新国立劇場 演劇 2024/2025シーズン『白衛軍 The White Guard』@新国立劇場 中劇場
【2024/12/17 14:00〜17:10(途中20分間の休憩あり)】

作品的に難解そうなイメージがあったため、観劇を少し迷ったのだが、個人的に注目している俳優が何人か出ており、新国立劇場制作の作品ということもあり、観劇。
「戦争を下地にしたチェーホフ」という雰囲気もあり、たとえば、会話中の抜け感とか、恋愛模様が見え隠れする感じとか、明確な主役が分かりにくい群像劇な感じとか、そのあたりはかなりチェーホフ的。チェーホフほど、会話が成り立っていない感じではないけれど。(『ワーニャ伯父さん』の引用、「ホッと一息つけるんだわ」なども出てくる)
ただ、ベースとなる、現代の日本人には分かりにくい「1918年のロシア革命後のウクライナの様子」についての情報量が多く、それらを分かりやすくセリフで説明されるわけでもないので、物語を追うためにすごく頭を使う作品。
ウクライナにまつわるあれこれの予備知識が、あらかじめ頭に入っているなら、だいぶ観やすくなるとは思う。(なので、『悲劇喜劇』最新号に掲載されている戯曲を読んでから観たほうが良いかも)
そして、そういった「観客には明示されない当時の時代性のような部分」を、俳優たちは根底に持っていなければならず、演じる側も緻密な作業が求められそうな作品。(出演者は文学座系の俳優と、新国立劇場研修所出身者が多く、いわゆる新劇系の芝居の作品)
幕開き、劇場奥からトゥルビン家の屋敷の舞台装置が客席に近づいてくる(スライディングステージ)演出で、4面舞台を有する中劇場ならではの仕掛け。カッコいい。
主人公の士官候補生ニコライ(村井良大)がギターを弾いて歌うのが好きという設定だったり、中尉レオニード(上山竜治)がオペラを嗜む設定だったりと、歌が作品を包む要素になっているのが構造的に良く、しかもふたりとも歌声が抜群に良い。
主人公は村井良大さん演じるニコライだと思うのだが、実は出番はそう多くない。ただ、ラストシーンはニコライにかかっているので、非常に重要な役どころではある。歌声が、力強いのにクセがなく、非常に耳触りが良い。最近注目している俳優のひとり。
ラリオン役の池岡亮介さんも注目している俳優のひとりだが、今回は道化的なお調子者の役割も担っていて、こういう「はっちゃけた」役も、やり過ぎない感じでなかなか上手い。勢いだけで演じていない、地頭の良さそうな感じも良い。
レオニード役の上山竜治さんも、難しい役どころをチャーミングに好演。吉本アイドルの「RUN&GUN」時代から知っている身としては、「こんな立派になって!」感が過ぎるw
出演者の中で女性は、レーナ役の前田亜季さんのみ。めちゃくちゃ良い演技をしていて、「素敵な女優さんになってる!」と思ってしまったほど。衣裳さばきや小道具の扱い方、表現としての手の使い方など、細かなところもさり気なく上手く、「将来的に舞台を主戦場に活躍する大女優」への片鱗を感じさせる。いつか『欲望という名の電車』のブランチとか演じそう。
そのほか、ニコライやレーナの兄アレクセイ役の大場泰正さんをはじめ、石橋徹郎さん、内田健介さんなど、トゥルビン家に集う人々もそれぞれに好演。
大鷹明良さんは二役務めていたが、学校の用務員のようなマクシム役が、非常に味わい深く、戦時下における弱き者の代弁者のようでいて印象的だし、戦死者に花を手向ける、セリフの無い短い場面の演技も印象的だった。
俳優も演出も概ね高評価で、印象的な良いセリフも多く、観てしまえば「いい舞台だった」と思えると思うのだが、演劇通好みなキャスティングであり、いかんせん、観劇したいと思わせるまでのハードルが少し高すぎるイメージ(チラシも少し格調高すぎた気もする。馬は出てこないし…)。
一昨年の『レオポルト・シュタット』にも似た印象ではあるが、『白衛軍』のほうがライトではある。上演時間は『白衛軍』のほうが長いけれど。
