観るのも演るのも日々是好日!

演劇界に生きる男の観劇記録

SPAC-静岡県舞台芸術センターで俳優やってます!

倉敷幼稚園→粒江幼稚園→粒江小学校→倉敷南中学校→総社南高等学校→大阪教育大学

関心あるモノ・コト = 演劇/LEGO/昭和歌謡からJ-POP/字を書くこと/フィギュアスケート鑑賞/温浴施設めぐり/乗り鉄/旅行/睡眠

ホリプロ『チ。―地球の運動について―』@新国立劇場中劇場
【2025/10/12 13:00〜16:00(途中15分間の休憩あり)】

漫画、アニメでも有名な『チ。』の舞台化は3時間の大作。悩んだ挙句、原作もアニメも未見のままで観劇することに。(ちなみに、僕が観た回は、ホリプロステージ会員の貸切公演回で、ステッカーのプレゼント付き)
魚豊氏の原作を、長塚圭史氏が脚本化。演出は、インバル・ピントと共に作品を創っているアブシャロム・ポラック。インバル・ピント→バットシェバ→キッドピボットと渡り歩いているエラ・ホチルドが振付を担当し、音楽は阿部海太郎氏。

「意外と、地動説とか天動説とか本筋にあんまり関係ないなあ」というのが第一印象。地動説や天動説の仕組みが分かってなくても、観劇には問題なし。
「地動説」「天動説」とか、唐突にセリフに出てきて、何の説明もされないまま会話が進んでいくしw
そして、「「チ」とは「地(地球)」のことかと思いきや、「血」のことだったのか…?」という感想なのだが、果たしてこの舞台化は、どこまで原作の世界観を描けているのだろう。

物語のテーマが「地動説か天動説か」よりも、「宗教という名の支配」「自由を獲得するための信念」といった感じで、「地動説が異端」とされているものの、「なぜ異端扱いされるのか」の部分はあまり明確でなく、単に「いまの宗教(支配)にとって邪魔な存在だから」的な描かれ方に見えた。星球とか使われてはいるのだが、舞台全体からあまり「宇宙感」は感じられず。
それぞれのキャラクターの「信念」みたいなものは伝わってきて、「その信念をどのように全うするか」という舞台になっていた。

「地動説を裏付けるための観察や研究」の場面もほぼ無く、「支配者 VS 異端者の攻防戦」に比重が置かれていたし、拷問シーン(指詰めとか抜歯とか)が何度が描かれ、その演出も、血を連想させる描き方でちょっとグロテスク。

結果として、作品クレジット的な主役はオクジー役の窪田正孝さんだと思うのだが、舞台の実質の主役は、ノヴァク役の森山未來さんと、その娘のヨレンタ役の三浦透子さんという印象。(実際、舞台の演出は、森山さんで始まり森山さんで終わる)
例えるなら、「軍国主義の支配層が、反軍国主義だった娘が処罰されて失い(実は逃げ延びるが、最終的には自爆テロを起こす)、さらに時代が民主主義になったことで、自分の拠り所を失い呆然とする…」みたいな。

演出面では、ダンサーのアンサンブル6人(皆川まゆむ、川合ロン、加賀谷一肇、笹本龍史、Rion Watley、半山ゆきの)が良かった。なかでも、川合ロンさんの存在感が印象的。
「誰がどれか分からない」みたいな感じではなく、それぞれの個人が認識できる使われ方で、でもアンサンブルとしての群衆性はあり、しかも、いろんな場面でいろんな形で登場し、出番も多い。6人一緒にではなく個人で登場する場面も多々ある。
殺陣の場面もあれば、デラシネラっぽい動きの場面もあったり、全員でそれぞれに太鼓を打ち鳴らしたりと、踊るというよりは、まさしくコロス的な活躍。
舞台転換や、舞台装置の移動においても大活躍しており、彼ら6人がこの舞台を進めていると言っても過言ではない。

雨は降らせるし、宙吊りはあるし、壁みたいなユニットがいくつも出てきて、俳優たちは動いているそれを登ったり降りたりしながら場面が変化していくし、とにかく、段取りが大変そうな舞台。(そしてお金もかかっていると思われるw)
音楽の一部は生演奏で、上手に演奏エリアがあり、竹内理恵とギデオン・ジュークスによるデュオ「MUSIC for ISOLATION」が担当。管楽器をメインに、色々な民族楽器や小物楽器の音色も。

メインどころの出演者は当然ながら、皆達者で、危なっかしい出演者は不在。演技のクオリティ的には問題ない。歌唱場面がある俳優も多く、ミュージカル的な側面も。(三浦透子さん、めちゃくちゃ歌が上手い!)
ラファウ役の子役(小野桜介と駒井末宙のダブルキャストで、僕が観た回は小野桜介)が、要所要所で、狂言回し的な感じでシンガー役として登場して歌うのだが、これも良かった。

実質主役の森山未來さんは、まったく悪びれない悪役を嬉々として演じており、さすがの存在感。ただ、アンサンブルダンサーに混じって動いている時に、森山さんだけ動きの質感が独特というか、ほかに馴染むことが出来ないというか、若干の悪目立ち。(ひとり、アレンジやオリジナルの動きが入っている感じ)

役者も良い。演出も良い。音楽も良い。
…なんだけど、いまいちしっくり来ないように感じられてしまったのは、脚本に原因があるのか、そもそもの原作の問題なのか。あるいは、役者や演出や音楽のスキル面の巧さが悪目立ちしすぎていたのか。
(後ろの席の人たちの会話だと、舞台では漫画の前半がかなり端折られているそうな)


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