COCOON PRODUCTION 2021『物語なき、この世界。』@シアターコクーン
【2021/7/30 13:30〜16:15(途中20分の休憩あり)】

ポツドールの三浦大輔氏の新作。前回の藤ヶ谷太輔主演の『そして僕は途方に暮れる』は見逃しているので、三浦氏の演出作品を観るのはおそらく『娼年』以来。
三浦氏特有のベッドシーンなどもあるものの、『娼年』などに比べると、今回の舞台ではその頻度も露出も少なめだが、岡田将生さんが風俗店で行為に及ぶ場面などは予想通り、ある。
このあたり、基本的な路線はこれまでの作風と同じだが、今回は登場人物たちの独白が多くなっている気がした。何だかやたらとみんな語る。
しかもその内容が作品テーマである「物語(ドラマ)」についてで、いわゆる「自己肯定」「自己実現」「自己顕示」への欲求とか、その裏返しとして感じる「虚無感」「うだつの上がらなさ」みたいなものを、「物語」という言葉を使って語るので、セリフそのものが「いかにもセリフです」的なあざとさも。「人生の主人公」とか「自分は脇役だ」とか「いまドラマみたいだった」みたいなフレーズ頻発。
「そんなにみんな、しかも初対面同士で『物語』とか『主人公』って言葉を共通言語として会話する?」という感じで、シェイクスピアほどではないにしても、不自然な言い回しに聞こえる瞬間が多々あり、そういった「誰の言葉を喋ってるのかよく分からない感じ(役柄から自然に出てきた言葉というよりは、誰かに言わされてるような感じ)」が妙に気になってしまう。
これは狙った上でのことなのか、各俳優のセリフ術の上手い下手によるものなのか…ということも分からずw
皆が饒舌なだけに、余計にそこは引っ掛かる。
新宿歌舞伎町の街並みが舞台上に再現され、居酒屋、銀行のATM、風俗店の入口、喫煙所などが立ち並ぶ。雑踏のシルエットがプロジェクターで投影され、リアルに出てくる登場人物たちの孤独感を浮き彫りにする。
街並みは、回転すると店内に変わる仕組みで、いろんな店の外観と内観が目まぐるしく転換する。(1つの装置を3店舗くらいで共有しているものもあるので、内観の飾り替えが大変そう)
「自分の人生に物語がない奴らが映画を見に行く=歌舞伎町を歩く奴らはそんな奴ばっかり」みたいなセリフがあって、つまり「自覚の有る無しに関わらず、物語を欲している人たちの話」なのだろう。そして、歌舞伎町や、歌舞伎町を拠り所として生きている人間たちは「物語が無い世界であり、自分の物語がない人たちである」と。
前半45分、休憩20分、後半100分という、いびつな時間配分での上演なのだが、これも「物語」というテーマ上、意図的に設定されたものだろう。
前半で、不可抗力による殺人事件(実は死んでないことが後半に判明する)が起きることでストーリーが展開していくため、その事件が起きるまでが前半、いわば序章であり、後半は事件を契機とした登場人物たちそれぞれの、「物語」をめぐる話へと発展していく。いわば本編は後半なのである。
前半で厄介な酔っぱらいのオッサンを演じ、死んだと思い込まれてしまう、ほっしゃんこと星田英利さんが、後半、前半にとった行動のひとつひとつに意味があったことを感じさせる場面があり、悲哀を感じさせる良い芝居を見せる。(さらにその後、このオッサンは、理由がはっきりしないまま歌舞伎町のビルから飛び降り自殺をするという衝撃の展開!)
