学習院女子大学パフォーミングアーツフェスティバル2019「演出とはなにか」(上演作品『わたしを見つめるもう一人のわたし』)@学習院女子大学やわらぎホール
【2019/11/3 14:00〜15:00(途中休憩あり/終演後にシンポジウムあり)】

「同じ戯曲を二人の演出家が競演して、演出という仕事について考えてみる」という企画。ユニークポイントの山田裕幸さんが、企画の趣旨を考慮した上で書き下ろした新作『わたしを見つめるもう一人のわたし』を、青年団/隣屋の三浦雨林さんと、第七劇場の鳴海康平さんが、それぞれ別の俳優(オーディションを開催して選んだとのこと)を起用して競演。上演時間は20分✕2。
書き下ろされた作品は、場所や人物設定をあまり限定しない、自由度の高い抽象的なもので、企画の趣旨には合っているが、その分、かなり難解で、実験的とも言える作品。
戯曲というのは、それ単体で作品としての強度や完成度が求められるのが普通だと思うのだが、そう考えると、ちょっと今回の作品は実験色が強すぎたというか、企画に寄り添い過ぎたような気も。「もう少し、企画と関係なく、普通に上演されることを前提に書かれた作品のほうが良かったのではないか」という疑問も少し残る。
作品は、演出の仕方によって、別役実のような不条理劇にも、北村想やベケットのような脈絡のない会話劇にも、如月小春のようなイメージの連鎖によるポエティック劇にも、どうとでもなり得るような作風。交わされる言葉のやり取りも、会話として成り立っていながら、その真偽は定かでなく、捉えどころのない印象。
そんな手強い作品に対し、三浦演出は「戯曲でどう遊ぶか」に重きを置いたように見え、音楽的・視覚的な要素でアプローチ。感覚重視な感じ。
一方の鳴海演出は「会話をどう成立させるか」に重きを置いたように見え、登場人物の言動の動機や目的を、丁寧に積み重ねていた。理屈重視な感じ。
この差はとっても興味深かった。
鳴海演出はかなり手堅い仕上がりで、戯曲の魅力を最大限に活かしているかどうかは別としても、「なるほどな」と思わせる説得力があった。観ていて「腑に落ちる」演出。
三浦演出は、トータルでの説得力にはやや欠けるものの、言葉が立っていて、瞬間瞬間では鳴海演出を上回る部分もあったように思う。響きだったり、イメージだったり、「使われている言葉の面白さ」という点では、三浦演出の勝利か。
個人的には、鳴海演出のほうが好きかな。明かりの明暗の周期的な変化や、会話に参加していない人物の処理の仕方も良かったし、空飛ぶ船のくだりの処理の仕方や、冒頭の釣竿の音、女1を盲人に設定したのも、「さすが!」という感じ。
2作品の上演後の、内野儀氏の進行によるトークでは、思いの外「鈴木忠志」や「SPAC」といったキーワードが飛び交い、「普段自分のいる場所がやはり特別な場所であること」を再認識。「日本の演劇を語る上で外すことのできない場所に立っているんだな」と、なんだか、妙なプレッシャーを感じた時間だった。
ここからはちょっと余談だが、「高校時代に、シェル・シルヴァスタインの『ぼくを探しに』という絵本を、演劇部の男性チームと女性チームに分かれて戯曲化して演出してみる」ということをしたのを、今回、思い出したのだった。
このとき、男性チームの作・演出を担当したのが僕なのだが、演劇部に置き換えた等身大リアリズム作品になって、くさい青春演劇のような仕上がりになってしまった(笑)
一方の女性チームは、抽象世界に置き換え、魂の輪廻をめぐる作品に仕上げた。学校の階段を舞台に、「階段を上がってくる/降りてくる」を上手く使った素敵な上演だった。完敗だと思った。
そのあと、両作品を交換して、別の演出でもう1度仕上げることになった。(ここまでを想定した上で、顧問が提案した企画だった)
男性チームは、女性チームが書いた抽象世界を、少しリアリズム風の演出も混ぜながら処理した。高校の中庭で、交差点という設定で自転車に乗りながら会話させた。「女性チームとはまるで違う見せ方で別の作品になっていた」と、なぜか褒められた。
一方の女性チームは、男性チームのリアリズム作品にえらく苦戦したようで、「男性チームで上演されたものと大差ない」と評価された。
もちろん、一概に男女差は論じられないのだが、今回の企画を見ていて、ふと、そんなことも、思い出した。
学習院女子大学パフォーミングアーツフェスティバル2019
「演出とはなにか」
(上演作品『わたしを見つめるもう一人のわたし』)
作:山田裕幸
演出:鳴海康平(第七劇場)/三浦雨林(隣屋・青年団)
鳴海演出版
女1:小林愛(第七劇場)
女2:原田理央(柿喰う客)
男:森下庸之(TRASHMASTERS)
三浦演出版
女1:千葉りか子
女2:鈴木真理子(SPAC)
男:鹿野祥平(劇団東京乾電池)
照明:島田雄峰、佐伯香奈
舞台監督:古市裕貴
オーディションヘルプ:水田由佳、吉田雅人
実行委員長:内野儀
プログラムディレクター:山田裕幸
制作進行:一般社団法人ユニークポイント
当日運営:国際文化交流演習(演劇)履修者
主催:学習院女子大学
2019年11月3日 学習院女子大学やわらぎホール
コメントを残す