シス・カンパニー公演 KERA meets CHEKHOV Vol.4/4『桜の園』@世田谷パブリックシアター
【2024/12/16 13:00〜15:55(途中15分間の休憩あり)】

2020年春に上演が予定されるも、初日目前にコロナ禍の緊急事態宣言の影響で上演中止になった企画が、キャストを半分ほど入れ替える形で、会場もシアターコクーンから世田谷パブリックシアターへと替え、4年越しに上演。
4年前のキャストよりも演劇通好みな俳優陣となり、作品としての完成度的には、結果的にこれで良かったのかも。『桜の園』を上演するには、世田谷パブリックシアターでは舞台が狭すぎる感じではあったが。
これまで観てきた『桜の園』のなかで、新劇寄りな演出のものとしては、一番しっくりくる『桜の園』であった。演出自体は、それほど奇をてらったものではなく、わりと商業演劇な感じというか、原作知らない人でも楽しめるし分かりやすい感じ。2幕で客席から登退場するのと、幕間の転換で、舞台装置の転換と並行しながら小野寺修二さんによるステージングの演出が挿入されていることが、演出面での変化球か。
なにより配役が絶妙で、この座組で上演したからこそ成功した舞台と言えよう。
出演者それぞれの実年齢が、それぞれの役柄の年齢よりも上の人(あるいは下の人)が多く、普通にキャスティングした場合、少し違和感のある配役だとは思うのだが、それが今回の場合は上手くハマっていたように思う。
天海祐希さんのラネーフスカヤの麗しいこと!黙って立っているだけでも説得力のある立ち姿の素晴らしさ、漫才で言う「ボケとツッコミ」のような「演技の受けと攻め」の使い分け、浮世離れしたような存在感など、どの瞬間を切り取っても、まさしくラネーフスカヤの一つの完成形。各幕の衣裳はどれも、身長があるから見栄えがする。(4幕の黒いロングコートはメーテルのようで良きw)
池谷のぶえさんのドゥニャーシャは、やり過ぎてギャグになるギリギリ手前を攻め、「自分が見えてない勘違い女」を、普通は観客の共感を得られないような造形になりそうなところ、観客を味方につけるような好演ぶり。「鼻につかないぶりっ子」という、ある意味、画期的なドゥニャーシャw
峯村リエさんのワーリャも斬新で、ロパーヒンへの想いをギャグ的に出しつつ、家長としてのしっかり者感も体現し、「ワーリャとしての葛藤」がよく見える演技。いわゆる「ギスギス」「トゲトゲ」感がマイルドに仕上がっていて、とてもチャーミングなワーリャに。衣裳のデザインと相まって、スタイルがとても美しく見えたのも良かった。
浅野和之さんのフィールスも、単に老いているだけでなく、時の流れまでも彼の中では過去で止まっているかのような、ほかの人物たちとは異質な存在感を醸し出せていて、それが4幕ラストでグッと活きてくる。「ラネーフスカヤと話していても眼中にあるのはガーエフだけ」みたいな身体のフォーカスの作り方も良かった。
そのガーエフの山崎一さんも、この座組では少し弱いかと思いきや、ついつい喋りすぎてしまう感じとか、悪気が全く無いのに地雷を踏んでしまう感じとかも上手く、「前に前にと出しゃばってはこないのに、確かにそこにいる存在感」で魅せてくれた。
エピホードフの山中崇さん、ヤーシャの鈴木浩介さん(お高く気取った嫌な奴感がすごいw)、トロフィーモフの井上芳雄さん(薄毛のカツラ&メガネで冴えない感じを熱演)、シャルロッタの緒川たまきさん(出てくるたびに手品がいくつか披露され、手品の種類が相当ある!)、アーニャの大原櫻子さん、ピーシチクの藤田秀世さんらも、それぞれに良い仕事ぶり。
本当に適材適所というか、それぞれの役柄を生かす役者が揃った感じ。
そして、今回の舞台でのMVPは、個人的には、荒川良々さんのロパーヒン。もうちょっとサイケデリックな感じで来るかと思いきや、彼の持ち味とも言える朴訥な感じや間の悪い感じを活かしつつ、農奴出身の成り上がり感や劣等感、卑屈になるが故に自分を大きく見せようとする感じなど、色々な人が想像するロパーヒン像が、満遍なく体現化されていた印象。ただの成金とも違う、ただの嫌な奴とも違う、非常に複雑な感覚が、荒川良々さんの肉体を通じて表現されていたように思う。
