舞台でありながら、どことなくファンタジーの雰囲気が漂うのは、刷り込まれた『銀河鉄道の夜』のおかげか。
「支援する」ことの大切さと難しさ。忘れないこと、想うこと。出来ることと出来ないこと。贖罪と後悔。「ライフジャケットを投げる」勇気と、覚悟と。
そんなことを、押し付けることなく観客それぞれに考えさせてくれる、そんな舞台だった。
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