平日の昼公演で、客入りは4分の1ほど。色々ともったいない…むむむ。
『白衛軍-トゥルビン家の日々-』みたいに、何かサブタイトルを付けても良かった気もする。(ブルガーコフ自身は、小説を『白衛軍』、戯曲を『トゥルビン家の日々』として発表している)
新国立劇場 演劇 2024/2025シーズン
『白衛軍 The White Guard』
作 ミハイル・ブルガーコフ
英語台本 アンドリュー・アプトン
翻訳 小田島創志
演出 上村聡史
ニコライ・ヴァシーリエヴィチ・トゥルビン(士官候補生) 村井良大
アレクセイ・ヴァシーリエヴィチ・トゥルビン(ニコライの兄、砲兵大佐) 大場泰正
エレーナ(レーナ)・ヴァシーリエヴナ・タリベルク(ニコライの姉) 前田亜季
ヴィクトル・ヴィクトロヴィチ・ムイシラエフスキー(砲兵二等大尉) 石橋徹郎
ラリオン・ラリオノヴィチ・スルジャンスキー(トゥルビンのいとこ、学生) 池岡亮介
ウラジミール・ロベルトヴィチ・タリベルク(レーナの夫、参謀本部大佐) 小林大介
レオニード・ユリエヴィチ・シェルビンスキー(槍騎兵隊中尉、現在ゲトマンの親衛副官) 上山竜治
アレクサンドル・ブロニスラヴォヴィチ・ストゥジンスキー(大尉) 内田健介
フョードル(ゲトマン宮殿の従僕) 大鷹明良
ゲトマン(ウクライナ反革命政権の統領でドイツの傀儡) 采澤靖起
フォン・シュラット(ドイツ軍将軍) 前田一世
フォン・ドゥスト(ドイツ軍中尉) 今國雅彦
ドイツ軍軍医 山森大輔
宮殿の兵士1(声のみ) 西原やすあき
宮殿の兵士2(声のみ) 松尾諒
宮殿の兵士3(声のみ) 笹原翔太
宮殿の兵士4(声のみ) 草彅智文
ボルボトゥン(ベトリューラ軍の第一騎兵大隊長) 小林大介
フランコ(ボルボトゥンの当番兵) 西原やすあき
キルパートゥイ(ボルボトゥンの部下) 武田知久
ウラガン(ボルボトゥンの部下) 草彅智文
ガラニバ(ペトリューラ軍のコサック百人隊長) 駒井健介
コサック兵(脱走兵) 前田一世
靴屋 山森大輔
マクシム(学監) 大鷹明良
将校1(中尉) 西原やすあき
将校2(中尉) 駒井健介
将校3(中尉) 今國雅彦
士官候補生1 笹原翔太
士官候補生2 松尾 諒
士官候補生3 采澤靖起
士官候補生4 武田知久
士官候補生5 山森大輔
士官候補生6 前田一世
士官候補生7 草彅智文
美術 乗峯雅寛
照明 佐藤啓
音楽 国広和殺
音響 加藤温
衣裳 半田悦子
ヘアメイク 川端富生
アクション 渥美博
演出助手 中嶋彩乃
舞台監督 北条孝、加瀬幸恵
演出部 飯田大作、稲生親紀、北林勇人、後藤容孝、高橋邦智、平石尚子、明神杏奈、沼田梨沙、伊藤真
ヘアメイク 木村久美、荒井秀美
美術助手 酒井佳奈
音響助手 橋かおり
稽古場代役 都築亮介
プロンプ 日沼りゆ
大道具 俳優座劇場(井戸元洋)
小道具 高津装飾美術(財前光子)
小道具製作 土屋工房(土屋武史)
特殊小道具 アトリエカオス(田中正史)
特殊効果 戸井田工業、ローカスト、山縣商店
衣裳 松竹衣裳(清水崇子、大野遥奈、北條祐介)
衣裳製作 横田裕二、佐藤美香、藤崎美香
帽子製作 シャポーヌ(下重恭子)
履物 アーティス(大石雅章)
電飾 イルミカ東京(中村徹)
協力 ニケステージワークス
観劇サポート イヤホンガイド、篠原初実、持丸あい(音声ガイド)、文化庁委託事業「令和6年度障害者等による文化芸術活動推進事業」
舞台・照明・音響操作 新国立劇場技術部、シアターコミュニケーションシステムズ、アート・ステージライティング・グループ、フリックプロ、吉田信夫(舞台)、鈴木かおり(照明)、青木駿平(音響)、村上武志(大道具)
制作助手 林弥生、小川真理
制作 中柄毅志、伊澤雅子
プロデューサー 三崎力
芸術監督 小川絵梨子
主催 新国立劇場
2024年12月3日〜22日 新国立劇場 中劇場
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