座・高円寺 秋の劇場14/劇場へいこう!『夏の夜の夢』@座・高円寺1
【2025/9/28 14:00〜15:10(途中休憩なし)】

シェイクスピアの『真夏の夜の夢』を70分に刈り込み、まとめ上げた。しかしながら、妖精たちの登場やラストには歌のシーンもあるなど、70分に様々な要素を詰め込んだ意欲作。
こんなに刈り込んで、しかし、スッキリと分かりやすい『夏の夜の夢』は、あまり観たことがないかも。脚本が恐ろしく良いのだろう。
2024年初演。脚本はかもめんたるの岩崎う大氏。演出は、温泉ドラゴンの主宰であり、座・高円寺の芸術監督でもあるシライケイタ氏。
出演者7人で、二組の若い恋人たちと妖精たちはもちろん、シーシュースとヒポリタも出てくれば、職人たちの場面もある。もちろん、かなり大胆にカットはされているが、パック以外は、ひとり3役くらいを兼ねている。
舞台両端には各俳優の早替え場があり、その様子も見せながらの場面転換。大きな積み木のような抽象セットに、大量の緑のゴムボール、電飾、カラーコーン、など。舞台転換的な作業も俳優たちが行うので、全員ほぼ舞台上に出ずっぱり。相当、段取りの多い作品だと思う。
衣装は、人間たちは白をベースとした洋装だが、妖精たちは色とりどりでメルヘンで書き割り風味な装い。(洋服のサイド部分が簡略化された、ゼッケンとかサンドイッチマン的な仕上がり)
パック役の西脇将伍さんは、ろう者で手話のみで演技。パックのセリフは、その時に出番のない男性陣が交代しながらマイクで音声化。ある意味「二人一役」的な演出。
これが、「妖精の姿は人間に見えず、妖精の声は人間に聞こえない」という戯曲の世界観と、「パックは手話でしか語れない」ことが、必然性で結びついている感じがして、作品との相性抜群で、説得力があって良かった(もちろん、パック以外の妖精たちは普通に喋っているけれど)。
ラストの有名な、パックの長セリフは、最初は手話だけで無音のなかで語られ、次に、出演者全員での割ゼリフとして手話付きで語られ、やがて歌と振り付けとなる。それがとっても素敵で、理由もなく泣けてくる感じだった。(パックも含め全員、妖精たちの扮装とかではなく、白の衣裳になっているのも良かった)
僕が観た回は、西脇さんとは別に、手話通訳者(田中結夏)が、ほぼ「出演者のひとり」状態で舞台上にいて、演技やリアクションもしながら、他の俳優たちのセリフを手話にしていたのだが、そのなじみ具合も良かった。
手話が「添え物」ではなく、作品を構成する1つの要素になっている。
出演者は全員、適材適所という感じで座組のバランスも良く、技量のある人たちが集まっていたが、なかでも、山﨑薫さんが素晴らしい。
ヒポリタとヘレナとタイターニアを慌ただしく演じ分け、大女優然とした雰囲気も、コメディエンヌっぽいキャラクターも見せ、笑いも取るし、歌も聴かせる。時々、高畑充希さんに見える(聞こえる)瞬間があって、声やセリフの感じが少し似ている印象。
温泉ドラゴンの『痕、婚、』で、その演技に一目惚れしたが、今回の『夏の夜の夢』で完全に射抜かれ、またひとり「この人が出演しているなら観に行こう」俳優が増えてしまったw
恋に落ちる花(原作で言う「恋の三色すみれ」)が、とても臭い匂い(タンスの防虫剤のような匂い?)で、恋から冷める花が、とっても良い匂いがする、という設定なのが、ひねりが効いていて面白かった。
こういうひねりが随所に見受けられ、本当に台本がよく出来ていると思う。
座・高円寺の「劇場へいこう!」シリーズの作品は、本当によく出来たものが多い。今年一緒に再演されていた『小さな王子さま』(数年前に観劇)も良かったし、古くは『旅とあいつとお姫さま』や『ピノッキオ』『ふたごの星』なども見応えがあった。
子どもはもちろん、大人にもオススメできる。ろう者との共演に興味がある人にはうってつけだし、観劇初心者からシアターゴアーまで間口の広い、座・高円寺の底力を感じさせる作品だ。
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