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演劇界に生きる男の観劇記録

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サルメカンパニー第十回公演『サルメ版 黒い十人の女』@シアター風姿花伝
【2025/8/10 18:00〜20:45(途中10分間、幕間転換とショーを兼ねた休憩あり)】

市川崑監督の映画版をベースとした、サルメ版の『黒い十人の女』。ナイロン100℃や、テレビドラマ版などでもリメイクされているが、実はどれも未見。(でも内容は何となくは知っている)
テレビ業界を舞台に、人たらし的な恋多きプロデューサー風松吉(石川湖太朗)と、彼をめぐる10人の女性(今回、うち1名はトランスジェンダー的なゲイの設定)の復讐劇。

シアター風姿花伝をL字型に使い、段差を有効活用し、一部を2階建てにして1階部分に演奏スペースを確保。横長状の舞台をうまく住み分けながら、時にオーバーラップするように、場面転換の多い設定を巧妙に演出。
テンポ感、メリハリ、空間フォーカスの大小、どれも絶妙で、それらは演出の力もあるのだが、この空間設定だからこそ生まれたところも大きいような気もする。

俳優陣もいちいち魅力的で、10人の女性たちの描き分けも上手く、それぞれのキャラクターの個性がしっかりと見え、それぞれの背負うドラマに説得力があった。
女性たち以外の脇の役柄も、それぞれに良い意味でクセがあり、群像劇としてもよく出来ていたと思う。

風松吉役(映画版は船越英二)の石川さんは、飄々とした雰囲気の人たらし感が秀逸。決して自分からは突き進まないのに、相手が勝手に落ちてくれる。
あと、セリフの音楽的な構成が非常に巧みで、もしセリフを譜面に起こしたとしたら、音符の展開のみならず、ブレス位置とか、どこまで伸ばすとかも含め、普通の俳優とはちょっと異なる楽譜が出来上がりそう。(それが、無意識なのか、意図して精巧に組み立てているのかは分からないけど、)あのセリフ術はちょっと学びたい。

石ノ下市子役(映画版は岸恵子)の那須凜さんは、良い意味で、お母様である那須佐代子さんのセリフや演技に似ているところが折々で見られ、役柄と相まって大女優感満載。力強さとしなやかさとを使い分け、メリハリ感も。
「少しキャラクターは違うけど、映画『Wの悲劇』で三田佳子さんが演った羽鳥翔とか似合いそうだな」などと思いながら観てたw

松吉の妻・双葉役(映画版は山本富士子)の小黒紗耶さんも、感情を押し殺し(ているように観客に感じさせる巧みさ!)つつも、内面では嫉妬や愛情が渦巻いているような情熱的な感じの本妻を、しっとりと熱演。彼女の醸す空気感が、本作においてかなり重要だったように思う。
意識していたのか、セリフ回しが「古き良き昭和の映画女優」っぽい感じ(若干早口で、感情をあまりのせすぎない感じの言い回し)だったのも功を奏していた。
和装姿のまま、演奏スペースでピアノを弾くのも格好良き。

トランスジェンダーである三岸三郎役(映画版は宮城まり子)の阿岐之将一さんは、男性姿は格好良く、女性姿は美しく、とにかく麗しい。
この役を男性にしてスパイスを効かせたのは、上手く作用していたと思う。

あと、エレベーターガールの八代役(映画版は有明マスミ)が、全体での出番はそこまで多くないのだけど、彼女が生い立ちを独白する場面が(語られる内容も相まって)、結構印象に残っている。

休憩時間には、百瀬桃子(松原もか)による、オリジナル曲のメドレー歌唱タイムが挿入。出演者全員でのバックダンサー&コーラス&演奏も豪華で、気持ち的にはちっとも休憩にならずw
歌の歌詞も、バックダンサーの動きも、かなり独創的だったと思うんだけど、その若干のミスマッチ感というか、ギャップ感が良かったんだろうな。
「黒のハット&黒のタンクトップ」という、「体育会系ピンキラのキラーズ」みたいな男性バックダンサー&コーラスに至っては、ツッコミどころがあり過ぎて、そっちばかり観てしまった。
そして、休憩も劇中も含め、何人か歌う場面があったけど、皆さん「ミュージカル俳優ですかい?」並の上手さで。

