2024/2025シーズン シリーズ「光景―ここから先へと―」Vol.2『ザ・ヒューマンズ―人間たち』@新国立劇場 小劇場
【2025/6/18 14:00〜16:00(途中休憩なし)】

スティーヴン・キャラムが描く、ある移民系アメリカ人一家の、感謝祭での団欒の物語を、桑原裕子氏の演出で。
観劇回は地元高校生の演劇鑑賞回を兼ねていて、客席の大半を高校生が占めていたが、集中して、細かいところまで観ている生徒が多かった印象。
ニューヨーク・マンハッタンのチャイナタウンにある、老朽化したメゾネット風アパートが舞台で、上階と下階はらせん階段(もしくは外廊下にあるエレベーター)で繋がる。上階が地上一階で、下階は地下階という設定。
上階の窓には鉄格子があり、日当たりはすこぶる悪いのだが、その分、広さは抜群で、上階が玄関ホールとバス・トイレ、下階がリビング・ダイニングとキッチン(と奥まって見えない寝室?)という間取り。
作品に散りばめられたモチーフとしては、「アイルランド系移民(感謝祭の祝い方もアイルランド風にこだわる)」、「認知症」「就職難」「うつ病」「病気の悪化による人工肛門」「同性愛」「過食症」「不眠症」「不倫問題」「隣人の騒音問題」「9.11」「差別問題」「難民問題」などなど。
「それぞれがそれぞれに問題を抱えている」ということはとてもよく分かるのだが、解決策の糸口は見えてこないまま、不穏な空気をまとって終幕を迎える。
ある意味では、(演技の質感的には普通のリアリズム風ではあるが)教訓や感動の演出のないドキュメンタリーを見ているようでもあり、テーマ的に刺さるところが無い観客の場合、「演技面における評価」以外では作品を語りにくい気もする。
家族だけど、大半が、「家族に対して愛情を持っている反面で、家族に対して鬱陶しさも感じている」風にも見え、それぞれが互いの何気ない言動に対して、勝手に興奮したり、勝手に怒ったり、勝手に盛り上がったりと、忙しい家族w
なので、「この人たち、どうやってこれまで暮らしてきたんだろう」「なんで、わざわざ家族団欒をやろうとしたりするのか」という疑問も。
仲良かった家族が感謝祭を機にほころび始めるというよりは、もともと少しだけギクシャクしてた家族が感謝祭を機にさらにヒートアップした印象なのだが、でも決裂して終わるわけではなく、何となく「ま、いっか」的にウヤムヤなまま終わるので、「結局、何だったんだ?」感も残り…
アメリカにおける社会構造やら様々な差別問題などが散りばめられていて、そのあたりが実感を伴って理解できないと、日本に住む者にはあまりピンと来ない戯曲なのかもしれない。
全編を通して、平田オリザばりの同時多発会話が繰り広げられる瞬間が多く、しかも、相手が言い終わらないうちに喋り始める人が多いので、「対話する」というよりは「主張する」という感じで、「人の話を聞かない家族だなー」という印象w(「悲劇喜劇」に掲載された戯曲によると、原作がそういう風に書かれているようだ)
のっぺり演出されるよりは、忙しなくサクサク進むほうが観やすくて良かったとは思うが、余韻を感じられる演出が施される瞬間がもう少しあっても良かったのかも。
長女のエイミーを演じた、「南海キャンディーズ」のしずちゃんこと山崎静代さんが好演。体型とか声質が独特ではあるのだが、それが特異キャラになることなく、上手く役柄の個性として昇華されていて良かった。(エイミーという役柄自体が、ちょっと特異キャラの設定ではあるけど)
電話の受け答えの演技も、おそらく一人芝居でやっていると思うのだが、反応とか、自分のセリフの遮られ方とか、めちゃ自然で、すごく勘が良い人なんだと思う。
2024/2025シーズン
シリーズ「光景―ここから先へと―」Vol.2
『ザ・ヒューマンズ―人間たち』
作 スティーヴン・キャラム
翻訳 広田敦郎
演出 桑原裕子
エリック・ブレイク 平田満
ディアドラ・ブレイク 増子倭文江
エイミー・ブレイク 山崎静代
ブリジッド・ブレイク 青山美郷
「モモ」・ブレイク 稲川実代子
リチャード・サード 細川岳
年配の中国人女性 きし朱紗
美術 田中敏恵
照明 佐藤啓
音響 藤田赤目
音楽 久米大作
衣裳 半田悦子
ヘアメイク 高村マドカ
演出助手 和田沙緒理
舞台監督 川除学
演出部 满安孝一、小山内ひかり、山中麻耶、平石尚子
プロンプ きし朱紗
大道具 東宝舞台(高畑七海)
小道具 高津装飾美術(西村太志)
電飾 イルミカ東京(堀加奈)
衣裳 松竹衣裳(清水崇子、柿沼薫、井上裕子)
履物 アーティス(中尾舞)
観劇サポート イヤホンガイド、篠原初実、彩木香里(音声ガイド)、文化庁委託事業「令和7年度障害者等による文化芸術活動推進事業」
舞台・照明・音響操作 新国立劇場技術部、シアターコミュニケーションシステムズ、アート・ステージライティング・グループ、フリックプロ、鈴木芳幸(舞台)、吉田信夫(舞台)、鈴木かおり(照明)、仲田竜太(音響)、 NAKADA Ryuta (Sound)、押井敏明(大道具)
制作助手 坂井加代子
制作 七字紗衣
プロデューサー 伊澤雅子
芸術監督 小川絵梨子
主催 新国立劇場
2025年6月12日〜29日 新国立劇場 小劇場
2025年7月5日〜6日 穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
2025年7月19日 茨木市文化・子育て複合施設 おにクルゴウダホール(大ホール)
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