iaku『はぐらかしたり、もてなしたり』@シアタートラム
【2025/7/4 19:00〜20:45(途中休憩なし)】

横山拓也氏による作・演出のiakuの新作公演は、狭い人間関係での様々な恋愛模様が描かれ、チラシで「ラブコメディー」と銘打っているのだが、恋愛モノと言うよりは、「ひと癖ある人たちしか登場しない、恋愛要素も含んだ人間関係の悲喜こもごも」と言ったところ。
ある意味ではだらしなくもあり、ある意味では煮え切らない、ダメダメなんだけど憎めない、そんな人たちばかり。
鈴木勇(瓜生和成)と鈴木鈴香(竹田モモコ)の、妻の家出による別居状態な夫婦関係を軸に、一人娘・愛(高橋沙良)と梨伊雅[りいが](井上拓哉)による若い二人の恋の始まり、勇の元妻・晴野充(小林さやか)とその部下・蔵田(近藤フク)による年の差恋愛、鈴香の友人・真美(異儀田夏葉)と真美の死んだ友人・智子の夫の浩輔(富川一人)のこれから進展しそうな関係、などが同時進行的に描かれていく。
ここに、鈴香の2年間家出していた具体的な真相(元上司の介護・看取りのためだったのだが、周りは勝手に元上司を男性と思い込んでいたが実は女性だった、とか)や、妻が家出中に勇と充が復縁して不倫関係にあったとか、生前の智子が蔵田と浮気していた、などの新事実も判明していき(観客にのみ明かされるものと、登場人物たちにも知らされるものとに分かれる)、かなり複雑な関係となっていく。
この複雑極まりない関係を、面白味を交えて、しかも分かりやすく物語を紡いでいける横山氏は、やはりさすがである。客席も、後半になるに従って笑いが起き、前のめり気味で観ている客も多かった印象。(観客はまさしく老若男女という感じで、客層の幅広さもiakuの特徴かも)
ただ、(iakuにしては)わりと性を感じさせる生々しい描写がいくつかあり、その意味では大人向けかも。
僕がiakuに「良いなあ」と思っている部分は、「少しだけ突飛な設定なのに、妙に現実に起こりそうな説得力がある感じ」や「極めて演劇的な演出手法で演技もリアリズムとはまた少し違うのに、とても現実味が感じられるところ」なのだが、ただ今回は、そのバランス感覚が少しだけ不均衡に感じられてしまった。
ちょっとあざと過ぎた感じもあり、「物語」としてのフィクション性・ファンタジー性が勝ってしまったかも。
たとえば、梨伊雅が本を読んでいる設定なのだが、そこで語られる内容は舞台の進行(誰かの物語)になっていて、要は、梨伊雅が物語を外から見ているストーリーテラー的な役割にも見えるのに、一方で物語そのものにも登場人物として関わっているので、「え?じゃあ彼が読んでる本は何なの?」と思ってしまったり。
あと、僕は、周りの観客ほどには笑えなかったのだが、それはきっと、登場人物たちがひどく気の毒に見えたというか、笑って済ますのが憚られるというか、そんな感覚だったからかもしれない。(勇が元妻と(最終的には再び別れたけど)寄りを戻してたこととか鈴香は知らないままだし…)
とは言え、出演者はそれぞれにキャラクターの具現化が上手く、座組的にも良い組み合わせだと思った。
真美役の異儀田夏葉さんが醸し出す、気風の良さと、セリフ感皆無の嘘のないセリフは相変わらず良かったし。
あまりに独特な人間性である蔵田役の近藤フクさんも、多くの観客の印象に残ったと思う。あの間の取り方と、人を馬鹿にしたような言い回し(褒め言葉)は素晴らしい。
浩輔役の富川一人さんの、欲望を理性で抑えているようなキャラや、周囲の人たちからの振り回され具合も素敵。(今回わりと共感できた役は浩輔かもしれない)
梨伊雅役の井上拓哉さんの、無垢で真っ直ぐな、眩しい感じも良かった。(どこかで見たことがあると思ったら、『虎に翼』の寅子の同僚裁判官!)
また、セリフ中でしか出てこない、鈴香が看取った元上司と、浩輔の死別した妻・智子、このふたりの存在感が結構大きく、登場しないけど印象に残る。
存在感と言えば、「オムライス」「巻き寿司」「コンビニ限定スイーツ」もw(観てないと、何のことだか全く分からないだろうけど)
舞台装置はスキップフロアを組み合わせたような、おしゃれな抽象セット。それぞれの場での使い方や設定が、巧みで見事。階段が多いので、出演者の運動量は地味に多そうではある。
iaku
『はぐらかしたり、もてなしたり』
作・演出 横山拓也
鈴木勇 瓜生和成
鈴木鈴香 竹田モモコ
鈴木愛 高橋紗良
真美 異儀田夏葉
浩輔 富川一人
梨伊雅 井上拓哉
蔵田 近藤フク
晴野充(蔵田の上司) 小林さやか
声の出演 伊藤えりこ
舞台美術 柴田隆弘
照明 葛西健一
音楽 山根美和子
音響 星野大輔
衣裳 中西瑞美
演出助手 須藤黄英
ドラマトゥルク 上田一軒
演出部 伊藤えりこ
舞台監督 青野守浩
舞台美術助手 白坂奈緒子
音響オペ 堤ゆりえ
照明オペ 久津美太地
宣伝 吉田プロモーション
宣伝美術 下元浩人(EIGHTY ONE)
宣伝写真 井手勇貴
宣伝ヘアメイク 田沢麻利子、高橋のりこ
舞台写真 木村洋一
映像収録 堀川高志(kutowans studio)
鑑賞サポート 舞台ナビLAMP(音声ガイド 藤井佳代子/バリアフリー字幕作成 浅井由美子)
制作協力 吉乃ルナ、三國谷花、中川拓也、市川羽菜、米田マナ海
アソシエイトプロデューサー 渡辺信也(TBSテレビ)
ラインプロデューサー 笠原希
協力 エンパシィ、大沢事務所、オフィスPSC、小松台東、トローチ、ニベル、劇団はえぎわ、ばぶれるりぐる、ファザーズコーポレーション、ペンギンプルペイルパイルズ、吉住モータース、ワタナベエンターテインメント
提携 公益財団法人せたがや文化財団 世田谷パブリックシアター
後援 世田谷区
主催 一般社団法人iaku
助成 文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術等総合支援事業(公演創造活動))、独立行政法人日本芸術文化振興会
2025年6月27日〜7月6日 シアタートラム
2025年7月12日・13日 吹田市文化会館メイシアター 中ホール
2025年7月20日 四日市市文化会館 第2ホール
2025年8月2日・3日 穂の国とよはし芸術劇場PLAT アートスペース
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