EPOCH MAN『我ら宇宙の塵』@新宿シアタートップス
【2023/08/11 14:00〜15:40(途中休憩なし)】

またひとり、見逃せない演劇人に出会ってしまった。そうなりそうな予感はしていたが、予想以上だった。EPOCH MAN、今後要注目だ。
舞台からは、演劇の力や可能性をとても信じていることが伝わってきて、また本作では、デジタル(テクノロジー)とアナログ(人間)の融合というか采配のバランスが素晴らしく、個々の俳優も作品そのものも、両方を存分に味わえる舞台だった。
古き良き小劇場でありつつ、それでいて、最先端な感覚もありつつ。そして、それが作品テーマのひとつである「宇宙」にピッタリで。壮大な内容を、ミニマムな形で示してくれたと言えよう。
あと、「様々な幸福な出会いの結晶として、たどり着いた作品なんだろうな」という印象を受けた。
事故死した、宇宙や星の話が好きだった父(小沢道成)。母(池谷のぶえ)からは「お父さんは星になった」と言われ、それ以降、口数は少なくなり、空ばかりを見るようになっていた少年・星太郎(しょうたろう)(人形操演:小沢道成)。ある日、星太郎は突然、父の行方を探るためにひとりで出かける。舞台は、星太郎がいなくなったところからスタートする。(その前にプロローグ的な抽象的な場面があるが)
居なくなった星太郎の行方を必死に探す母は、星太郎が事故現場の道に落書きしていたという目撃証言とそこに描かれた絵を手がかりに、父親が事故の時に運ばれた病院を訪ねてみる。
そこで星太郎と話をしたという看護師・早乙女(異儀田夏葉)と出会い、2人で、病院裏手にある、父親が荼毘に付された火葬場を訪ねてみる。
そこでまた星太郎と話をしたという火葬場職員・鷲見(すみ)(渡邊りょう)と出会い、今度は3人で、星太郎の思い出の場所だと思われるプラネタリウムを訪ねる。そこに星太郎はいて、プラネタリウム職員の老婆・平家(ひらや)(ぎたろー)の星座や星の解説を聞いているうち、星太郎は、「父の行方」に対する自分なりの答えに辿り着く…
というようなストーリー。
物語に貫かれるテーマは「死生観」。主軸となる母と息子のストーリーに、看護師が語る「祖母の死」や、火葬場職員が語る「愛犬の死」、プラネタリウム職員が語る「夫の死や、自分が望む葬儀の話」などが、いい塩梅で絡んでいく。
また、もう一つのテーマである「宇宙と星の話」も、「地球に隕石がぶつかった時に飛び散った欠片が集まって月が生まれた」とか、「遠い星に行く方法」とか、劇中に語られることが作品に大きく関わってくる。
最終的に、「死んで焼かれた身体は煙になり、大気中に混じり合い、雨になっているかもしれないし、海になっているかもしれないし、魚や野菜になっているかもしれないし、色んなものに形を変えている。そう考えると、星になったというのも間違いではない」という結論にたどり着いた星太郎。広大な宇宙の中で、死んだら「塵」となり、宇宙を構成する物質となって存在し続ける…
ファンタジーなんだけど、同時にすごく現実的というか、とてもしっくり来るゴール地点だった。タイトルの意味も、ラストに来て回収。
そう大きくはない舞台には、巨大なLEDパネルが三辺をカーブ状に囲む形で立てられ、床面は光沢素材で、パネルに映し出された映像が床面にも反射して映るようになっている。
最初に、満天の星空が映し出された瞬間、一気に物語の世界へ連れ込まれた感覚。その後も、手書きのイラストが動き出したり、プラネタリウムの場面で星座が浮き出てきたり、要所要所で上手く使われ、説明的になりすぎることなく、観客の想像力を補完してくれる。
星太郎が、プラネタリウムから自宅へ駆け出した時、人形が客席に向かって走っているように俳優たち5人で動かしつつセリフも喋っている後ろでは、LEDパネルに、「一点透視図法」みたいな感じで描かれたたくさんの「直線」が流れているよう映し出され、これこそまさに「デジタルとアナログの融合の極致」であり、演劇の力の面白さも感じられた。
また、ラストでは、それまでわりとモノクロだった映像に、色彩が付いていき、カラフルな風景に包まれたのも圧巻だった。星太郎の心の変化とリンクしても見えるし、登場人物たちの世界観が広がった感じにも見え、とても良かった。
