観るのも演るのも日々是好日!

演劇界に生きる男の観劇記録

SPAC-静岡県舞台芸術センターで俳優やってます!

倉敷幼稚園→粒江幼稚園→粒江小学校→倉敷南中学校→総社南高等学校→大阪教育大学

関心あるモノ・コト = 演劇/LEGO/昭和歌謡からJ-POP/字を書くこと/フィギュアスケート鑑賞/温浴施設めぐり/乗り鉄/旅行/睡眠

MONO第51回公演『御菓子司 亀屋権太楼』@ザ・スズナリ
【2024/3/9 14:00〜16:00(途中休憩なし)】

創立35年のMONOが、これまでの1幕ものスタイルから大きく舵をきった。意欲作にして傑作。今までのMONOも良かったけれど、今回のMONOも違う良さがある。
ドライでスピーディーな会話や、憎めない人物造形はそのままに、ある和菓子屋の歩んだ10年を、場面を様々に変えながら飛び飛びに描いていく作風で、場面転換も俳優たちが幕間のステージングのように様式的な動きで見せていく。(この転換の動きも統制が取れていて美しい!)

舞台は、観客席側を除く3面を、裾広がりのコの字(つまりは「ハの字のようなコの字」)型にパネルで囲み、パネルには、大小様々な窓枠のようなものがあり、それらの窓枠の多くは、格子模様をベースとした、それぞれに異なる和風の意匠で飾られている。「モダンな和の空間」といった趣き。(サイトから転載の舞台写真参照)
そして、場面に応じて、それらの窓枠が色々に変化する。ある窓枠は引き戸になったり、開き戸になったり、窓になって明かりが差し込まれたり。それだけにとどまらず、戸棚になっている箇所、椅子が出てくる箇所、造り付けの机として機能する箇所…と、言わば「寄木細工」や「からくり屋敷」のようである。

なので、いつものMONOのような、リアルな空間の建て込みとはちょっと異なり、「やや抽象性のある装置で、場面転換を頻繁に行いながら色々な場面を表現」という感じ。
和菓子屋の事務所、作業場の休憩室、カフェの一角、ホテルのロビー、雑居ビルの一室、などなど。
この変化が、見ていて抜群に楽しい。「そこがそうなるの!?」とか「それをそこへ収納するんだ!?」とか。(何がどうトランスフォームするのか、扱う俳優たちはその段取りをマスターするのが大変だったのではないか、と思われるw)
照明もまた、作品に寄り添う感じの美しさ。(照明デザインは吉本有輝子氏)

「江戸時代から続く老舗の和菓子屋『亀屋権太楼』」が、実は巧妙に練られた歴史で捏造された経歴だったことが判明。ほどなくして、その捏造した張本人の社長は病死。次男が後継者となり、全てを公にして店の立て直しを図る。軌道に乗りかけた時、次男を快く思わない長男が店の乗っ取りを企て、新たな社長となる。が、上手くはいかず、結局は、店は次男の手に戻る。しかし、ライバル店が現れるなどして店の経営は悪化、店を手放す事態に…という10年間を、要所要所をピックアップするような形で見せていく。

登場人物は、長男の吉文(水沼健)、次男の祐吉(尾方宣久)、吉文の娘の早紀(立川茜)、先代社長に雇われた菓子職人の道庭(金替康博)、先代社長に雇われた事務職員の青山(奥村康彦)、亀屋権太楼アルバイト歴10年の、狩野英孝みたいなキャラクターの北川(渡辺啓太)、亀屋権太楼の立て直しを請われた日本茶インストラクターで、早紀の学生時代の先輩の奈良原(高橋明日香)、吉文をそそのかす、トルコと繋がりのある怪しい男の佐倉(土田英生)。

人望の厚い祐吉と、人望が無く娘からも嫌われている吉文、この対立が物語の核のひとつになるが、一方で、店の経歴詐称と並行して描かれる、いわゆる「同和地区出身」的な経歴の持ち主である道庭・青山・奈良原の出自にまつわるモチーフや、アルバイト北川の二面性なども作品に絡んでくる。
さらに、年月を経ることで変わっていく人間性や、他者との関係性の変化なんかも織り込まれている。
ある意味、「表の顔と裏の顔」みたいなものが、本作のテーマかもしれない。あと、「他人をどう見ているか/他人からどう見られているか」みたいな部分も。

