観るのも演るのも日々是好日!

演劇界に生きる男の観劇記録

SPAC-静岡県舞台芸術センターで俳優やってます!

倉敷幼稚園→粒江幼稚園→粒江小学校→倉敷南中学校→総社南高等学校→大阪教育大学

関心あるモノ・コト = 演劇/LEGO/昭和歌謡からJ-POP/字を書くこと/フィギュアスケート鑑賞/温浴施設めぐり/乗り鉄/旅行/睡眠

ユニークポイント ひつじノ劇場こけら落とし公演『Come on with the rain』@ひつじノ劇場
【2025/2/10 19:00〜20:10(途中休憩なし)】

たまたま、NHKドラマ『東京サラダボウル』のベトナム人労働者の回を最近見ていた。たまたま、NHK『映像の世紀 バタフライエフェクト』で「ベトナム 勝利の代償」を最近見ていた。たまたま、アウトリーチのワークショップの関係で詩集を手にしていた。図らずも、今回の作品に繋がるあれこれが、自分の中にあり、感覚が敏感な状態での観劇となった。

新劇場の杮落し公演(=新劇場お披露目公演)。白子ノ劇場から比べると、間口は3分の2くらいになった印象。アットホーム感や劇場感は、新劇場のほうが勝っているかも。
ただ、舞台袖は舞台脇に無く、登退場は舞台奥からのみという劇場で、特殊性も増したかも。
今回の作品もそうだけど、平田オリザの『S高原から』とか、鈴江俊郎の『家を出た』みたいな、「そこに住んでる人たちが集うロビー」設定の芝居が上手くハマりそう。

ベトナム・ダラットの安ホテルのロビー。季節はずれの台風が接近しているらしく、外は暴風雨で、空港は閉鎖。出国予定だったホテル客の日本人(心臓内科医の夫とその妻)、妻が外のカフェで知り合ったバックパッカーの日本人女性ののぶ子(元教師)と、ホテルのオーナーのベトナム人男性と、不法滞在中のホテルの男性客。
会話を繰り広げるのは主に日本人たちだが、ベトナム人がいい具合に絡んできて、「本当に日本語が通じないのに、まるで伝わってるかのような反応」の絶妙なリアクションをしたり。

「さりげなく、いいセリフ」が、今回も散りばめられていて、安定の劇作と演技。行間の演技の巧さも光る。
「川島が、出かけたきり戻らないまま幕」というパターンも想定しながら観ていたが、無事に(?)戻ってきて、そしていなくなるというドラマが。
残されたオーナーとのぶ子が、やり切れない想いを噛み締めるかのように、それぞれにバインミーを食べる幕切れが印象的。この終わり方は秀逸だと思った。

少しひねくれた見方をすれば、「川島は本当に事故に遭ったのか?(事故に遭ったふりをして、あの場から立ち去るきっかけを作りたかっただけなのでは?)」とも思った。川島にしてみると、彼らとの出会いで、自分の中で揺らいだものがあったようにも思うし、だからこそ、なにかきっかけが欲しくてそのきっかけをでっち上げた、という演じ方もあるな、と。
また、あえてそうしているのだと思うけど、ホテルの殺風景さも、なんだか色々と裏設定を作れそうな余白が感じられた。
それから、聞き間違いでなければ、設定が2025年の今より、ほんの少しだけ先を行っている気がしたのだが、気のせいか?

欲を言えば、山田作品の特徴のひとつ「言葉にできない瞬間の『間(沈黙)』」が、いつもに比べると少し物足りなさがあったように、個人的には感じられた。演技の問題というよりは、戯曲の問題なのかもしれない。沈黙状態になってしまうまでの会話の流れと、沈黙状態を脱するための話題の方向転換の仕方に、滑らかさが足りないというか、少しカクカクしていたような印象。「フェードイン/フェードアウト」してほしいわけではなく(そういう意味での「滑らかさ」ではない)、沈黙になる直前の会話とそのあとの会話に、僕には(ほんとに若干なのだが)強引さが感じられた。(もっと豊潤な沈黙の瞬間をこれまでに何度も観てきただけに、今回はそれがあっさりめだった印象)

またこれも、欲を言えば…レベルなのだが、たとえば、戯曲に描かれているであろう夫の「人物像」と、夫が実際に口にする「民度が低い」みたいな「言葉のチョイス」に、若干のミスマッチさが感じられた。(「この人、こういうボキャブラリーの選択をするんだ…」みたいな)
また、妻が最初に登場してきた時に夫を見て発する第一声から感じられた「雰囲気イマイチ良くない感じの倦怠期感」と、以降で語られる会話から感じられる「実際はそうでもない感じ(そこまで雰囲気は悪くない)」だったり、金子みすゞについての知識がありそうな感じなのに、実はそうでもないような設定の妻とか、金子みすゞの詩集を旅行に持ち歩く設定だけど、(僕の中では)「金子みすゞを好きな人」から連想され得る人物像とはイメージが少し異なる(ように感じられた)のぶ子のキャラクターとか、「人物像をいつもより曖昧にして書かれている部分が多いのかな?」という印象。

そしてこれは、本当に個人的な好みの問題でしかないが、自分は「金子みすゞ」(&劇中に出てきた『世界に一つだけの花』も)にそんなに共感性がないので、ちょっと金子みすゞ推しな展開だったのが、自分にはあまりフィットせず…
金子みすゞである必然性が個人的にあまり感じられなかっただけなのかもしれないし、金子みすゞの実人生の何かとリンクする設定とか、3.11の時に盛んにCMに使われたことが何かに繋がっていく、みたいな設定があれば良かったのかも。


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