観るのも演るのも日々是好日!

演劇界に生きる男の観劇記録

SPAC-静岡県舞台芸術センターで俳優やってます!

倉敷幼稚園→粒江幼稚園→粒江小学校→倉敷南中学校→総社南高等学校→大阪教育大学

関心あるモノ・コト = 演劇/LEGO/昭和歌謡からJ-POP/字を書くこと/フィギュアスケート鑑賞/温浴施設めぐり/乗り鉄/旅行/睡眠

serial number12『YES MEANS YES』@下北沢 ザ・スズナリ
【2025/1/16 14:00〜15:40(途中休憩なし)】

新ドラマ『御上先生』の脚本担当でもある詩森ろば氏の最新作は、スウェーデンの「Yes Means Yes法」をモチーフに、結婚5年目の女性・佳恵(内田慈)のモノローグを通して、性被害/性加害が描かれる。
客層は、予想に反して年配男性の割合が多い。どういった客層にヒットしたのか、個人的に気になるところw

中学時代の部活の顧問との関係、大学時代の彼氏とその友人との関係、夫との関係、女同士での性に関わるあけすけな会話、カウンセラーとのやり取り、不妊治療に悩む友人との会話…断片的に、多層的に、佳恵の人生が見えてくる中で、「たったひとりの、一見幸せそうな人生を送っているように見える女性でさえ、こんなにも複雑でシリアスな悩みや不安(もちろん、性にまつわるものも含む)が渦巻いているのか…」と驚きを隠せない。
同時に、自分の身の回りにも、「何でもない風を装って、でも、そう装うことで擦り減っている人たち」が、きっとたくさんいるであろうことは容易に想像できてしまって、「舞台を通して見えてくる現実」にパンチを喰らったような気持ちにも。

モノローグ、とは言ったものの、正確には内田さんのほかに4人の若手男性が登場する。
リビングを模したような二間四方くらいの空間の外側の四隅を、男性が取り囲むように座る。男性は、時に佳恵の夫・啓吾のセリフを四隅から4人でリレーするように喋り、時に夫以外の登場人物(顧問教師ハル/大学時代の元彼ナツ/元彼の友人アキ/カウンセリングで知り合ったゲイの男性フユ、など)としてリビング空間で演技をしたり。
5人とも出ずっぱりで、佳恵は感情の起伏が激しい場面もいくつかあり、すごく集中力と体力を要す舞台。

男優4人は全員実年齢20代で、キャラや醸し出す雰囲気が絶妙に異なり、佳恵の夫にしては若い印象だが、そこも含めて良かった。夫・啓吾というひとりの人格を演じる時は「4人の個性の差」が上手く活きて、それがひとつに融合するような良さがあったし、各自が担当したそれぞれの登場人物はそれぞれの役柄が、演じる俳優の持ち味に上手くマッチしていたように思う。
中でも、フユを演じた諏訪珠理さん、声の細さや優しい語り口が役柄に合っていて、「弱そうだけど、でも、強くおおらかな感じ」が印象に残る。

どこへどう着地するのか読めない展開は、互いの想いを吐露した夫婦が、話し合いを経て、「YES」のやり取りを繰り返しながら会話をするラストへ。もつれていた糸がほどけていくような、堆積していたものが取り除かれて少しずつ水が流れ出すような、優しいエンディングを迎える。
失われた20年を取り戻す(正確には、失われたままで取り戻せはしないのだけど)取っ掛かりを見つけた佳恵に、幸あれ!

「被害者だけど加害者だ」というようなセリフだったり、「自分に合わせてくれる相手に対して、自分が先回りして相手の好みを応える、その『気楽に本音が言えない』しんどさ」だったり、「相手を思いやるがゆえに感じるモノ」も色々と描かれている。
性的同意の話ではあるけれど、その根底には「相手を思いやる大切さと難しさ」「会話をする大切さと難しさ」みたいなメッセージもあって、ずっしりと重く、濃密な舞台。心がぐったりと疲労感に襲われつつ、でも、観られて良かった作品であることも確かだ。(『御上先生』への期待も高まる!)


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