一方、この舞台の主人公である岡田・峯田の同級生コンビ(といっても、この日に歌舞伎町の風俗店で高校卒業以来の再会をした、特別仲が良い訳でもない二人)は、「ドラマ」の主人公に憧れる売れない俳優と、人生に「ドラマ」を求める売れないミュージシャン、という設定だが、ひょんなことから殺人を犯してしまうことで、生を実感したような錯覚に陥ったものの、後半では、死んだと思っていたオッサンが生きていて、しかも偶然オッサンと再会して、オッサンがその日の出来事を振り返ってしみじみと語ることで、結局、岡田・峯田は主人公ではなく「ただオッサンの物語の脇役に過ぎなかった」ことを自覚させられてしまうあたりの展開が上手い。
また、前半と後半を橋渡しする役割として登場する、寺島しのぶさん演じるスナックのママ(オッサンの元妻)が、商売トークの合間に巧妙に本音トークを織り交ぜる感じとか、適当にいい加減にあしらう感じも上手い。
しかし、峯田さん演じる今井伸二の「売れないミュージシャン」はともかく、岡田さん演じる菅原裕一の「売れない俳優」は若干の無理があるだろう。
それは「岡田さんのビジュアルで売れないってどういうことよ?」ということではなく、「あんなにクズ男な性格で、役作りとか勉強とか全くしてなさそうなのに、ちょい役で映画に出て3万もらうってあり得るの?日本の芸能界ってそんな感じなの?」と。
あと個人的には、ドラマとして観ることを差し引いても、岡田さんはやっぱりキレイ過ぎる気がするし、逆に峯田さんは、ドラマとして観るには少し汚れすぎてるというか、リアルにクズ男すぎる気もする。顔とか演技とかだけじゃなくて、持ってる雰囲気とかも含めて。
三浦作品はやっぱり、裸になる以上にさらけ出す感じなので、根っこの部分とか、普段の生活とかも、相当影響してくるわけで、そのあたりがベストキャスティングだったかどうか、疑問が残る。
これは、バランスの問題なのかもしれない。岡田将生さんと峯田和伸さんでは、ちょっと釣り合いを取るのが難しいというか、岡田さん寄りでキャスティングするならば、今井役ももう少しキレイめなほうが良いし、峯田さん寄りでキャスティングするなら、岡田さんではキレイすぎる。
二人とも、「ホントに空っぽで何も考えてないんだろうな」という虚無感は上手いし、岡田さんは新境地的な演技ではあるのだけど。
菅田将暉の「まちがいさがし」(と、あいみょんの「マリーゴールド」)が、劇中でも歌われ(流れ)、作品テーマとオーバーラップする。
また、ラストで、彼女にも捨てられ、自暴自棄になり歌舞伎町の路上で寝転がって暴れだす菅原の様子を、今井がスマホで撮影するのだが、その映像が舞台奥に大写しになるところは、メタシアターとかブレヒトを少し想起させ、「ドラマ」を求めるドラマ、という枠組みだったことが端的に表現されていた。
客席は、緊急事態宣言以降チケット販売をストップしたためか、7割くらいの入りだった。そして圧倒的に女性客が多い。
COCOON PRODUCTION 2021
『物語なき、この世界。』
作・演出 三浦大輔
岡田将生 菅原裕一
峯田和伸 今井伸二
柄本時生 田村修
内田理央 鈴木里美
宮崎吐夢 風俗店 店長
米村亮太朗 警察官
星田英利 橋本浩二
寺島しのぶ 橋本智子
日高ボブ美 風俗嬢(キャバ嬢2)
増澤璃凜子 キャバ嬢1・3
仁科咲姫 キャバ嬢1・3
有希 OL
美術 愛甲悦子
照明 三澤格史
音楽 井筒昭雄
音響 中村嘉宏
衣装 小林身和子
ヘアメイク 河村陽子
映像 冨田中理
擬闘 六本木康弘
演出助手 山崎総司
美術助手 岩本三玲
舞台監督 齋藤英明
演出部 小見山実侑、三上洋介、中瀬古靖、小野寺栞、渡辺純平、渡邊圭悟、畑久美子
照明操作 前田奈都子、長野ちひろ、鳥居春歩、松井義之、橋野明智
音響操作 佐藤こうじ、今里愛、野中祐里
衣装アシスタント 岡田梢
衣裳進行 伊藤優理、秋山友海
ヘアメイク進行 野林愛
ヘアメイク協力 小畑央
映像操作 菊地沙耶
制作助手 坂井加代子、加藤恵梨花
大道具 C-COM舞台装置(伊藤清次)
機構 美鈴工業(渡部貴浩)
背景 美術工房拓人
小道具 高津装飾美術(西村太志)
電飾 コマデン(福富健司)
運搬 マイド
音響協力 Sugar Sound、高橋真衣
楽器協力 三響社
衣装協力 Zoff、ABC-MART、VANS、SUIT SELECT
コスメ協力 チャコット、DaB
映像協力 インターナショナルクリエイティブ(神守陽介)
装飾協力 東宝映像美術(近藤紗子)
協力 ライティングカンパニーあかり組、ワンミュージック、Vitamins、SELFiMAGE PRODUKTS、Roots、渋谷ステージセンター
法務アドバイザー、骨董通り法律事務所(福井健策、岡本健太郎)
宣伝美術 永瀬祐一
宣伝写真 加藤アラタ
宣伝スタイリスト 森保夫
宣伝ヘアメイク 岩下倫之、千葉美智子
宣伝広報 る・ひまわり
東京公演主催 Bunkamura
エグゼクティブ・プロデューサー 加藤真規
チーフ・プロデューサー 森田智子
プロデューサー 松井珠美
制作 武内純子、青山恵理子
制作助手 藤崎晃雅
票券 青木元子
劇場舞台技術 野中昭二、濱邉心太朗、仙浪昌弥
京都公演主催 読売テレビ、サンライズプロモーション大阪
企画・製作 Bunkamura
2021年7月11日〜8月3日 Bunkamuraシアターコクーン
2021年8月7日〜8月11日 京都劇場
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