KAATキッズ・プログラム2025〈SPACのお芝居〉『鏡の中の鏡』@KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ
【2025/7/27 14:00〜15:00(途中休憩なし)】

30の短編からなる原作を、ギュギュッと60分の舞台作品に。こちらはKAATとは逆にかなり濃縮され、ある種「哲学的志向の舞台」と言える。
「何も考えずに気楽に脱力系で観る」というよりは、「わりと集中して見入らざるを得ない」タイプの作品で、(今回の企画趣旨の場合)そのあたりの好みも分かれるところかも。
いわば「夏目漱石の『夢十夜』のエンデ版」みたいな雰囲気もあるのだが、ひとつひとつのエピソードに分かりやすいストーリーや明確なオチが無いため、ともすると「難しかった」という印象にも。
あと、60分で原作の全てのエピソードを取り入れているわけではないので、「エピソードの取捨選択」「演出面を含んだ全体の構成」については、好みが分かれるかもしれない。
ただ、客入れからエピソード2つくらいまでの流れは、一般的な「子ども向き」とは少しかけ離れてはいるが、不気味で、神秘的で、とても良かった。(そのままラストまで突っ走るのは、なかなか難しいとは思うけど)
衣裳や舞台美術のビジュアル的には、SPAC作品で言うところの『サーカス物語』『グスコーブドリの伝記』『グリム童話』あたりの系譜。
美しいのだけど、タイトルにもある「鏡」をイメージさせるようなビジュアル(鏡面とかキラキラとか)や、鏡っぽい演出(鏡のように動きがシンクロするとか、合わせ鏡のように見える瞬間とか)があってもよかった気もする。(舞台装置や映像などにもっと予算があれば可能だったかも)
客入れ時に、舞台前方にひらがなの小道具がいっぱい置かれ、それで遊べる仕掛けになっていて、子どもたちが自分の名前を作ってみたり、何かの言葉を作ってみたりするなど、子どもたちが「言葉」というものにすごく敏感になるような導入をしていたのだが、その「ひらがなの小道具」がそのあと、作品にあまり活かされておらず、少しもったいない。(各エピソードのタイトルやテーマをひらがなの小道具で表してみるとか、どこかの場面で子どもたちにひらがなの小道具を舞台上に投げ入れてもらうとか、もう少し活かしても良かったかも)
エピソードとエピソードのつなぎが、意図的にシームレスになされていたように見えたが、シームレスになったことによって、かえってエピソードの繋ぎ目が分かりづらくなった面もあり、今回の場合はむしろエピソードごとに、演技スタイルや演出、ビジュアル面の色味などを、くっきりぱっきりと変化させても良かったかも。(それが段々混ざり合っていく…みたいな展開、とか)
あるいは、シームレスに繋ぐのであれば、もう少し「迷路感」「迷宮感」が感じられる見せ方でも良かったかも。(今回はどちらかというと、絵巻物的というか、左右に出たり引っ込んだりが多く、奥行き感が少なかったために「スムーズな展開」に見え、「迷い込んでる感」に欠けたかも)
出演者がもう少し多ければ違ったかもしれないが、4人だとどうしても前のエピソードと次のエピソードを兼ねる出演者が出てくるため、単純に「同じ役なのか違う役なのか」も少し分かりにくかったところもあった。
音楽も美しい仕上がりだったが、BGM感ではなく、もう少し際立つような使い方でも良かったか。
作品の仕上がり的には、(特に後半)ジャズとかブルースのような、弦楽器、トランペット、ハーモニカみたいな音色が、より似合いそうではあった。
『鏡の中の鏡』に関しては、セリフやビジュアルでの明確な説明が少ないと思うので、あえて「音声ガイド」を聞きながら観るのは、かなり「アリ」な気がしている。
KAATキッズ・プログラム2025
〈SPACのお芝居〉『鏡の中の鏡』
原作:ミヒャエル・エンデ「鏡のなかの鍵一迷宮一」
訳:田村都志夫
構成・演出:寺内亜矢子
大高浩一
榊原有美
杉山賢
舘野百代
音楽:森山冬子
美術デザイン:深沢襟
照明デザイン:木藤歩
衣裳デザイン:清千草
音響デザイン:和田匡史
舞台監督:小川哲郎
演出部:土屋克紀
美術製作:佐藤洋輔、森正吏
衣裳製作:池田佑菜、塚本かな、石川光輝、清千草
技術監督:村松厚志
制作:計見葵、北堀瑠香
アシスタントプロダクションマネージャー:雲田恵
プロダクションマネージャー:平井徹
広報:西原栄、三浦翔子
営業:大沢清、安田真知子
票券:小林良子
制作:本郷麻衣、佐藤梓
字幕タブレット制作:南部充央
音声ガイド制作:大内智美(SPAC)
社会連携ポータル課:中西享、小金井伸一、吉田舞雪
宣伝美術:ABEKINO DESIGN
彫刻・ドローイング:北浦和也
ビジュアル撮影:中村寛史
劇場広報アートディレクション:吉岡秀典
チーフプロデューサー:笛木園子、伊藤文一
事業部長:堀内真人
芸術監督:長塚圭史
企画制作:KAAT神奈川芸術劇場、SPAC-静岡県舞台芸術センター
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)、独立行政法人日本芸術文化振興会
2025年7月21日〜27日 KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ
主催:KAAT神奈川芸術劇場
後援:神奈川県教育委員会、横浜市教育委員会
2025年8月2日・3日 グランシップ中ホール・大地
主催:SPAC-静岡県舞台芸術センター
共催:公益財団法人静岡県文化財団
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