少年役の星太郎は、関節が動く人形で、愛らしくもあるが、少し不気味でもあり、何かを真剣に考えているような表情をしている。少し大人びた印象も。それを小沢さんが操作しつつ喋りつつ、時には星太郎の父親役も担いつつ。
俳優5人はほぼ出ずっぱりで、メインの役以外の端役も演じたり、時には人形操演に加わったり。ちなみに、壁面はLEDパネルで囲まれているため、俳優たちの出入りは床からのみ。
少年にも父親にも見える小沢さんが果たす役割も大きかったが、母親役の池谷さんがめちゃくちゃいい。シリアスで感情的な面の大きい役で、そういう池谷さんもとても良き。ホント、上手い俳優さんだなと思う。そして、シリアスな中に垣間見せる抜群のコメディセンス。爆笑するような場面は無いが、「泣けてくる場面なのにやり取りが笑える」みたいな感じで。
看護師役の異儀田さんも、火葬場職員役の渡邊さんも、スマートだけどちょっとだけ個性的な演技で、人物造形も秀逸で、池谷さんとの声質のバランスもとても良く、池谷さんに見劣りすること無く渡り合う姿が良き。この舞台に欠かせない存在感を見せた。
プラネタリウム職員の平家さん役のぎたろーさんは、飛び道具的な配置かと思いきや、職員の老婆役がとてもハマっていて、「狙いすぎず、さり気ないのに、可笑しい」のがとても良き。ラストで、平家さんが亡くなったあとの会話中に、片隅で座って、ほほ笑みながらその話を聞いている、穏やかなぎたろーさんの姿も印象的。
漠然と「死んだらどうなるのかな」「明日の朝、この身体が死んでいたらどうしよう」とか、幼少期に考えていた身としては、星太郎の感覚もちょっと分かるし、大人になった今としては、そんな子どもとどう接していいか分からなくなる母の気持ちもちょっと分かる。
大切な人を亡くした人や、宇宙に興味がある人、死んだらどこに行くのか考えたことがある人なんかに、オススメしたい作品。
あと、昭和から平成のころの、古き良き小劇場の感じが好きな人にも。
EPOCH MAN
『我ら宇宙の塵』
作・演出・美術:小沢道成
宇佐美陽子(うさみようこ):池谷のぶえ
鷲見昇彦(すみのりひこ)、少年2、町人3、配達人:渡邊りょう
早乙女真珠(さおとめまみ)、少年3、町人2、伝聞人:異儀田夏葉
平家織江(ひらやおりえ)、少年4、町人1、掃除人、斉藤:ぎたろー
星太郎(しょうたろう)、少年1:小沢道成
映像:新保瑛加
音楽:オレノグラフィティ
ステージング:下司尚実
舞台監督:藤田有紀彦
照明:奥田賢太
音響:鏑木知宏
パペット製作:清水克晋
衣裳:西川千明
ヘアメイク:Kazuki Fujiwara
演出助手:相田剛志
舞台監督助手:磯田浩一
照明・映像操作:市野佑可子
稽古場代役:椙山さと美
宣伝美術:藤尾勘太郎
写真:山岸和人
宣伝ライター:横川良明
メイキングディレクター:谷口恒平
舞台・稽古場写真:小岩井ハナ
制作:村田紫音、保坂麻美子、及川晴日
制作協力:鳥谷規
プロデューサー:半田桃子
LEDビジョン:SPACEWA(辻貴大)
映像協力:コローレ
鑑賞サポート・字幕制作:Palabra(UDCastLIVE)
鑑賞サポート:NPO法人シアター・アクセシビリティ・ネットワーク(TA-net)
後援:ニッポン放送
主催:EPOCH MAN
助成:芸術文化振興基金助成事業、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京
Special Thanks:安藤保佳、飯塚なな子、石川亞子、石川佳乃、板場充樹、伊藤優花、猪俣晏暖、猪又友理子、植村海月、近江谷悠衣、大熊望友、大下沙綾、黒澤たける、神谷大輔、古賀結夢、近藤茶、高羽彩、田中遥、鳥塚隼人、中尾莉久、渚まな美、野木怜那、浜田栞那、東迎昇史郎、藤木陽一、藤田輝、松島愛華、松嶋奈々夢、松原怜香、三國谷花、村田正純、村田夕奈、横室彩紀
2023年8月2日〜13日 新宿シアタートップス
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