テラッピン・パペット・シアター×愛知県芸術劇場 国際共同制作『ゴールドフィッシュ〜金魚と海とわたしたち〜』@愛知県芸術劇場小ホール
【2025/2/11 11:00〜12:00(途中休憩なし)】

オーストラリア・タスマニアの人形劇団と愛知県芸術劇場の共同制作作品で、テラッピン・パペット・シアターの芸術監督サム・ラウトレッジ氏と、第七劇場の鳴海康平氏の共同演出。
作品から察するに、いろいろな制約やしがらみの中で創られたであろうことがなんとなく伝わってくる。着地点が少し分かりにくいというか、試作っぽいというか、「自信作が出来たから持ってきたよ!」というよりは、「こういう条件で創ってみたけどどうでっしゃろ?」感があり…評価が難しい作品とも言える。
女優がひとり、ファミリー向けの作品を上演し始めると、しばらくして、作品内容にリンクするかのように、劇場の外で洪水が発生して上演中止。劇場は急きょ、防災センター(避難所?)として使われることに。防災センターとしての準備(支援物資が運び込まれたり、上演中のものが片付けられたり)が進むなか、女優はなんとかして上演を続けようと試み、やがて、現実世界と劇世界が入り混じっていき…
というのがおおよそのあらすじなのだが、「災害大国の日本(の観客)」という視点でいると、展開されることがあまりに非現実すぎて、どこまでをリアルな感じで受け取れば良いのか、判断に戸惑う。「海外の人から見た日本」が「リアルな日本の姿」とどこかかけ離れて描かれることが多いが、まさにそんな感じ。
「避難所はあんなに朗らかな感じじゃない」とか、「『劇場の外では災害が起きている』を観客に当事者としてリアルな感覚で捉えてほしいなら、もっとシリアスな現場になるはず」とか、「避難所に変わっていくにしては出てくる人が少なすぎ(2人だけ…)」とか、現実に照らし合わせて観てしまうと、ツッコミだらけの作品となってしまう。
最終的には劇世界のほうで終わり、「劇場の外の洪水はどこへ行った」状態で終演するし…
一方で、「全てがフィクションであり、ファンタジーてあり、そういう枠組みで遊んでいるだけ」と割り切って観た場合は、「もっと有効な展開の仕方があるのでは?」とか、「災害設定がそもそも無くても良いのでは?」とも感じてしまい、元々上演をしていたファミリー向けのストーリーをもっとしっかり観たくなり…
なんとももどかしい感じに。
そんな中、ストーリーテラーも務めつつ劇中劇を進めていく女優の岩崎麻由さんが、この「少し輪郭のぼやけた作品世界」を、どうにかして一定レベルのクオリティに押し上げる役割を果たしていた。彼女の働きが非常に大きい。
現実と非現実の狭間をたゆたうような存在感というか、彼女の中に、大きく強固な軸があるように見えたので、そのおかげで、砂上の楼閣のような作品が崩れること無く終幕を迎えていたように感じられた。
終演後、共同演出の鳴海さんに伺ったところ、岩崎さんはニューヨークで、アメリカ人のスズキメソッドの第一人者である、エレン・ローレンのもとで演技をしていた経験もあるらしく、どうりで軸のブレない身体性だったわけだ。そこはかとなく感じられた、良い意味でのスズキメソッド感のおかげたったのか…と納得。
ちなみに、タイトルは「金魚」という意味で、劇中劇で「世界を救うために金魚の力を借りる」のと、防災センターのひとりが「カッパを着てゴーグルをした姿が金魚に似ている」ことから来ているようだ。
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