開演前と終演後に客前で客入れやアナウンスをしていた、演出助手で幕間のダンサーも兼ねていた佐々木優樹さんも良かった。ちょっと声を酷使して枯れてしまった感じも。
ほかの制作手伝いや受付の方など、関係スタッフもみな、お人柄が良さそうな人が多くて、とても幸せなカンパニーなんだろうなと思った。

「重厚で品のあるエンタメ舞台」という感じで、娯楽性が強いのに安っぽくなりすぎないのが、サルメカンパニーの強みかも。
結果的に「自分たちが楽しい」という所にとどまりがちなエンタメ舞台は多いけど、「いかに観客を楽しませるか、そのショーアップ加減の研究を楽しむ自分たち」みたいな境地で取り組んでいるように見えた。

次回公演は来年3月、東京芸術劇場シアターウエストで、出演者オーディションも開催とのこと。楽しみである。


サルメカンパニー第十回公演
サルメ版『黒い十人の女』
原作:和田夏十『黒い十人の女』(映画『黒い十人の女』監督 市川崑)
上演台本・演出:石川湖太朗(サルメカンパニー)

テレビ局プロデューサー 風松吉:石川湖太朗(サルメカンパニー/クリオネ)
新劇女優 市ノ下市子:那須凜(劇団青年座)
風松吉の本妻 風双葉/PIANO:小黒沙耶(サルメカンパニー)
印刷会社跡継ぎ 三岸三郎:阿岐之将一(ワタナベエンターテインメント)
コマーシャルガール 四村塩/BASS:井上百合子(演劇集団円)
テレビ演出家希望のAD 後藤五夜子:西村優子(サルメカンパニー)
テレビ局事務 虫子:投元ひかり
テレビ局受付 七重:遠藤真結子(サルメカンパニー)
エレベーターガール 八代:近藤陽子(劇団AUN/劇団晴天)
テレビ局衣裳部 櫛子:鈴木彩葉
脚本家 十倉十糸子:平佐喜子
アナウンサー 花巻/BASS:遠藤広太(サルメカンパニー)
劇団星屑の新人女優 百瀬桃子:松原もか(オールウェーブ・アソシエツ)
脚本家 八幡:丸山輝
テレビ局ディレクター 野上:柴田元
テレビ局局長 本町:松戸デイモン(MADカンパニー)
司会者/SAX:藤川航
メーキャップ係/DRUM:河野梨花
GUITAR:あいしゅん

舞台美術:阿部一郎
照明:鷲崎淳一郎(Lighting Union)
音響:坂口野花(TEO)
音響オペレーター:吉田拓哉
舞台監督:新井和幸(箱馬研究所)
振付・ステージング:宮河愛一郎
映像:宇野雷蔵(サルメカンパニー)
映像オペレーター:桒原唯那
音楽(劇中歌):小黒沙耶(サルメカンパニー)
衣裳:西村優子(サルメカンパニー)
小道具:遠藤広太(サルメカンパニー)
宣伝美術:かまだゆうや
宣伝写真:坂本彩美(サルメカンパニー)
イラスト・グッズデザイン:HATERUMOFUTO(サルメカンパニー)
ヘアメイク:三浦光絵
音楽監修:Tomoldei
記録映像:澤田悠世
演出助手:佐々木優樹
演出助手・スタンドイン:鷲見友希
制作:遠藤真結子(サルメカンパニー)
制作協力:クリオネ
当日運営:稲葉美穂・玉野紗江・阿南早紀・島村苑香

協力:藤井美穂、丸山由生立、松原つよし、東宝舞台株式会社 衣裳部(久保田俊一)、大野亮太、クリオネ、劇団青年座、ワタナベエンターテインメント、演劇集団円、劇団AUN、劇団晴天オールウェーブ・アソシエツ
助成:アーツカウンシル東京[東京芸術文化創造発信助成(単年助成)]芸術創造活動
共催:株式会社MADカンパニー
主催:サルメカンパニー

2025年8月7日〜8月13日 シアター風姿花伝

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