名取事務所『燃える花嫁』@岡山芸術創造劇場ハレノワ 小劇場
【2025/6/24 19:00〜21:10(途中休憩なし)】

川口市に生きるクルド人の現実に着想を得た、「そう遠くない未来の日本の、移民問題」を描いた作品。(ちなみに、「日本に着いたらワラビのマックに行け」という合言葉があるらしい)
「テロ」「難民と移民」「共生」「差別」「出自とアイデンティティ」などが盛り込まれた骨太な社会派作品で、外国人労働者としてやって来た人たちだけでなく、子世代の「厳密には日本国籍ではないが、もはや日本しか知らない世代の、でも外国人扱いされてしまうような人たち」も描かれている。このあたり、戯曲では直接的に描かれてはいないが、いわゆる「在日」と呼ばれる人たちにも通じる部分かと。
また、移民側の視点もかなり盛り込まれ、特に「なぜ日本に来たのか」の理由が切実で、彼らが母国について語る場面によって、作品の深みがグッと増した気がした。
現実でも、「日本に憧れを抱いて母国から逃れるようにやって来て、でも実際はそんなに甘くなくて、でも国に帰ることは考えられなくて、行き場を失い、しがみつくように日本で暮らしている」…そんな人たちもきっと多いのだろう。
重苦しくなりすぎないよう、ポップな演出や、コミカルなやり取りも挟み込みつつ、でもガツンとやるところはガツンと斬り込む、そんな作品だった。
観客に宿題を色々と持ち帰らせるような作品でもあり、「移民国家」となるであろう日本に向き合う「覚悟」について、そして、「彼らとどう共生していくのが良いのか」、「彼らと我々と何が同じで何が違うのか」、そんなことも考えさせられてしまう作品でもあった。
ただ、主人公でもある、移民のユウスケ(みのすけ)が捕らえられたあたりからの戯曲の書き込みが少し飛び飛びの印象で(結果的に、さらに10年後まで飛ぶ)、ラスト近くで、母国でのテロで死んでしまったマキ(森尾舞)が魂としてアカリ(平体まひろ)の元へ戻って来たファンタジー設定とか、アカリの叔母でありユウスケの姉であるカナエ(鬼頭典子)が派手な装いになってるのは民族衣装なのかとか、いい加減だったあのノリオ(山下瑛司)がどうやってミスドの店長に就いたのかとか、分かりにくい所もあり、そこは想像で補うにしても、物語が端折られてしまっているようにも感じられて少しもったいなかったか。
一方で、タイトルの「燃える花嫁」の回収の仕方が絶妙で、「何気ないプリクラの場面での花嫁姿が、そこに繋がってくるのかー」と感心。
出演者のなかでは、テロリストの肉体派な側面を持ちつつも、周囲に強要して仲間に引き入れるようなことはせず、慕われる姉さん的存在でありながら同時に孤高の存在でもあるマキを見事に体現していた、森尾舞さんが文句なく良い。
そして、マキとは違う方向性での姉さん的存在の、カナエ役の鬼頭典子さんも良すぎた。さすが文学座。
なかでも、マキとカナエが母国のことを語り合う場面は、その語り口だけで、2人の幼かった頃の様子がありありと浮かんでくる良い場面。(同時に切ない場面でもあるが)
なお、本公演の企画発案者は、岡山芸術創造劇場ハレノワのプロデューサー・渡辺弘氏らしく、それを名取事務所の名取敏行氏がプロデュースする形で、脚本をピンク地底人3号氏に、演出を生田みゆき氏に依頼したようだ。
その意味では、岡山公演こそがメインの公演会場とも言える。(ということを当日配布のパンフレットで知ったのだが)
来年の10月には、名取事務所×横山拓也で「移民」シリーズの第二弾が上演されるもよう。見逃せない。
名取事務所公演
『燃える花嫁』
作 ピンク地底人3号
演出 生田みゆき
出演
キリノアカリ(ユウスケの娘) 平体まひろ
キリノユウスケ(アカリの父/キリノ工業社長) みのすけ
キリノカナエ(コウスケの姉/アカリの叔母) 鬼頭典子
近藤健人(拓也の父/近藤工業社員) 清水明彦
近藤拓也(健人の息子/従業員) 西山聖了
筒井昌美(弁護士) 松本紀保
サカモトノリオ(従業員) 山下瑛司
ミドリカワマキ(トラック運転手) 森尾舞
美術 杉浦充
照明 桜井真澄
照明操作 廣田恵理
音響 藤平美保子
音響操作 北野さおり
衣裳 樋口藍
擬闘 栗原直樹
演出助手 岩佐美紀
舞台監督 八木澤賢
宣伝デザイン 柳沼博雅
制作担当 栗原暢隆、佐藤結、鍋嶋大輔
企画 渡辺弘(岡山芸術創造劇場ハレノワ劇場長 兼 プロデューサー)
プロデューサー 名取敏行
製作 名取事務所
協力 川口茂人、松本光史、今井優香里、(有)東京舞台企画、NPO舞台21、NPOグローバルプランナーズ、オフィスK2、有限会社マッシュ、株式会社シアター・ナインス、文学座、ももちの世界、NPO文化政策ネットワーク、NPO法人SSG、東京舞台照明、山北舞台音響、スタジオ・ポラーノ、株式会社ゴート、大澤広告事務所、(株)ワイズ
2025年6⽉11⽇〜15⽇ 吉祥寺シアター【主催 有限会社名取事務所】
2025年6⽉20⽇・21⽇ ロームシアター京都ノースホール【主催 ロームシアター京都(公益財団法⼈京都市⾳楽芸術⽂化振興財団)、京都市】
2025年6⽉24⽇・25⽇ 岡⼭芸術創造劇場ハレノワ⼩劇場【主催 岡⼭芸術創造劇場ハレノワ、(公財)岡⼭⽂化芸術創造】
2025年6⽉28⽇・29⽇ J:COM北九州芸術劇場⼩劇場【主催 (公財)北九州市芸術⽂化振興財団】
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