観るのも演るのも日々是好日!

演劇界に生きる男の観劇記録

SPAC-静岡県舞台芸術センターで俳優やってます!

倉敷幼稚園→粒江幼稚園→粒江小学校→倉敷南中学校→総社南高等学校→大阪教育大学

関心あるモノ・コト = 演劇/LEGO/昭和歌謡からJ-POP/字を書くこと/フィギュアスケート鑑賞/温浴施設めぐり/乗り鉄/旅行/睡眠

シス・カンパニー『やなぎにツバメは』@紀伊國屋ホール
【2025/3/25 14:00〜15:40(途中休憩なし)】

上演時間が1時間40分で終わるのが「ひたすらに惜しい」と思わせる作品と出演者(という取り合わせ)。あと1時間くらい延長戦を希望w

出演者6名(大竹しのぶ、木野花、林遣都、松岡茉優、浅野和之、段田安則)はいずれも、ギリシャ悲劇やシェイクスビア作品でも主演を張れるような存在感と演技力だが、今回はごく普通の、現代の庶民を演じるという面白さと贅沢さ。
横山拓也氏による当て書きと思われる書き下ろし戯曲は、近年の彼の作品のなかでも群を抜いて冴えている。寺十吾氏の演出も、戯曲のリズム感や登場人物たちの凸凹感を損なうことなく、良い。

老老介護、リタイア後の新たな人生、同居問題、子どもたちの結婚、シニア世代の友情と恋…などが散りばめられた戯曲で、基本的にはホームコメディな側面が強い。向田邦子的でもあり、岸田國士的でもあり。
ただし、エンディングのまとめられ方は、誰に感情移入して観ているかによっては「ホラー」にもなり得る結末。

現在60代の、美栄子(大竹しのぶ)、洋輝(ひろき/段田安則)、佑美(木野花)の3人は、約20年前、美栄子の母ツバメが経営する「カラオケスナックつばめ」で知り合った。当時、美栄子は日中は会社員として働きながら、夜、店を手伝わされ、店の常連で年の近い洋輝と佑美と仲良くなった。3人にとって店は特別な場所であり、美栄子が夫の賢吾(浅野和之)と離婚話になった時や、洋輝が妻を病で亡くした時や、佑美が仕事で悩んでいた時など、いつもこのスナックで励まし合っていた仲。
スナックを再現したようにリフォームされた、美栄子の自宅リビングを舞台に、美栄子の母ツバメの葬儀の夜から物語は始まる。
介護から解放された美栄子や、自身の老後が心配な洋輝や佑美、洋輝の息子の修斗(林遣都)と美栄子の娘の花恋(かれん/松岡茉優)の結婚話などが絡んでくる。話の成り行きで、美枝子たちシニア世代の親友3人でのグループリビングの話などが出たり、賢吾と美栄子の離婚は「賢吾と佑美が恋愛関係にある、と美栄子が疑っていたこと」なども明らかになっていく。
ラスト、洋輝を心の拠り所としていた美栄子は、ふたりの子どもたちが結婚して同居することを機に、洋輝も一緒に同居することを期待するのだが、実は、洋輝は佑美との再婚話が進んでおり、胸に秘めていた美栄子の淡い恋心は儚く散ってしまう。また、花恋にとっても、母の失恋を目の当たりにするだけでなく、毛嫌いしている佑美が姑という立場になることが明らかになる。

確かに「どうしようもない人たちの微笑ましいホームドラマ」ではあるのだが、一方で、美栄子の「誰にもぶつけることが出来ないやり切れなさ」や、「母の想いが娘として痛いほど分かるのにどうすることも出来ない」花恋を思うと、モヤモヤした感情も残り、「誰かの幸せは、誰かの不幸の上に成り立っている」そんなことを感じずにはいられない。

ちなみに、「やなぎにツバメ」は、劇中で大きな意味を持つ『胸の振子』という懐メロ歌謡の歌詞であり、「絵になるもの」を指すことわざでもあり、この作品全体を表す、言い得て妙な言葉。

大竹さん、横山戯曲だといつもの大竹節があまり目立たずいい感じ。段田さん、浅野さん、木野さんも、さすがの上手さ。林さんと松岡さんの子世代カッブルも、子世代独特のテンポ感や漫才風なやり取りがハマり、このふたりが演じる必然性が感じられる域に達している。
とにかく、6人が見事にハマり、いろんな現代会話劇を自然体で演じている姿をもっと観てみたくなる、そんな印象。(まあ、テレビドラマもそつなくこなす皆さんなので、当然と言えば当然なのだけどw)

一点。舞台装置で、リビング奥の、仏壇のある和室が、奥行きが座布団1枚分しかなくて異様に狭い状態なのは、さすがにちょっと不自然で気になってしょうがなかったけどw


シス・カンパニー公演
『やなぎにツバメは』
作 横山拓也
演出 寺十吾

柳下美栄子 大竹しのぶ
仁藤佑美 木野花
浜坂修斗 林遣都
柳下花恋 松岡茉優
鳥野賢吾 浅野和之
浜坂洋輝 段田安則

美術 平山正太郎
照明 日下靖順
衣装 前田文子
音楽 坂本弘道
音響 岩野直人
ヘアメイク 佐藤裕子
舞台監督 瀧原寿子
プロデューサー 北村明子

演出助手 山﨑総司
照明操作 大内陽介
音響操作 松宮辰太郎
現場ヘアメイク 根布谷恵子
演出部 正岡啓明、久保勲生、三木やよい、櫻井典子
制作【進行】 土井さや佳、市川美紀、鈴木瑛恵、井上果穂
【票券】 安田千秋、笠間美穂
【宣伝】 西村聖子
【WEB】 垣ヶ原将
【アシスタントプロデューサー】 吉澤尚子

大道具制作 ㈱シー・コム(伊藤清次)
小道具 高津装飾美術㈱(西村太志)
電飾 ㈱コマデン(吉田有希、杉山克典)
衣装制作 松竹衣裳㈱(成田有加、柿沼薰、北條祐介)
運搬 ㈱マイド
協力 JOYSOUND、㈱センターラインアソシエイツ、㈱アート・ステージライティング・グループ、㈱ステージオフィス、スタジオAD、アデランス、Ν.Ε.Τ. ON、㈱ストロボライツ、㈱movel、渡辺みのり、都立大NOAHスタジオ(稽古場)
マネージメント協力 ㈱ニベル、㈲ザズウ、㈲有エスター、㈱吉住モータース、㈱スターダストプロモーション、㈱ヒラタフィルム

宣伝美術 平田好
宣伝写真・パンフレット撮影 加藤孝
舞台写真撮影 宮川舞子
宣伝写真・パンフレットヘアメイク 新井克英(e.a.t…)
宣伝写真ヘアメイク 藤原羊二(UM)

提携 紀伊國屋書店【東京公演】
運営協力 ㈱サンライズプロモーション大阪【大阪公演】
企画・製作 シス・カンパニー

2025年3月7日〜30日 紀伊國屋ホール
2025年4月3日〜6日 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ

Posted in , , , ,

コメントを残す