春野家族劇場 劇団限界集落 音楽劇『城山小僧』@浜松市春野文化センター
【2025/2/24 14:00〜15:45(途中10分間の休憩あり)】

↓こちらで上演時のライブ配信映像のアーカイブ視聴可能
https://www.youtube.com/live/M2q7FV20uZ4?si=sqQitNk3dWeFnRr6
出演者25名(うち、小中学生が半分ほど)の新作は、戦前から戦後を生きた一人の女性「なつ」の半生を軸にした朝ドラ的なストーリーに、宮沢賢治の作品と、地域に伝わる「城山小僧」の言い伝えが絡んでくる作品。
高齢者の多い客層にフィットした内容でもあり、大所帯となった劇団員たちの見せ場もそれぞれにあり、よく工夫された大作と言える。ラストシーンで涙ぐむ観客も周囲に多く見られた。
前半のクライマックスで「星めぐりの歌」が歌われる中、あらかじめ配られていたペンライトを(会場係の合図で)振り出す客席の光景は、さながらアイドルのコンサートのようで、春野という場所とその光景の、美しいミスマッチにグッとくる。
今回は歌う場面は少なめで、芝居や場面転換で見せていく構成。さらに、セリフを極力排除し、言葉に頼らない表現を模索する場面も挿入するなど、劇団としての挑戦も感じられた。
公演を重ねるごとに、出演者や演出が、ステップアップしていることも分かる。無料公演だったが、いくらかチケット代を取っても(あるいはカンパ制にしても)遜色ないレベルの舞台ではある。
欲を言えば、(脚本上での)登場人物の使い方というか、描かれ方がもったいない部分がいくつかあった。
「主人公なつの幼なじみである勲が、後半まったく物語に絡まない」とか、「なつの嫁入り後、なつの家族がほぼ登場してこない」など、メインの数人を除いて、その他の登場人物の主な役割が、「その時その時の、なつの状況や心情を説明するためとしての存在」になってしまっていて、もう少し、周囲の人たちの生活というか、それぞれがちゃんと生きている姿も描いた、たとえばワイルダーの『わが町』のような「群像劇」になっていても良かったかな。
勲とか、なつのきょうだいとかは、後半でももう少し描いて、さらに魅力的な人物造形にしたり、物語にもっと奥行きを生み出したり、そういう可能性もあっただろう。
そして、「周囲の人たちの描き込みが少ない」場合、当然ながら、「一言二言のセリフでキャラクターやシチュエーションを見せないといけない登場人物」が結構出てくることになる。
そうなると、「セリフ以外の部分での見せ方(演じ方)」がかなり重要になってくるのだが、それはやはりプロでもなかなか難しいわけで、劇団員の彼らにはちょっと荷が重すぎた気もする。
現状、観客がストーリーを追うことには支障ないのだけど、なつとその人物の関係性とか、なつが置かれている状況を浮かび上がらせる、というところまでには残念ながら至らず…
それから、前半の書き方の丁寧さに比べると、後半がやや駆け足気味にも感じられ、たとえば、離縁されたあとのなつの孤独や、なつが城山小僧と出会ってから別れるまでなどは、もう少し細かく描かれていても良かったのでは、と思ったり。
特に後半は、「総集編感」や「ダイジェスト感」が少しあって、しかし本来ならば、もっとじっくり腰を据えて描き切るべきタイプの題材だったようにも思う。(あるいは、ややテンポアップする場面や、逆に時間が引き延ばされたようにじっくりと見せる場面など、もう少し場面ごとの演出に緩急やダイナミズムを付けるか)
あと、おそらく、小屋入りして、明かり付きで稽古できる時間も限られていただろうから、仕方がない面もあるのだが、照明のオペレーションの呼吸が、演じている俳優たちの呼吸と少し合っていないように感じられたのがもったいなく…
場面の終わりや始まりと、照明との関係が、ややギクシャクしていた印象。退場していく人たちの「できればあまり見せたくない動き」が照らし出されてしまったり、明かりの切り替わりを待ってしまったがための無言時間が生まれてしまったり。
使われている音楽の大半は、今回も、舞台下手に置かれたピアノの生演奏だったが、今回の題材的には、ピアノ以外の(たとえばパーカッションなどのような)音色があると、物語にさらに奥行きが生まれたような気もする。
それでも、集まれる時間も限られる状態の中、兎にも角にも、これだけの大作をやり切ろうとする、その心意気は、力強く、美しい。その気概だけでも、充分、称賛に値する舞台ではある。
浜松市生涯学習機会提供事業 春野家族劇場
劇団限界集落
音楽劇『城山小僧』
脚本・演出 松井茉未
おばあちゃん 入手健夫
なつ 柳澤知子
勲(なつの幼馴染み)/孝一(みどりの父) 中村勇貴
みどり 柳澤百合香
清(なつの想い人) 松下倫子
晶子(なつの親友) 中村彩話
きく(なつの母) 山下尚美
重吉(なつの父) 西田公城
えい(なつの妹) 中林弥栄
茂(なつの弟)/実(宿屋の息子) 岩本栞
妙子(なつの妹) 岩本楓
はる(なつの妹) 中村華野
ひー坊(なつの弟) 高津とよ
静子(なつの妹) 松井萌々加
さと(宿屋のおかみさん) 片瀬博之
孫作(宿屋の主人) 清水こうめ
かよ(茂の妻)/よし江(哲太の妻) 宮原くるみ
哲太 高津菜穂子
昭三 進藤博行
たまえ 柳澤歩美
マー坊 池谷あかり
さんべさ 高津やちほ
星たち/山の精 松井柚菜
城山小僧 中村心音
星たち 西田大知
振付・構成 大前光市
楽曲提供 鈴木のぞみ
ピアノ演奏 岡本千恵
音響/効果 チャンジ、田代起也
照明 三室勇樹、中谷友亮
衣装 松下倫子、柳澤知子
舞台セット・舞台美術 高津菜穂子、進藤博行、中村勇貴、田代起也
制作 劇団限界集落
主催 浜松市
2025年2月24日 春野文化センター
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