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演劇界に生きる男の観劇記録

SPAC-静岡県舞台芸術センターで俳優やってます!

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サルメカンパニー&クリオネプロデュース『12人のヒトラーの側近』@吉祥寺シアター
【2025/4/15 12:00〜14:30(途中7分間の休憩あり)】

第一次世界大戦後、ヒトラーがどのようにして誕生し、どのように滅んでいったのかを、1923年(第一部)、1934年(第二部)、1945年(第三部)と、3つの時代を抜き出して、ヒトラーの周囲の人物たちを通して描いた大作。ヒトラーに傾倒した12人の側近たち(と、ヒトラーの愛人とゲッベルスの妻)が出てくる。
テーマがテーマだけに、作品内容に関して何かを述べるには、まだまだ自分の中で咀嚼する時間が必要かも。「反戦」とか「ユダヤ人虐殺に対する考察」みたいな側面も、もちろんあるにはあるのだが、もう少し広い視野で描かれた作品、とも言えるだろう。

作・演出は、ゲッベルス役でも出演している石川湖太朗氏。音楽は、ドラムとピアノとサックスからなる生演奏(出演俳優も演奏している)。途中で7分間の休憩が入るものの、その間も演奏は続き、俳優たちによる舞台転換が行われる。
ヒトラーはトルソーで表され、舞台上に象徴的に置かれる。(第三部では、地下室に居るということで、観客からは見えなくなる)

予備知識が無いと、観始めてしばらくは情報を整理するのに追われ、エモーショナルな(吐き出し系の)セリフの俳優が多いこともあり、語られている内容を理解するほうへの集中にかなり引っ張られるのだが、ゲーリング役の近藤隼さんが出てくるあたりから芝居全体の雰囲気が少しずつ変わり、ゲッベルス役の石川湖太朗さんが出てくる頃には、自ずと舞台に引き込まれていった印象。

ゲーリング役の近藤さんは、悪魔的な役回りのポジションで、笑顔の穏やかさの裏で、他人の弱みを武器に操っていく。最初に出てきた時から、「場を掌握する空気」が醸し出されていて、ヒトラーの後継者と呼ばれた人物を好演。
セリフのプランが巧みで、「そのセリフから、どうやったらその言い方が思いつくんだろう」というセリフが次々と繰り出される。「人たらし的」というか、いたずらっ子っぽい感じや愛嬌を見せるような朗らかさなのに、やってることは冷酷な感じ。
特に、ゲッベルスとヒムラー(遠藤広太)を相手に、長いセリフを喋る場面が、とぼけた感じで嘘をつき、言葉巧みに相手の隙を突き、秀逸すぎた。

ゲッベルス役の石川さんは、もう「目がイッちゃってる」感じで、「敵に回すと絶対怖い」感じを体現。役に対する想い入れの強さも相当あるからこそだと思うのだが、でも、その想いが空回りすることなく、きちんと自分の中に落とし込んであって、自身の感受性や五感を、ゲッベルスとしての正義に振り切っている。イタコ的とは違う感じの「憑依型」。セリフが吐き出し系になったとしても、ちゃんと語れるのも良い。

あと、音楽を担当してピアノも弾き、ゲッベルスの妻を演じた小黒沙耶さんが、役としての出番は少ないながらも、とても良かった。
ソロでピアノを弾きながらセリフを訥々と語る場面は何気にスゴイことやってるし、子どもたちを毒殺したあとでゲッベルスとトランプする場面の、放心状態で焦点が合っていないような、でも夫に向けて静かに語るセリフがめちゃくちゃ伝わってくるものがあって、良かった。

そのほかの俳優たちも、役をちゃんと生きている感覚があって、セリフや演技で多少惜しい部分があったとしても、それすらも、「役柄の個性」になっている印象で、舞台の熱量やクオリティは高かった。
舞台空間、道具や演奏エリアの配置、舞台奥の電動シャッターの使い方なども巧みで、素直に「ああ、巧いな」と思わせる演出。次回作にも期待が高まる。


サルメカンパニー&クリオネブロデュース
『12人のヒトラーの側近』
作・演出 石川湖太朗

ルドルフ・ヘス 國島直希
アルベルト・シュペーア 正木郁
ヨーゼフ・ゲッベルス 石川湖太朗
オットー・ギュンシェ 松村優
ヘルマン・ゲーリング 近藤隼
ヴィルヘルム・モーンケ 浅井浩介
ヘルマン・フェーゲライン 大西遵
マルティン・ボルマン 柴田元
エルンスト・レーム 小島久人
ハインリヒ・ヒムラー 遠藤広太
マクダ・ゲッベルス 小黒沙耶
エヴァ・ブラウン(B) 西村優子
エヴァ・ブラウン(A) 遠藤真結子
ディートリッヒ・エッカート 神農直隆
演奏 藤川航(sax)、Tomo Idei (drum)

音楽 小黑沙耶
美術 阿部一郎
照明 鷲崎淳一郎(Lighting Union)
音響 田中亮大(Paddy Field)
映像 宇野雷蔵
振付・ステージング 宮河愛一郎
時代考証 今井由希 (Costume Classics)
衣裳 山田怜美
衣裳協力 摩耶デザインオフィス
衣裳進行 西村優子
ヘアメイク 三浦光絵
小道具 遠藤広太、東宝舞台小道具
演出助手 詠良カノン、鷲見友希
舞台監督 新井和幸(箱馬研究所)
宣伝美術 かまだゆうや
宣伝撮影 藤川直矢
映像収録 西川昌吾(TWO-FACE)
WEB 牛若実(UC-WORKER)
票券 Mitt
キャスティング協力 高野重美(クィーンビー)
宣伝協力 吉田プロモーション
パンフレット編集・文 鈴木哲也(オフィス・マキノ)
制作 大森晴香、遠藤真結子
プロデューサー 渡辺順子

協力 太田プロダクション、ユークリッド・エンターテイメント、エイベックス・マネジメント・エージェンシー、UAM、ハイエンド、藤井美穂、ベーター・ゲスナー

企画協力 サルメカンパニー
主催・企画・製作 クリオネ

2025年4月12日〜4月15日 吉祥寺シアター

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