いつもの軽妙さは健在だし、道庭の天然キャラをはじめ、笑えるやり取りも多く、客席は何度も笑いに包まれる。
ただ、MONOにしては社会派な側面も強い。舞台はそこまで重苦しくなく、社会派的なメッセージ性も、観ている時は「みかん汁で描いた薄いあぶり出しの絵」程度なのだが、観劇後にジワジワと輪郭が浮き出て来る感じ。
展開を知った上で観ると、また違う観え方になると思われる。

兄弟の和解めいた場面のあと、エンディングに登場するのは、今は解体業のアルバイトをしている北川、ただひとり。空き店舗らしきかつての和菓子屋の梅の木を、これから切ろうとするところで幕。(この梅の木もまた、物語にいい塩梅で関わる存在として描かれている)
北川以外の人たちがその後どうなったかは、観客には明示されない。「え、ここで終わるの?」という感じもあるが、これも、敢えての狙いだろう。
登場人物の描き方含め、このあたりは多少、評価の分かれるところかもしれない。

登場人物たちのやり取りも、いつものMONOより無言でのやり取りが多い印象で、その場に生まれる空気をすごく大事にしているように見え、言葉で説明しすぎない感じが心地良い。
ストーリーや演出に「余白」が多い作品と言えるが、舞台の進行を観ながら、余白の答え合わせをしていくというか、ミステリー作品ではないのだが、ある種の「謎解き」のような感覚もあり、その点でも見応えがある。

あと、ここに来て古くからのメンバー以外の若手俳優たちが、旧メンバーと遜色が無くなった印象を受けた。
これまでの1幕ものだと、若手組はどうしても「昔を知らない存在」みたいなキャラクターを割り振られることが多く、「出演者間のキャリアの差」みたいなものがあったのだが(もちろん、それを上手く取り込んだ配役にはなっていたが)、今回、場面や時間が細切れに飛ぶことで、新旧メンバー関係なく「個」の存在としての印象が強くなり、メンバー皆がフラットな状態で舞台に立っているように見えた。
若手組の、個性というかキャラも立ってきた感じがあり、旧メンバーも、いつもとは一味違う配役な感じもあり、作品だけでなく、劇団としてもまた、「もう1段上がったな」という印象。

ロビーの物販コーナーでは、「亀屋権太楼」の看板商品として劇中に登場する「はしけやし」という架空のおまんじゅうを、京都の老舗和菓子店とコラボして販売。

東京公演は終わり、残すは北九州と上田のみ。観られるチャンスがある方は、ぜひ!
(もう1回観たいけど、どう頑張っても観に行けない…w)


MONO第51回公演『御菓子司 亀屋権太楼』
作・演出 土田英生

尾方宣久
奥村泰彦
金替康博
高橋明日香
立川茜
土田英生
水沼健
渡辺啓太

舞台美術 柴田隆弘
照明 吉本有輝子(真昼)
照明操作 池辺茜、岩元さやか
音楽 園田容子
音響 堂岡俊弘
衣裳 清川敦子
演出助手 neco(劇団三毛猫座)
演出部 白坂奈緒子、習田歩未
舞台監督 青野守浩
イラスト 望月梨絵
宣伝美術 西山榮一(PROPELLER.)
制作 垣脇純子、豊山佳美
協力 キューブ、リコモーション、radio mono、京菓子司 金谷正廣
企画・製作 キューカンバー

主催 キューカンバー[大阪・東京・北九州公演]、上田市(上田市交流文化芸術センター)・上田市教育委員会[上田公演]
提携 北九州芸術劇場[北九州公演]
制作協力 サンライズプロモーション東京[東京公演]
助成 文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術等総合支援事業(創造団体支援))・独立行政法人日本芸術文化振興会[大阪・東京・北九州公演]、大阪市[大阪公演]、文化庁文化芸術振興費補助金 劇場・音楽堂等活性化・ネットワーク強化事業(地域の中核劇場・音楽堂等活性化)・独立行政法人日本芸術文化振興会[上田公演]

2024年2月22日〜2月26日 扇町ミュージアムキューブ CUBE01
2024年3月1日〜3月10日 ザ・スズナリ
2024年3月16日・3月17日 J:COM北九州芸術劇場 小劇場
2024年3月23日・3月24日(日) サントミューゼ(上田市交流文化芸術センター) 大スタジオ

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