そして、想像以上にスタイルが良い(足が長い!)。天海祐希さんと並んで、見劣りしないで絵になるのも良かった。
東京のあと、大阪と福岡でも上演。チケットは早々に完売し、当日券も争奪戦な感じだし、何よりチケット代もそれなりにするが、3時間立ち見だとしても、観てみる価値はあるかも。
シス・カンパニー公演
KERA meets CHEKHOV Vol.4/4
『桜の園』
作:アントン・チェーホフ
上演台本・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
ラネーフスカヤ夫人:天海祐希
トロフィーモフ:井上芳雄
アーニャ:大原櫻子
ロパーヒン:荒川良々
ドゥニャーシャ:池谷のぶえ
ワーリャ:峯村リエ
ピーシチク:藤田秀世
エピホードフ:山中崇
ヤーシャ:鈴木浩介
シャルロッタ:緒川たまき
ガーエフ:山崎一
フィールス:浅野和之
通りすがりの男、下男:猪俣三四郎
下男:矢部祥太
駅長、下男:吉澤宙彦
美術:松井るみ
照明:関口裕二
音響:水越佳一
衣装:安野ともこ
ヘアメイク:宮内宏明
ステージング:小野寺修二
舞台監督:福澤諭志
プロデューサー:北村明子
演出助手:加藤由紀子
美術助手:平山正太郎
照明操作:三嶋聖子、福山莉子、森山紗貴
音響操作:常田千晴、久保勇介
衣装助手:藤井やすのり、赤嶺愛海
現場ヘアメイク:菊池泰子、黒田はるな、木戸望
ステージング助手:崎山莉奈
演出部:鷲北裕一、宇野圭一、山松由美子、長谷川ちえ、井上悠介
衣装部:古田亜希子、松野美保
ギター演奏・指導:伏見蛍
マジック指導:ダーク和秋
制作【進行】:鈴木瑛恵、市瀬玉子、市川美紀、土井さや佳、井上果穂
制作【票券】:笠間美穂、安田千秋
制作【宣伝】:西村聖子
制作【WEB】:垣ヶ原将
制作【アシスタントプロデューサー】:吉澤尚子
大道具制作:(株)シー・コム(伊藤清次)、(有)美術工房拓人
植栽:櫻井忍
小道具:(株)藤浪アート・センター(浅海敬)
衣装制作:諫山真澄、梅田麻里、岸久理、佐野明香、高崎あゆみ、高橋由美、土橋智子、原みちこ、見上真紀、伊島青、青木美侑、徳蔵涼海、チーシャプロジェクト
履物:(株)アーティス(大石雅章)
運搬:(株)マイド
台本協力:肥田光久
協力:明星真由美、(株)センターラインアソシエイツ、(有)バランス、モックサウンド、(株)アントラクト、コラソン(有)、井上薫、中村のん、伊島薫、(株)CASUCA、DAVIDS CLOTHING、DORIAN GRAY、Mindbenders & Classics、suzuki takayuki、(株)内田染工場、松竹衣裳(株)、(株)東宝コスチューム、突撃洋服店、クエルポ、M’s factory、(株)デラシネラ、(株)STAGE DOCTOR、albatross guitar works、(株)三響社、スタジオAD、(株)gaaboo、(株)movel、(株)ストロボライツ、新宿村スタジオ(稽古場)
マネージメント協力:(株)キューブ、(株)研音、(有)グランアーツ、大原櫻子事務所、(有)大人計画、(株)ダックスープ、krei(株)、(有)ザズウ、(株)ラウダ、kitokito、(株)円企画
【東京公演】提携:公益財団法人せたがや文化財団、世田谷パブリックシアター
【東京公演】後援:世田谷区
【大阪公演】運営協力:(株)サンライズプロモーション大阪
【福岡公演】主催:九州朝日放送(株)、(株)FM FUKUOKA、シアターマネジメント福岡(株)、(株)サンライズプロモーション東京
【福岡公演】後援:福岡市
企画・製作:シス・カンパニー
2024年12月8日〜27日 世田谷パブリックシアター
2025年1月6日〜13日 SkyシアターMBS
2025年1月18日〜26日 キャナルシティ劇場
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